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コラム 2026.10.28 18:00

アーセナルは22年ぶりの優勝を果たし、マンUは今季16位に沈む……偉大な両クラブの明暗を分けた「フロントの組織力」【プレミアリーグを読む】

マンU&アーセナル
今季16位に沈むマンUと昨季優勝を果たしたアーセナル【写真:Getty Images】



 プレミアリーグを代表する名門、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッド。ともに偉大な監督の退任後に苦しい時期を経験したが、その後の歩みは対照的なものとなった。今季は第8節終了時点でユナイテッドは降格圏までわずか勝ち点1差に迫る苦境に陥っている。なぜ、これほどまでに両クラブの明暗は分かれたのか。クラブの土台となる組織づくりから理由を探る。(文:安洋一郎)[2/3ページ]

アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドの明暗を分けたのは?

エドゥ&アンドレア・ベルタ
エドゥ&アンドレア・ベルタ【写真:Getty Images】



 しかし、両クラブの明暗を、後任監督の力量や人選だけで説明することはできない。長期政権を築いた指揮官が去った後、クラブとして何を継承し、誰がチームづくりの方向性を定めるのか。その違いもまた、両者の現在地を分ける重要な要因となった。

 ヴェンゲル退任後のアーセナルにとって、大きな転機となったのが、2019年夏にTDに就任(2022年にクラブ史上初のSDに昇格)したエドゥの存在だ。

『The Athletic』などの報道によると、それまでブラジル代表のゼネラルコーディネーターを務めていた エドゥは、アーセナル加入後、間もなくスカウト部門の刷新に着手し、フットボール・インテリジェンス部門を新設した。

 同報道によれば、アーセナルは当時プレミアリーグのタイトルを争っていたマンチェスター・シティとリヴァプールが、2023年から2027年頃にかけてピークを過ぎるという仮説を立て、その時期に最も強いチームを作るための組織づくりを進めたという。

 そこで描かれたのが、生え抜きのブカヨ・サカに近い年齢層の選手を多く集め、若い監督とともに、段階的に成長させるというプランだった。

 補強に関して強い権限を持つ指揮官が求める選手の獲得にも動き、クラブ史上最高額で獲得したデクラン・ライスを筆頭に即戦力を揃え、シーズンを追うごとにチームとして成熟していくことを目指したのである。

 プレミアリーグ優勝は2025/26シーズンまで時間を要し、それまでのシーズンも優勝争いを続けながら、最終的にはマンチェスター・シティらに及ばずタイトル獲得には至らなかった 。

 しかし、最終的には、エドゥの後任としてSDに就任したアンドレア・ベルタが、それまでの計画から引き継ぎながらスカッドの厚みを増し、チームの弱点を補った。

 アルテタ率いるチームは、優勝争いを続けながらも、主力への負担や選手層の厚みといった課題を抱えてきた。ターンオーバーの少なさや、重要な試合が続く時期のコンディション管理も、長いシーズンを戦い抜く上で課題となっていた。

 こうした課題に向き合ったベルタは、2025年夏にトップチームの戦力となる8人を補強。主力に離脱者が出ても戦力ダウンを最小限に抑えられるよう、スカッドの厚みを増した。 こうした補強も、長いシーズンを通して戦力を維持し、念願のタイトルを獲得する上で重要な要素となった。

 当然ながら、アルテタの功績は大きい。しかし、その手腕を継続的に発揮できるよう、必要な戦力を段階的に整え、長期的なチームづくりを支えたフロントの存在も見逃せないだろう。

時代遅れの体制を敷いていたマンチェスター・ユナイテッド

ルベン・アモリム
元マンチェスター・ユナイテッド監督のルベン・アモリム【写真:Getty Images】



 一方のユナイテッドでは、2022年2月までウッドワードがCEOとしてクラブ運営を主導する体制が続いた。 クラブ史上初めてフットボール・ディレクターとテクニカル・ディレクターのポストを設けたのも、2021年3月のことだった。

 しかも、外部のクラブで実績を積んだスペシャリストを招いたわけではない。ジョン・マータフとダレン・フレッチャーを内部昇格させるにとどまり、クラブの体制に大きな変化はなかった。

 問題は、商業面での成功を収めながら、ピッチ上の強化を一貫して主導する体制を築けなかったことにある。こうした反省を踏まえ、クラブはINEOSの参画を機に、フットボール部門の組織改革へと乗り出した。

 マンチェスター・シティで実績を残したオマル・ベラダをCEOに、ジェイソン・ウィルコックスをTD(現在はフットボール・ディレクター)に、ブライトンやニューカッスル・ユナイテッドでSDを務めたダン・アシュワースをSDに迎え、フロントの刷新を図った。

 しかし、INEOS体制下での監督人事を巡っては、フロント内部の意思統一にも課題が浮かんだ。2024年11月のルベン・アモリム招へい前後には、アシュワースと他の幹部の間で意見の相違があったと報じられ、アシュワースは就任からわずか5カ月でクラブを去ることになった。

 そのアモリム体制でも、2024/25シーズン後半にチームはリーグ下位へ低迷し、翌シーズンに解任されることになった。

見えてこないマンチェスター・ユナイテッドの哲学

試合に敗れて落ち込むマンチェスター・ユナイテッドの選手
試合に敗れて落ち込むマンチェスター・ユナイテッドの選手【写真:Getty Images】



 もっとも、ユナイテッドが一貫して低迷してきたわけではない。2017/18シーズンと2020/21シーズンは首位に大差をつけられながらも順位としては2位でフィニッシュ。昨季もマイケル・キャリック暫定体制で3位で終えた。

 しかし、アーセナルの成功例と大きく異なるのは、ユナイテッドが目指すフットボールと、それを実現するための強化方針が一貫して結びついていないことだ。

 もちろん、現在のフロント陣にも計画はある。イギリス『The Telegraph』によると、2028年までにプレミアリーグ優勝を目指し、3段階に分けた補強プランを立てているという。2025年夏はFW、2026年夏はMF、2027年夏はDFを中心に補強する計画だと報じられている。

 中長期的な計画が示されたこと自体は進歩だ。しかし、ポジションごとに補強時期を定めるだけでは、クラブが目指すフットボールの実現につながるとは限らない。

 おそらく、2026年夏にカゼミーロ(実際に退団)が、2027年夏にハリー・マグワイア、ルーク・ショー、リサンドロ・マルティネスらが契約満了を迎えることから逆算したものだろう。

 問題は、補強するポジションや時期を定めることと、チームとして目指すフットボールを明確にすることは別だという点にある。

 重要なのは、獲得する選手のポジションだけでなく、どのような役割を担い、チーム全体の連係にどう貢献するのかまで設計されているかどうかだ。

 補強の順序が決まっていても、その選手たちが同じフットボールの方向性に沿って配置されなければ、継続的なチーム強化にはつながらない。

 実際、今夏もMFを3人獲得したが、現有戦力とのかみ合わせが良いとは言い難い。その上で怪我人の有無に関わらず最終ラインを中心に選手層が薄く、ヨーロッパの大会を戦うだけのチームの体力そのものが足りていないように映る。

 そして深刻なのは、CLに出場したシーズンに苦しむというのは、今季に始まったことではないということだ。これは監督ではなく、編成を整えるフロントの責任である。

 また、監督が代われば、戦術や選手起用が変化するのは当然だ。しかし、クラブとしての強化方針まで大きく変わってしまえば、積み上げてきた戦力や育成の方向性を継続的に生かすことは難しくなる。

 ユナイテッドでは、監督交代のたびに志向するフットボールが変わり、それに伴って選手に求められる役割も変化してきた。

 問題は監督が代わること自体ではなく、異なる指揮官を招へいしても機能するような、クラブとしての共通基盤が十分に確立されていなかったことにある。

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