FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)が終わり、日本代表は2030年大会へ向けた新たなスタートを切る。4年後を見据えれば、避けて通れないのが「世代交代」だ。しかし、森保一監督が指揮を執るのは来年1月のAFCアジアカップまで。しかも指揮官は9月・10月シリーズについて、W杯メンバーを中心に選考する方針を示している。アジア杯優勝を目指しながら、次の4年間につながる選手をどう育てていくのか。この半年間を森保ジャパンの“花道”だけで終わらせていいのだろうか。(文:小澤祐作)
北中米W杯を終えて再出発
「今はポテンシャルがあり、将来を担い得る若手選手を優先すべき時」
これは今月9日、ブラジル代表メンバー発表後のカルロ・アンチェロッティ監督の発言である。
この言葉が出た背景には、将来性を重視したメンバー選考に対し、チアゴ・シウバが苦言を呈したことにある。アンチェロッティ監督はベテランにも代表への扉は開かれているとしながら、北中米W杯を終えた今、新たなサイクルに向けて若い選手を積極的に試していく姿勢を示した。
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)を終え、各国代表は4年後に向けた再出発を図る。その中で、一つの大きなテーマになるのが「世代交代」だ。ブラジルは早くも、その舵を切ろうとしている。
日本代表も例外ではない。
これまでチームの中心を担ってきた東京五輪世代の選手たちは、いよいよ30代に突入する。伊東純也や谷口彰悟らはさらに上の年代だ。若い世代から新たな主力が出てこなければ、4年後に向けたさらなるレベルアップは期待できない。
その意味で、9月・10月の4連戦は若手を試す絶好の機会になる。
森保一監督はすでに基本的にはW杯のメンバー中心との方針を明かしている。もちろん全員が選出されるわけではないだろうし、4連戦ということもあって、普段より多くの選手を招集する可能性もある。まったく新顔がいない、という結果にはならないだろう。
ただ、本当の意味での「世代交代」まで踏み込めるのか。そこには疑問が残る。
その大きな理由が、年明けに控えるAFCアジアカップ2027の存在だ。
アジアカップも結局メンバーは…
アジア杯は年明けすぐに開催される。残された準備期間は決して長くない。
戦術をアップデートし、新戦力を発掘し、チームに組み込んでいく。本来ならW杯後に取り組むべきことは数多くあるが、それらを短期間ですべてクリアすることは難しい。
まして、アジア杯で日本代表に求められるのは「優勝」である。
そう考えると、結局は北中米W杯と大きく変わらないメンバーで大会に臨むことになるのではないか。フォーメーションもこれまで成熟させてきた3-4-2-1がベースになる可能性が高い。
もちろん、それ自体が間違いだとは思わない。
長い時間をかけて成熟させてきたチームであり、アジア杯で優勝することだけを考えれば、最も確実性の高い選択肢の一つだろう。
しかし、4年後を見据えた時、それだけでいいのだろうか。
極論を言えば、若手主体でアジア杯に臨むことの方が、2030年W杯に向けて得られるものは多いかもしれない。ただ、「優勝」が絶対条件である以上、それは現実的な選択肢にはなりづらい。
つまり現在の日本代表は、「アジア杯で結果を残すこと」と「4年後へ向けて世代交代を進めること」という、二つのテーマを同時に突きつけられている。
そして現時点での森保監督の発言を見る限り、優先順位は前者にあるように映る。
実際、9月・10月シリーズについて「W杯のメンバー中心」と明言している。所属クラブで難しい時期を過ごしている板倉滉についても招集する意向を示した。
もちろん、森保監督のサッカーを熟知し、長く代表を支えてきた選手を評価することには合理性がある。ただ、それを続ければ続けるほど、若手が入り込む枠は限られる。
半年しかないからこそ、慣れ親しんだメンバーで完成度を高めるのか。半年しかないからこそ、次の4年間につながる選手を一人でも多く試すのか。
森保監督がどちらを選ぶのかは、この9月・10月シリーズの大きな注目点になる。
この半年間は誰のためにあるのか
そもそも、今回の森保監督続投は異例だ。
北中米W杯終了後、日本サッカー協会(JFA)は森保監督にアジア杯まで指揮を託すことを決めた。次のW杯までの4年間ではなく、半年という限られた期間である。
そうである以上、考えなければならない。この半年間は何のためにあるのか。
アジア杯で優勝し、森保ジャパンの集大成を示すためだけの時間なのか。それとも、2030年W杯を目指す次の日本代表へバトンを渡すための時間でもあるのか。
北中米W杯に出場できなかった南野拓実や三笘薫をはじめ、森保体制を長く支えてきた選手たちもいる。彼らを含め、これまで積み上げてきたメンバーでもう一度アジアの頂点を目指す。それも一つの考え方だ。
しかし、その先には必ず世代交代が待っている。
アジア杯まで従来のメンバーを中心に戦い、そこで森保体制が終われば、新監督は就任直後からチーム作りと世代交代を同時に進めなければならない。
それは本当に、日本代表にとって最善なのだろうか。
ブラジルはW杯終了直後から、4年後を見据えて若い選手を試し始めた。日本はどうするのか。
もちろん、アジア杯のタイトルを軽視することはできない。しかし、目の前のタイトルだけを追いかけて、この貴重な半年間を使い切ってしまうことにも疑問は残る。
9月・10月の4連戦で誰を呼び、誰を試すのか。そこから見たいのは、単なるアジア杯のメンバー争いだけではない。
今月から来年1月までの森保ジャパンに何を託し、その先の日本代表へ何を残そうとしているのか。
この半年間を、森保監督の“花道”だけで終わらせてはいけない。
2030年W杯へ向かう日本代表は、すでに始まっているのだから。
(文:小澤祐作)
【著者プロフィール:小澤祐作】
1997年生まれ、神奈川県出身。高校卒業後、専門学校で編集・ライティングのノウハウを学び、2017年よりフットボールチャンネル編集部に所属。2024年からは編集長を務める。国内、海外サッカー問わず執筆した記事は星の数ほど。心のクラブはACミラン、アイドルはパオロ・マルディーニ。サッカー歴10年の中でDF以外やったことがないが、記事は守りよりも攻めたものを好む。
歴代最強!? 4年後のW杯サッカー日本代表メンバー案
今回が最後…? W杯日本代表、今後はメンバー外濃厚な5人
日本代表は「史上最強」ではなかった。森保一監督を本当に続投させるべきか? 「目標」に遠く及んでいない現実を見るべき
【了】




