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「これは自分でも言いたかった」中井卓大ピピがYouTubeの反響にこぼした本音。FC今治で向き合う“現在地”【コラム】

FC今治 中井卓大ピピ

FC今治の中井卓大ピピ【写真:Getty Images】



 9歳でレアル・マドリードのカンテラに合格し、日本中から注目を集めた中井卓大ピピ。スペインでの挑戦を経て、今シーズンFC今治へ加入し、念願だったJリーグの舞台に立った。周囲から寄せられる期待やさまざまな声を受け止めながら、中井はいま、自分に何が足りないのかと向き合っている。「チームの勝利のために」と語る22歳が、今治で目指している新たな姿とは。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ] 

「スペインとはちょっと違う疲れ方」中井がJリーグで感じた“違い”

FC今治 中井卓大ピピ

ここまでリーグ戦全試合に出場しているFC今治の中井卓大ピピ【写真:Getty Images】


 リーグ戦では8月の開幕節から全7試合で先発を射止めている。ポジションはダブルボランチの一角から、直近の一戦となる19日の横浜FC戦では3ボランチの真ん中、アンカーに入っている。

 母国の日本で初めてプロの舞台に臨むうえで、中井は外国籍選手のような心境だと語っていた。加入から2カ月あまり。Jリーグのプレースタイルに順応できているのか。横浜FC戦後に中井はこう語っている。

「やっているのはサッカーなので、何かここが大きく違う、という部分はないんですけど。ただ、日本のほうが縦に速いですし、運動量も必要になってきますし、スペインとはちょっと違う疲れ方をしますね」

 違う疲れ方とはいったい何を意味するのか。中井はさらにこんな言葉を紡いでいる。

「心肺機能の疲れもそうですし、スペインだと横への走りが多いんですよ。縦へ走る部分をよくしていきたいし、ボランチやアンカーで出場している以上は、守備の強度の部分は本当に課題だと思っています。

 攻撃のところでは相手を1枚、2枚と剥がしてボールを前へ運んでもっとチャンスを作れる選手になりたい。ボールを失わない部分に加えて、ちょっとずつ求めているものを出せているのかな、と思っています」

 開幕から4連敗、しかも12失点を喫した今治は大分トリニータとの第5節から3バックに移行。勝ち点を積み重ねた一方で、大分戦のハーフタイムにベンチへ下がった中井のプレータイムも減っている。

 横浜FC戦でも最初の交代カードが切られた63分に、1-1の状況でベンチへ下がっている。

「もちろん悔しい部分もありますけど、柏レイソルとの天皇杯3回戦も含めて連戦も続くので」

 努めてポジティブに前を向いた中井に対して、体調不良で横浜FC戦を休養したモウレロ監督に代わって監督代行を務めた久保山由清ヘッドコーチが、中井を早めに交代させた理由を明かしている。

「すごく成長する選手」久保山監督がかける期待

FC今治 久保山由清監督

アベル・モウレロ氏の解任を受けてFC今治の指揮官に就任した久保山由清監督【写真:Getty Images】


「守備の強度のところでもう一段階上げたいと思いました。(中井の)左右へのスライドが間に合っていなかった部分がありましたし、特に真ん中のところであの時間帯はけっこう厳しくなってきていたので」

 20日付で解任されたモウレロ氏に代わり、新監督に就任した久保山氏は中井の現在地をこう語る。

「攻撃のところでは、試合を落ち着かせるボールコントロールのクオリティーやアイデアの部分はいろいろと見せてくれていたし、方向を変えられる選手として、そこはすごく評価しています。

 いろいろとコミュニケーションも取れるし、自分から何かを変えていくというか、いいものを磨いて、悪いものを捨てられるメンタリティーももっている。その意味ですごく成長する選手だと思っています」

 堪能なスペイン語を駆使して、試合中のピッチではスペイン語を理解できるブラジル人選手たちに、日本人選手たちの考えや思いなどを随時伝えている。日々のトレーニングでもよくしゃべると笑う。

 横浜FC戦では後半開始早々の50分に、古山兼悟のゴールで同点に追いついた。次の瞬間、今シーズン2ゴール目を決めた古山よりも派手な、そして大きなガッツポーズで喜びを表現したのが中井だった。

「あまり感情を表に出すタイプではないんですけど、ガッツポーズも覚えていないくらいうれしくて」

 試合中には大きな身振り手振りを介して、チームメイトたちに指示を飛ばす場面が何度もあった。

「何を言っているのか、と思われるかもしれないけど」

FC今治 中井卓大ピピ

FC今治 中井卓大ピピ【写真:Getty Images】


「あそこでプレーしている以上は、チームのなかで最も試合状況が見えていないといけない。それ(指示)が合っているかどうかはわからないですけど、自分が思っているサッカーをみんなで共有したいと思って」

 目の前のすべてを前向きにとらえ、自身に足りない部分を追い求めていく姿勢が伝わってくる。今治が最下位に沈む現状に「何を言っているのか、と思われるかもしれないけど」と前置きしながら中井が続ける。

「本当にサッカーの教科書の1ページ目ですけど、相手よりゴールを決め切っていく。そのために自分がどのようにすればいいのか、というところをもっともっと考えて、このシーズンを戦っていきたい。

 個人的には試合に出場し続けて、怪我なく活躍し続ける。もっと縦に出ていくタイプかもしれないけど、チームから求められている、バランスを取ってゲームを作っていく部分をとにかく全力でやっていきたい」

 スペインでの挑戦はレアル・マドリードのBチーム、カスティージャで公式戦に出場できず、3部や4部のチームへの期限付き移籍をへて、前出したように5部のチームでいったんピリオドを打った。

 それでも年齢は大卒の新人Jリーガーと同じ22歳。自分自身を客観的に見つめ、母国のサッカーファンから寄せられるさまざまな声を真正面から受け止めながら、中井は今治を勝たせる泥臭い男へ変貌を遂げていく。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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【了】

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