
いわきFC所属の道脇豊【写真:Getty Images】
アジア競技大会のグループリーグ初戦で、U-23ホンコン・チャイナ代表に2-0で勝利したU-21日本代表。白星発進の一方で、最前線と周囲のかみ合わせには改善の余地を残した。ゴール前に構える道脇豊と、中盤まで下りてボールを引き出した嶋本悠大。異なる特徴を持つ選手を、攻撃の中でどう生かすのか。「9番」を巡る課題が見えた一戦だった。
道脇豊が中央にいても、ボールが届かない
9月16日に行われたアジア競技大会グループA第1節で、U-21日本代表はU-23ホンコン・チャイナ代表に2-0で勝った。39分に石井久継が先制し、89分には永野修都が追加点を挙げた。一方、先発で最前線に入った道脇豊にゴールは生まれなかった。
もちろん、センターフォワードが得点したかどうかだけで、攻撃の成否は測れない。本稿で問いたいのは、その持ち味をチームとして十分に引き出せたかという点だ。
先発のワントップを務めた道脇は、190cmの長身を生かしてゴール前で勝負するストライカーだ。2026/27シーズンのいわきFCでは、J2の6試合で90分あたり約30回のタッチと2.74本のシュートを記録している(出典:Sofascore)。
タッチ数の少なさはアビスパ福岡でプレーしていたJ1百年構想リーグでも顕著で、Jリーグ公式データによれば、13試合の出場で1試合あたりのプレー総数は8.2回だった。
途中出場が多かったとはいえ、総プレータイムは354分。同リーグ出場時間147分で同じくフォワードを生業とするサニブラウン・ハナンが10.8回であることを踏まえると、道脇のプレー関与率は相対的に著しく低いと言える。期待されるのはやはりフィニッシュワークだ。
ホンコン・チャイナ戦で目についたのは、道脇と周囲のかみ合わせだった。日本はサイドで数的優位を作ったが、ゴール前の道脇を活かすクロスはなかなか入らなかった。
嶋本悠大の「ゼロトップ」も課題残す
中央を閉じて守る相手に対し、道脇が構える場所へどうボールを届けるか。出し手の判断と受け手の動きを合わせなければ、中央にストライカーを置いても、その強みを十分に引き出せない。
石橋瀬凪が13分に左サイドから鋭いセンタリングを供給し、道脇がヘディングで合わせたものの、ボールは枠外へ。背番号「9」から生まれたシュートはこの1本だけだった。
62分、大岩監督は道脇に代えて嶋本悠大を投入した。同時にウイングの古谷柊介を下げ、横山夢樹も送り出している。
本来は中盤を主戦場とする嶋本は、最前線にとどまらず、下りてボールを受けた。いわゆる「ゼロトップ」の性質を帯びた攻撃へと変わり、中盤と最前線をつなぐ動きが見られるようになった。
ただし、今度は別の問題が顔を出す。象徴的なのが70分の場面だ。嶋本が中盤まで下りてボールを受け、クロスを上げられる状況が生まれた。しかし、ペナルティエリアの中央には誰もいない。
最前線の選手が下がる形では、空いたスペースを周囲が使う動きも必要になる。嶋本が空けた場所を埋める動きが、この場面ではかみ合っていなかった。
道脇が中央に構えていた時間帯には、そこへ届けるボールが足りなかった。一方、嶋本が下りてゲームメイクに関わると、ゴール前の人数が足りない場面が生まれた。異なる最前線の起用法を、周囲の動きとどう結び付けるか。その課題が表れた試合だった。
“起点役”のンワディケ・ウチェ・ブライアン世雄が間もなく合流
オプションの精度をそれぞれ上げる方法も考えられるが、人選にも新たな可能性がある。国際Aマッチウィークが始まる9月21日以降に合流するンワディケ・ウチェ・ブライアン世雄だ。
デンマーク2部のオールボーBKでは、2026/27シーズンのリーグ戦7試合でデュエル勝率53.2%、パス成功率78%を記録している(出典:Sofascore)。一方の道脇は今季のデュエル勝率35.5%で、パス成功率は62.2%である。
プレーエリアにも差があり、同データサイトのヒートマップによると道脇の可動域はゴール前に集中するが、ンワディケはセンターサークルも赤く染めている。明確にプレースタイルが異なっており、後者の選手はより“起点役”としてのストロングがある。
両者には現時点でも一長一短あり、道脇はすでに1ゴール1アシストの結果を残しているが、ンワディケはまだ得点への直接関与がない。なお、今季のプレータイムは道脇が514分で、ンワディケが521分と、ほとんど差はない。
ワントップの二者択一でなく、共存の道もあるかもしれない。ンワディケが下がって起点となり、道脇が中央に残る。ボールを引き出す役割と、ゴール前で仕留める役割を分担できれば、中央の人数を確保しながら攻撃を組み立てられる可能性がある。
ロサンゼルス五輪へ向け、ゴール前に立つ選手と、そこへボールを届ける選手をどう組み合わせるか。今大会で目下問われているのは、選手の持ち味をつなぎ、得点機へと結び付ける攻撃の形だ。
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