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コラム 2026.10.28 18:00

アーセナルは22年ぶりの優勝を果たし、マンUは今季16位に沈む……偉大な両クラブの明暗を分けた「フロントの組織力」【プレミアリーグを読む】

マンU&アーセナル
今季16位に沈むマンUと昨季優勝を果たしたアーセナル【写真:Getty Images】



 プレミアリーグを代表する名門、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッド。ともに偉大な監督の退任後に苦しい時期を経験したが、その後の歩みは対照的なものとなった。今季は第8節終了時点でユナイテッドは降格圏までわずか勝ち点1差に迫る苦境に陥っている。なぜ、これほどまでに両クラブの明暗は分かれたのか。クラブの土台となる組織づくりから理由を探る。(文:安洋一郎)[1/3ページ]


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プレミアリーグを代表するビッグクラブ

アレックス・ファーガソンとアーセン・ヴェンゲ
アレックス・ファーガソンとアーセン・ヴェンゲル【写真:Getty Images】



 プレミアリーグ創設期からリーグを牽引してきたマンチェスター・ユナイテッドとアーセナル。両クラブには、アレックス・ファーガソンとアーセン・ヴェンゲルという偉大な監督がいた。

 しかし、彼らが監督の座を退いてから、両クラブは「暗黒期」とも呼ばれる苦しい時期を経験することになる。

 プレミアリーグ史上最多となる13度の優勝を誇るユナイテッドが、最後にリーグ優勝を果たしたのは、ファーガソン体制の最終年にあたる2012/13シーズンだ。

 ファーガソン退任後もFAカップ2回、リーグカップ2回、EL1回を制しているが、名門復活を象徴するプレミアリーグやCLのタイトル には届かず、頻繁に監督交代を繰り返してきた。

 一方のアーセナルも、ヴェンゲル政権下では2003/04シーズンを最後にプレミアリーグのタイトルから遠ざかった。しかし、同監督はFAカップで強さを発揮し、2010年代以降も3度の優勝を果たしている。

 ところが、ヴェンゲル監督が2017/18シーズン限りで退任すると、アーセナルが獲得したメジャータイトル(コミュニティ・シールドを除く)は、ミケル・アルテタ体制の初年度にあたる2019/20シーズンのFAカップのみとなった。かつて得意としていた国内カップ戦でも、タイトルから遠ざかる時期が長く続いた。

 それでも近年のアルテタ率いるアーセナルは、毎シーズンのようにリーグ優勝を争い、2025/26シーズンには待望のプレミアリーグ制覇を果たした。同シーズンにはCL決勝にも進出しており、名門が復活したと堂々と宣言できるだけの結果を残している。

 両チームは今季も対照的なシーズンを過ごしている。暗黒期を完全に脱したアーセナルと、いまだ低迷から抜け出しきれないユナイテッド。

 どちらも長く苦しい時期を経験してきた中で、両クラブの明暗はどのようにして分かれたのだろうか。

なぜ偉大な監督の後には「暗黒期」が待っているのか

アレックス・ファーガソンとアーセン・ヴェンゲ
アレックス・ファーガソンとアーセン・ヴェンゲル【写真:Getty Images】



 筆者は、クラブにとって最も重要なのは、土台となる「フィロソフィー」と「アイデンティティ」だと考えている。

 クラブが大切にする価値観や意思決定の原則を定め、その上で、どのようなフットボールを理想とし、どのようなチームを作るのか。さらに、その実現に向けて、どのような監督や選手が必要で、どれほどの投資や時間が求められるのか。

 こうしたクラブの土台となる設計図を描くのが、CEOやスポーツ・ディレクター(SD)をはじめとするフロントの役割である。

 監督が永久にクラブに留まることはない。だからこそ、フロントがクラブのフィロソフィーを定め、現場と連携しながら中長期的な強化方針を決めることが重要だ。

 しかし、約27年間にわたってユナイテッドを率いたファーガソンや、22年間アーセナルの監督を務めたヴェンゲルは、単なる一監督という枠を超えた存在だった。彼ら自身がクラブのフィロソフィーを体現する存在だったのだ。

 結果論ではあるが、その影響力があまりにも大きかったことも、退任後の暗黒期を招いた一因だろう。

 ここで「良くも悪くも」と表現したいのは、彼らの在任中には問題にならなかったことが、退任後に大きな問題として表面化したからだ。監督がクラブの哲学を体現している間は、その影響力がプラスに働く。

 しかし、退任によってクラブの土台そのものが失われれば、後継者が埋めるべき穴はあまりにも大きい。あらかじめ計画を立てていなければ、その穴を埋めることは極めて難しい。

 両クラブに共通していたのは、偉大な指揮官の退任後、クラブとしての方向性を再定義する必要に迫られたことだ。

 ただし、その後の歩みは同じではない。新たな体制を整え、強化方針を再構築できたかどうか。その違いが、両クラブの現在地を分けていくことになる。

十分ではなかったフロントの体制

エド・ウッドワード
エド・ウッドワード【写真:Getty Images】



 現代のフットボール界では、ピッチ内外での分業化が進んでいる。フロントがクラブ運営全般に関わる一方、監督や選手との交渉を担うSDや、強化方針の策定やスカウティングで大きな権限を持つテクニカル・ディレクター(TD)といった職種も一般的になった。

 しかし、ファーガソンやヴェンゲルがクラブを去った当時、ユナイテッドとアーセナルには、こうした役割分担を十分に機能させるフロントの体制が整っていなかった。

 ユナイテッドの場合、ファーガソンと同時期にCEO(最高経営責任者)のデヴィッド・ギルも退任。後任には副会長だったエド・ウッドワードがクラブ運営の責任を担った。彼はグレイザー一家によるクラブ買収にも関わった人物だが、フットボール部門で経験を積んできた経営者ではなかった。

 確かにウッドワードは、高額のスポンサー契約を締結するなど、商業面では手腕を発揮した。しかし、肝心のフットボール部門では失敗が続き、とりわけ移籍市場での振る舞いには多くの問題があった。

 一方のアーセナルでは、2009年からCEOを務めていたイヴァン・ガジディスが、ヴェンゲル退任直後の2018年10月にクラブを去った。

 ガジディスは、ヴェンゲル退任後のフロント人事を主導し、フットボール部門の責任者としてバルセロナからラウル・サンジェイを、スカウト部門の責任者としてドルトムントからスヴェン・ミスリンタートを招へいした。

 しかし、サンジェイと対立したミスリンタートは2019年2月に退任し、前者も補強方針を巡る問題などから、2020年夏に同職を退いた。
 
 監督の能力を最大限に引き出せるかどうかも、クラブの組織力に左右される。そのことを象徴するのが、ヴェンゲルの後任としてアーセナルでは十分な成果を残せなかったウナイ・エメリが、アストン・ヴィラではチームを成功へ導いているという事実だ。

 彼がアーセナルの監督を解任された時点では、自らを招へいしたガジディスの立場は弱まり、補強に関わったミスリンタートはクラブを去っていた。監督を支えるフロントの体制が安定していなかったことも、アーセナルで成功を収められなかった一因と考えられる。

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