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「世界で最もプレーヤーが成長できる環境」を目指して。今泉守正JFA女子委員長が描く女子サッカー改革、女子W杯へ向けた強化方針とは

text by 竹中愛美 photo by Getty Images,Editor
メディアブリーフィングでプロジェクトを説明する今泉守正JFA女子委員長

メディアブリーフィングでプロジェクトを説明する今泉守正JFA女子委員長【写真:編集部】



 日本サッカー協会(JFA)は7月16日、東京都内で女子委員会後にメディアブリーフィングを実施した。今泉守正JFA女子委員長は、来年のFIFA女子ワールドカップ(女子W杯)での世界一奪還へ向けた強化方針に加え、日本の女子サッカー全体の発展に向けた取り組みについて説明。5月の就任会見で掲げた「育成」を軸としたビジョンを具体化する施策や、新たな強化体制の方向性を明かした。

「育成は生命線」。FIFAと進める新たなプロジェクト

 今年3月に佐々木則夫前JFA女子委員長から引き継ぐ形で就任した今泉守正JFA女子委員長は、5月の狩野倫久監督の就任会見で「育成は日本の女子サッカーの生命線」と位置づけ、グラスルーツ、ユース育成、指導者養成、そして代表強化という4つの柱を掲げていた。

 今回のブリーフィングでも、その考えは一貫していた。

 目指す姿として繰り返したのが、「日本の女子サッカー全体として、世界で最もプレーヤーが成長できる。そして世界で最も人を育てるサッカー環境を創出していく」というビジョンだ。

 その実現に向けた取り組みの一つとして進められているのが、FIFA(国際サッカー連盟)との2年間の共同プロジェクト「FIFAアカデミーシステムプロジェクト」だ。

 今回のブリーフィングでは、その進捗も報告された。女子サッカー界のレジェンドで元アメリカ女子代表監督のエイプリル・ハインリックス氏らFIFAの専門スタッフが来日し、JFAアカデミー福島や三菱重工浦和レッズレディース、日テレ・東京ヴェルディベレーザ、セレッソ大阪ヤンマーレディースなどを訪問。

 育成現場を視察するとともに、クラブスタッフやWEリーグ関係者との意見交換を行った。

 今泉委員長は、このプロジェクトについて「日本は技術や賢さで素晴らしいサッカーを展開していると評価されている。代表が活躍するところには、必ず育成が生命線としてあるはず。そこをFIFAとしてもサポートできないかという話をいただいた」と説明。

 今後は各クラブへのコンサルティングも進め、育成や指導者養成、代表強化を個別ではなく一つの流れとしてつなげ、日本全体で女子サッカーの成長サイクルを築いていく考えを示した。

「世界で最もプレーヤーが成長できる環境をつくっていく。その実現に向けた第一歩になると考えています」

 約1週間にわたる視察では、JFAやWEリーグ関係者も帯同し、各クラブと活発な議論を重ねたという。日本の育成環境そのものを世界基準へ引き上げる試みとして、今後どのような成果につながるかも注目される。

女子W杯へ。「逆算」で進む新体制の強化プラン

なでしこジャパンの新監督に就任した狩野倫久

今年5月になでしこジャパンの指揮官となった狩野倫久監督【写真:編集部】


 また、女子委員会にはなでしこジャパンが2011年のドイツ女子ワールドカップ(W杯)で優勝した際のメンバー、宮間あや氏を副委員長に抜擢。バレーボールなどの他競技やスポーツ界の知見も取り入れながら、グラスルーツの普及や競技人口拡大に取り組んでいく方針も説明。

 子どもたちがサッカーに触れる機会を増やし、将来的な競技力向上へつなげたい考えを語った。

 一方で、約1年後に迫った女子W杯へ向けた代表強化も着々と進められている。

 今泉委員長は、新たに就任した狩野監督がすでに大会から逆算したロードマップを作成していることを明かした。

 トレーニングキャンプごとにテーマを設定し、限られた活動期間の中で何を積み上げていくのかを明確化。

「個を伸ばしていくのは所属クラブに委ねられてしまう部分もある。選手たちには主体性を持って日常のトレーニングから取り組んでもらい、コミュニケーションを密に取りながら伸ばしていくことが重要な柱になる」と、所属クラブとの連携を重視していくという。

 狩野監督は欧州やアメリカへ自ら足を運び、女子サッカーの最新トレンドを学び続けていることにも触れ、「どんどん新しい情報を入れていこうというところ、プラス育成のところから積み上げてきて、代表監督をやってきているので、脈々と繋がっている日本の女子サッカーはこういうサッカーなんだというところも含めて考えてもらいたい」と期待を寄せた。

 代表強化では新たな試みも始まっている。

 狩野監督の要望を受け、6月にはストレングス&コンディショニングコーチとして田村謙太郎氏を迎えた。

 狙いは「インテンシティ」の向上だ。なでしこジャパンを「もう1ランク、2ランク上げていくにはインテンシティをどうやって上げていくのか」と課題に触れた。

 今泉委員長は、世界の強豪国と対戦する上では、ボディコンタクトを受けても体軸がぶれず、片足でのプレーやパス、シュートの精度を維持できる身体づくりが不可欠だと説明。技術だけでなくフィジカル面からも世界との差を縮めていく考えを示した。

「短期間で強化できるものではない」としながらも、女子W杯から逆算し、継続的に積み上げていく強化策の一つとして位置づけている。

 9月のアジア競技大会は国際Aマッチデーではないため、海外組を招集することは難しく、国内組を中心に編成される見込みだ。

 今泉委員長は、この大会を「ラージグループを広げていくことになる」と位置づけた。

「フィロソフィーとゲームモデルをしっかりと浸透させることによって、ラージグループができてくるところが非常に大切だと思います」と狩野監督が目指すゲームモデルやプレーモデルを代表候補へ浸透させ、女子W杯へ向けた選手層を厚くしていくことが目的だと説明した。

海外挑戦を後押し。その先に描くWEリーグの未来

ノースカロライナ・カレッジMF松窪真心

今夏、チェルシーFCウィメンへ移籍した松窪真心もまたWEリーグから世界へと羽ばたいた【写真:Getty Images】


 ブリーフィングでは、WEリーグから若手選手の海外移籍が相次いでいる現状についても質問が飛んだ。

 今泉委員長は「若い年代で海外へ出ていくことは非常に素晴らしいこと」と前向きに評価。欧州やアメリカで世界トップクラスの選手たちと日常的に競い合う経験は、日本人選手の成長につながるとの考えを示した。

 一方で、その分だけ国内の育成環境をさらに充実させる必要性も強調する。

 「育成は生命線」と改めて語ったうえで、将来的には「世界で最もプレーヤーが成長できる環境」を日本につくりたいと説明。その先には、海外へ送り出すだけでなく、「WEリーグでプレーしたい」と思う外国人選手が集まるリーグへ発展させたいという展望も示した。

 その実現に向けては、リーグ全体の競技レベルや試合環境の向上について、WEリーグとも継続的に議論を重ねていく方針だ。

 来年の女子W杯で世界一を目指す代表強化と、日本の女子サッカー全体を底上げする環境づくり。その両輪をどう前へ進めていくのか。今泉委員長が掲げる「世界で最もプレーヤーが成長できる環境」という言葉には、女子サッカーの未来を見据えた長期的なビジョンが込められていた。

(取材・文:竹中愛美)

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