
北海道コンサドーレ札幌の大森真吾【写真:Getty Images】
開幕戦以来、約2カ月ぶりの勝利を飾った北海道コンサドーレ札幌。この日の“表のヒーロー”が先制ゴールを挙げた西野奨太なら、“裏のヒーロー”は最前線で身体を張り続けた大森真吾だろう。「大学No.1 FW」とも評された大器は、ここ数年コンディション不良に苦しんできた。それでも今、「クラブハウスの住人」と呼ばれるほど、日々のトレーニングとケアを積み重ね、川井健太監督のもとで新たな自分を見つけつつある。(取材・文:黒川広人)[1/2ページ]
【2026/27明治安田J2リーグ第9節】
2026年10月4日 北海道コンサドーレ札幌 2-1 いわきFC
(函館どつくスポーツガーデン)
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大森真吾が実戦でつかみ始めた感覚

いわきFC戦で4試合連続先発となった大森真吾(写真上段左から3番目)【写真:Getty Images】
川井健太監督が試合後、手放しで称賛するほどの活躍を見せたのが大森真吾だった。
「いわき(FC)さんの圧力は、リーグでも屈指のものがあります。それをかいくぐる術というものを我々は取り組んでいたものの、おそらく風やグラウンド状況など、いろいろなものを想定していく中で、きょうは彼が選択のファーストチョイスになりました。
得点は取れなかったですけど、本当にファイトしてくれたと思います。彼のあの頑張りがなければ、おそらくきょうの勝ちはなかったと思います」
その言葉通り、大森は北海道コンサドーレ札幌の最前線で幾度となく身体を張った。
いわきFCの田坂和昭監督も、「センターフォワードをターゲットに収めるとか、シンプルな背後、サイドから背後を取ってというところを徹底してやってきたなと。そこでペナ角を取られて失点してしまい、ゲームを難しくしてしまった」と振り返る。
この日の札幌は、これまで以上にシンプルに大森の強さを活かす戦いを選択した。
「少し割り切るところは割り切ろうと話していたので。いつも以上に、僕を目掛けてというシーンが多かったと思います。フォーメーションは(テゲバジャーロ)宮崎戦と一緒だったんですけど、攻撃時、(白井)陽斗くんと2トップみたいな形になったので、役割をお互い補いながら。
自分が外に流れて、そこで起点になることができるなとは思っていたので。自分の動くスペースが増えたことで、自分のタイミングでよりボールを引き出せたところが一つ良かったかなと思います」
ボールを収め、味方が攻め上がる時間を作る。それはもともと、大森が持っていた大きな武器の一つだ。
しかし、大学3年時に膝や右足脛骨を負傷して以降、なかなか、継続してピッチに立つことができず、実戦から遠ざかる中で、その感覚を失いかけていたという。
それでも今、試合に出続けることで、かつて当たり前のように発揮していた強みを少しずつ取り戻している。
「真吾はクラブハウスの住人みたいな感じです」

プロ入り以降なかなか結果を残せていない大森真吾だが、徐々に感覚を取り戻しつつあるようだ【写真:Getty Images】
「最近、継続的にスタートから出させてもらえていることで、ロングボールを使うシーンも増えてきたので。競り合いのところでマイボールに持っていくのは元々得意だったんですけど、試合に出てない時間が長かったことで、忘れていたものをちょっと取り戻せてきたかなと思います」
直近、4試合連続で先発のピッチに立ち、実戦の中で取り戻しつつある感覚。一方で、同じポジションを争うアマドゥ・バカヨコや唐山翔自のゴールも、大森に大きな刺激を与えている。
「やっぱり結果を残さないと生きていけない世界ですし、競争っていうのは大事だなと思います。でも、お互いできることと長所・短所があると思うので、その中で自分の長所を出しながら、その上でスコアを決めていかないといけないなと思います」
結果を残すために、自分は何をすべきなのか。その問いと、大森は日々向き合い続けている。キャプテンの西野奨太は、そんな大森を「真吾はクラブハウスの住人みたいな感じです」と表現する。
その言葉通り、大森がクラブハウスで過ごす時間は長い。朝8時にはクラブハウスへ入り、帰路につくのは午後5時頃になることも多いという。筋力トレーニングや身体のケアなど、自らに必要なメニューを日々愚直にこなしているのだ。
そこまで自身の身体と向き合うようになった背景には、怪我、そして期限付き移籍先で思うように試合へ出られなかった経験がある。
「怪我をして以降、意識するようになったんですけど、やっぱりレンタル先で出れない時間が増えたことで、いろいろ意識が変わってきたなと思います。試合何日前っていうので、筋トレだったりケアだったり、トレーニングは決まってるので、それをただ愚直に毎日やっています。
家に帰ってゆっくりするより、クラブハウスで自分のために時間を使ってた方が僕は好きなので、そういったところでたぶん長くなってるんじゃないかなと思います」
徹底したコンディション管理と、継続的な試合出場。その積み重ねによって、大森は自身の身体にも変化を感じている。
大森真吾が変えた自分のプレー「昔のプレーをやりたいと意固地に」

ベガルタ仙台戦でゴールを挙げた大森真吾【写真:Getty Images】
「一番走れるようになったかなって。常に自分の体を気にしながら生活することで、これしたらちょっと良くないなとか、そういうのがわかってくるので。その中で常に動ける体を担保しながらやっていくところは、できるようになったと思います。
大学での怪我後は、昔のプレーをやりたいとちょっと意固地になっていましたけど。今はチームのやり方もありますし、大学のときとは強度も質も全然違うので、同じことをやろうとしてもできないのを痛感して。そこから自分のプレーを変えていったところはありますね」
順天堂大学時代から、その能力を高く評価されてきたストライカーだ。しかし、怪我を境に思うようなプレーができなくなり、プロの舞台でも本領を発揮できない時間が続いた。
それでも今は、昔に戻るのではなく、新しい自分をつくり始めている。継続的にピッチへ立つ中で、その変化が少しずつ実を結び始めている。
大森の能力を高く評価してきたのは指揮官だけではない。間近で戦うチームメートにこそ、その凄さが伝わっているものだ。
「真吾の持っている能力は本当にすごい」
札幌で取材を続ける中で、そんな言葉を幾度となく耳にしてきた。毎日のように同じピッチでボールを蹴る仲間たちは、大森が持つ力を知っている。本人もまた、周囲から寄せられる期待を感じている。
「練習に参加したときからすごいそうやって話してくれる人も多かったですし、それは嬉しいことなので、その期待というか、それに応えられるように。まだまだだと思うので、結果を残してコンサドーレをJ1昇格に導いてこそ、それに値すると思うので、頑張っていきたいなと思います」
そして、大森が応えたいのはチームメートからの期待だけではない。札幌への復帰を決めた際、「札幌でゴールを決めるのが一番幸せ」と語っていたように、サポーターの声援に結果で応えたいという思いも人一倍、強い。
これまで決めてきたゴールには、ベガルタ仙台戦をはじめ、チームの勝点につながった印象的な一撃も多い。だからこそ、もっと札幌のためにゴールを決めたい。大森自身、誰よりもその結果を欲している。