サッカー日本代表 佐藤龍之介【写真:Getty Images】
28日のベネズエラ戦に先発した佐藤龍之介が、所属するバレンシアの事情により代表を途中離脱することになった。4試合が組まれた今回の代表活動だが、日本サッカー協会(JFA)は佐藤をクラブへ戻すという柔軟な決断を下した。
佐藤にとって、代表離脱が意味するもの

ベネズエラ戦でスタメン出場するも前半のみのプレーとなった【写真:Getty Images】
これまでのインターナショナルウィークでは2試合が組まれていたが、今回の代表戦が4試合組まれているのは、2026年からFIFAの国際マッチデーが9月と10月で統合されたためだ。従来は各月2試合だったが、選手の移動負担軽減などを目的に、約2週間の活動期間で4試合を戦う日程となっている。
佐藤の途中離脱の要因となったのが、所属するバレンシアの監督交代だ。カルロス・コルベラン前監督のもとでは開幕スタメンを果たすなど、全試合に出場していた佐藤。しかし、チームは開幕5試合を1分け4敗と大きくつまずき、監督交代に踏み切った。
その後暫定監督として就任したオスカル・サンチェス体制で、佐藤は出場機会を与えられなかっただけに、海外移籍後、最初の正念場を迎えている。
低迷する名門の再建を託されたのは、かつて日本代表監督としても指揮を執ったメキシコ人のハビエル・アギーレだ。
ラ・リーガのクラブとしては7クラブ目の指揮となるアギーレは、20チーム中19位に沈むチームを立て直すため、まずは現実的で手堅いサッカーの構築に取り掛かるはずだ。
そして、この貴重な中断期間の間に、アギーレは短期間でチームを作り上げなければならない。そうなれば、必然的に練習へ参加し、指揮官の戦術を理解した選手が、再開後の起用で優先されることになる。
さらに、ライバルとなるアタッカー陣では、佐藤以外に代表へ招集された選手はいない。仮に佐藤がそのまま日本代表に残っていた場合、チームに合流できない期間で出遅れることで、いきなり不利なスタートを強いられていた可能性がある。
直近では、下部組織出身のダビド・オトルビが台頭。また、ラ・リーガでの実績も豊富なルイス・リオハは、2シーズン前にバレンシアへ加入して以来、主力としてチームを支え続けている。
さらに、今夏リヴァプールから加入したハーヴェイ・エリオットも、体重超過の状態でチームに合流したと『MARCA』が報じているが、コンディションを整えれば強力なライバルとなる存在だ。
下位に沈むチームとはいえ、実力のあるアタッカーがライバルとして立ちはだかるだけに、この中断期間でのアピールは重要になる。
JFAが示した柔軟な判断
佐藤の離脱について説明した森保一監督【写真:田中伸弥】
ベネズエラ戦の前半で見せたプレーぶりは、佐藤が今後の代表チームを支える存在になり得ることを感じさせた。だからこそ、今夏に初の海外挑戦を決断した彼にとって、何よりも大切なのは所属クラブで安定した出場機会を確保することだ。
そう考えれば、今回のJFAによる柔軟な対応は、佐藤の今後を見据えた判断として評価できる。
森保一監督も、招集の時点から佐藤を途中でクラブへ戻す可能性を考えていたと明かしている。
「代表でいい経験を積んでもらって、刺激を持ってクラブに帰ってもらうことも考えました。でも、それよりもチームの練習に戻って、今回の代表ウィーク明けに試合に出られるよう、できるだけ練習に参加して、監督に認めてもらって試合に出られる方が、彼のキャリアにとって、クラブにとって、そして代表にとってもプラスになる」と、今回の判断に至った理由を説明した。
そのうえで、「彼にとって一番いい選択」として、代表でプレーした経験を持ち帰り、バレンシアでポジションをつかむことを目指してほしいとの考えを示した。
佐藤自身も、今回の決断が意味するところを理解している。
11月の代表活動に戻るために改善したい点を問われると、「バレンシアで出続けていたら(日本代表に)戻ってこれると信じてますし、わかりやすく自分にはそういった道があると思うので、バレンシアで結果を残したいなと思ってます」とコメントした。
代表活動を最後まで経験させることだけが、必ずしも選手の成長につながるわけではない。クラブで監督の信頼をつかみ、日常的に高いレベルでプレーする環境を確保することも、長い目で見れば代表強化につながっていく。
特に海外でプレーする日本人選手が増えていく中では、今後も同様のケースが起きる可能性は十分にある。
代表活動への参加と所属クラブでの立場。その両方を考慮しながら、選手の成長にとって何が最善なのかを判断する柔軟性は、これからの日本代表にとっても重要になるだろう。
今回のJFAの決断が、佐藤のキャリアにどのような影響をもたらすのか。まずはアギーレ新監督の下で迎える、バレンシアでの新たな競争に注目したい。
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