
今季16位に沈むマンUと昨季優勝を果たしたアーセナル【写真:Getty Images】
プレミアリーグを代表する名門、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッド。ともに偉大な監督の退任後に苦しい時期を経験したが、その後の歩みは対照的なものとなった。今季は第8節終了時点でユナイテッドは降格圏までわずか勝ち点1差に迫る苦境に陥っている。なぜ、これほどまでに両クラブの明暗は分かれたのか。クラブの土台となる組織づくりから理由を探る。(文:安洋一郎)[3/3ページ]
次の監督以上に重要なのは?

ジェイソン・ウィルコックス【写真:Getty Images】
こうした問題については、フットボール部門の責任者であるジェイソン・ウィルコックス自身も、2025年9月の発言で認めている。
「クラブは実際よりもずっと良い状態にあると思っていたが、私たちにはフットボールのアイデンティティがなく、オーナーシップ、CEO、フットボール部門、そしてアカデミーの間の連携が欠如していた」
この発言が示しているのは、戦術や補強の問題にとどまらず、経営陣からトップチーム、アカデミーまでが共通の方向性を持てていなかったということだ。組織内の連携が機能しなければ、監督や幹部が交代するたびに方針が揺らぎ、補強や育成の成果も積み上がりにくい。
両クラブの明暗を分けたのは、単に補強の成否や監督の力量ではない。監督が交代しても継続される強化方針を、クラブとして構築できたかどうかだ。
アーセナルでは、エドゥが主導した中長期的な計画の下で、アルテタが求める戦力を段階的に整え、エドゥの退任後もベルタがスカッドの強化を引き継いだ。
一方のユナイテッドでは、フロントの人事や監督交代が続き、クラブとして目指すフットボールと補強方針の関係が見えにくい状況が続いている。
ファーガソンの後に誰を監督に据えるか。ユナイテッドは、その問いに何度も答えを出そうとしてきた。しかし、本当に問うべきだったのは、誰が監督になっても勝てる組織を作れているのか、ということではないだろうか。
アーセナルの復活までの過程が示したのは、偉大な監督の後継者を見つけること以上に、クラブとして進むべき道を定めることの重要性だった。
仮にキャリックが監督の職を解かれたとしても、現状の体制のままではユナイテッドが大きく変わることはないだろう。
ユナイテッドに問われているのは、監督が誰なのかではない。その監督に何を託し、どのようなクラブを作ろうとしているのか。その答えをフロントが示さなければならない。
(文:安洋一郎)
【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu
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