
柏レイソル 瀬川祐輔【写真:Getty Images】
9月度のJリーグ月間MVPに輝いた柏レイソルの瀬川祐輔は、10月9日のヴィッセル神戸戦でもゴールを奪い、途中出場から9試合で8ゴールと、自身のゴール記録を伸ばした。それでも試合後に出たのは「すっごいモヤモヤします」という言葉だった。32歳のストライカーが明かしたのは、結果を残す自信と、先発できないもどかしさ。そこには、チーム内の競争に向き合う葛藤と、衰えることのないゴールへの欲があった。(取材・文:高橋大地)[2/3ページ]
「サチみたいな選手がいることが全て」

急遽右CBとして出場し、 MVP級の活躍を見せた柏レイソルMF戸嶋祥郎【写真:Getty Images】
「それはもう、サチみたいな選手がいることが全てですね」
サチとは戸嶋祥郎のことだ。
神戸戦では前半18分に馬場晴也が負傷交代。代わってピッチに立った戸嶋は、慣れない右センターバックで奮闘した。
後半8分には、インターセプトからの流れでオーバーラップし、山内へクロスを供給してアシストも記録した。この日のMVP級の活躍だったと、試合を見た誰もが感じたであろう。
「今日に関しては、サチローが本当に今シーズンの誰よりも良いパフォーマンスをしたんじゃないか。家族だったら泣いているんじゃないかっていう。本当にすごい。……こういう選手がレイソルにいるっていうのが、本当に強みだなって思います」
今季は出場機会が限られていた戸嶋。それでも準備を続け、突然巡ってきた機会に応えた。
ベンチには右CBが本職の原田亘もいた。しかし、怪我の影響で久々のメンバー入りとなった原田ではなく、リカルド・ロドリゲス監督は戸嶋を呼んだのだ。
「練習でも、本当に真面目にやっていますけど、それが今日みたいなときに、亘じゃなくてサチっていう。でも僕たちは、それに対して何も思わなかったですし。サチが出ても別に問題ない。もちろん亘が出ても問題ないし」
日々の姿を知っているからこその信頼だ。そして、戸嶋が示した姿勢は、瀬川自身の背中も押した。
「サチのおかげでチームが少しグッとまとまったかなっていうのは思いますし。僕もああいうのを見て、腐りはしないですけど、出たときにやっぱり活躍しなきゃなと思いましたね」
競争は、出場機会を奪い合うだけではない。チームメイトがつかんだチャンスを、自分も前に進む力に変える。瀬川の言葉からは、柏の選手層を支える日常が垣間見えた。
では、瀬川自身はなぜ、限られた時間でゴールを量産できているのか。
32歳で手にした「自信と余裕」

瀬川は「自信と余裕とっていうのが、今は自分の中でいい流れにはなっている」と話す【写真:Getty Images】
神戸戦では得点を決める前にも、ボレーシュートでゴールに迫る場面があった。そのプレーについて、瀬川は判断の余裕を口にした。
「あそこで、打つ直前までにトラップするのか、ダイレクトで打つのかという選択ができているっていう余裕が、今の結果につながっているとは思っています」
シュート直前まで複数の選択肢を持ち、状況に応じて判断できる。得点を重ねる中で、プレーに余裕が生まれている。
「だから、自信と余裕とっていうのが、今は自分の中でいい流れにはなっていると思っています」
その変化は、自分自身のプレーだけではない。
昨季と比べて、前線で出し手と目が合い、ボールが届きそうだと感じる回数が増えたという。なぜなのか。瀬川は明快に答えた。
「俺が点を取っているからじゃないですか」
結果を残しているからこそ、味方も瀬川の動き出しを見逃さない。
「ゴール前に対してボールが来そうだなって思う回数は、めっちゃ多いんで。多分、一番最初に僕を見てくれるし、(細谷がいれば)真大と、僕のことを見てくれる」
瀬川自身も、出し手には積極的に要求している。
「僕としては、もう『僕の周りにボールを置いてくれたら、あとは何とかする』とは言っているんで。雑なボールでも、とにかく触れれば何とかするから」
味方からのパスを待つだけではない。自ら動き出し、ボールを呼び込み、ゴールにつなげる。得点が信頼を生み、その信頼が次のチャンスをつくる。好循環の中にいることを、瀬川自身も実感している。
ただ、ゴールを重ねているからこその怖さもある。
「止まることがちょっと怖いっていう感覚になっているんで。まあ、なんかどれだけこう、点を取れない試合でも気にしないかっていうところかなと」
それでも、得点への欲が薄れることはない。
「試合が好きなんで、活躍したいっていう欲は32歳ですけど、あるんです」
途中出場でも結果を残せる自信と、もっと長くピッチに立ちたいという欲。その両方を抱えながら、瀬川はゴールを追い続けている。