勝利まで、あとわずかだった。リーグ戦3連敗中の鹿島アントラーズは川崎フロンターレとの打ち合いで一度は3-2とリードしながら、後半アディショナルタイムに失点。土壇場で勝ち点2をこぼした。その一戦で1得点1アシストを記録し、攻撃をけん引したのが松村優太だ。それでも、本人の口から満足の言葉は出てこなかった。「鹿島というチームは勝ちが必要なチームです」。結果を残しても勝てなければ喜べない。その言葉とプレーには、鹿島で育った25歳が背負おうとしている役割が表れていた。(取材・文:石田達也)
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2026/27明治安田J1リーグ第8節
川崎フロンターレ 3-3 鹿島アントラーズ
Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
土壇場でこぼれた勝ち点2
リーグ戦4連勝スタートから3連敗と失速――。後退を余儀なくされたからこそ是が非でも勝ち点3だけが欲しかった。
結果から言えば、打ち合いの末、3-3でのドロー決着。一時1-2とリードを許した後、レオ・セアラのこの試合2点目となるゴールで追いつき、松村優太のゴールで勝ち越しに成功したが、最後の最後に勝ち点2がこぼれ落ちていった。
「最後にリードしたのに勝ち点3を取れなかったことを非常に悔しく思います。しかし、選手は、よくファイトしてくれたゲームだと捉えています。最後のところで勝ち切れていないので、そこは鹿島としてもう一つ強くなっていく上で必要なことだと思っています。
選手はとても悔しい思い、残念そうな顔をしていましたけれども、戦っていないんだったら言いますが、戦った中でのそういう結果なので、選手を誇らしく思います」
鹿島を鬼木達監督は振り返った。
試合序盤から川崎がボールを持つ展開で進んでいく。19分にはFKの流れから早くもゴールネットを揺らされるが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)チェックからOFR(オン・フィールド・レビュー)の結果、MFマルシーニョのハンドが認められてノーゴールの判定となり、難を逃れた。
その後も川崎の攻勢は続く。好守の切り替えとプレスが速く、ボールを奪われシュートも立て続けに打たれたが、それでもGK早川友基を中心に守備陣が体を張り、ゴールを割らせない。
すると鹿島が試合を動かす。
松村優太「去年から監督にも言われていて…」
44分、早川からのロングキックをレオ・セアラが頭で右に流し、松村がタイミングを見計りクロスを送ると、レオ・セアラが力強いヘディングシュートでねじ込んだ。
ガッツポーズで喜びを表現した松村は「レオだったり、徳田(誉)が競ったあとは狙えると話していたので、あれはレオが良い形で、彼しか決められないようなシュートだったと思いますし、決めてくれて良かったなと思います」と話した。
しかし、前半終了間際の45+3分にマルシーニョに決められ1-1でハーフタイムを迎えた。
試合の流れを変えたい鹿島は、58分に伊藤達哉に得点を許すも、67分にチャンスを作り、チャヴリッチの折り返しを、またしてもレオ・セアラが左足ボレーでゴールネットを揺らした。
そして縦突破やドリブルで積極性を存分に表現していた背番号27が、チームを一歩前に動かす。
時計の針は82分を過ぎていた。敵陣でルーズボールを回収した松村がドリブルで運び左サイドの小川諒也へパスを出すとワンタッチでクロスを入れる。弾かれたボールを柴崎岳がシュートし、これは相手GKスベンド・ブローダーセンに止められるも、そのこぼれ球に素早く反応した松村が蹴り込み、リードを奪った。
ボールへの反応速度は2秒―。とにかくガムシャラにゴールだけを目指すところに狩猟者の目をした背番号27がいた。
松村は「去年から監督にも言われていて、こぼれ球への良い準備をしているからこそだと思っています」と話す。
その上で「ボールへの反応だったり、スピードのところは自分の特長でもあるので、それが生きたゴールだったと思います」と続けた。
「鹿島というチームは…」
だが喜びも束の間、終了間際の土壇場の90+7分に、一瞬の隙を突かれパワープレーに出たDFペドロ・ホマーノに同点弾を献上。選手が疲弊していたことも原因の一つに挙げられるが、強度の高い守備を最後まで見せられず勝ち点3を逃す形となった。
連敗を止めることになったが、松村の言葉を借りれば「最後に守り切るところで、そこへ対応する部分が、まだ甘かった」ということになる。
この一戦に臨むにあたり、チームで次のことを共有し、松村自身もピッチで体現することを求めた。
「鹿島の良さの戦うことやハードワークのところを、もう一度しっかりやろうというところと、もちろん内容云々もありますけど、やっぱり勝って反省をしていくのが自分たちの姿だと思っているので、もう一度、戦うところ、鹿島の圧力を出していこうと思いました」
この日の川崎戦では1ゴール&1アシストを残し、総スプリント回数1位、ドリブル数4位、チャンスクリエイト数3位を記録するなど、日々、存在感は増している。
そして、チームの中で自らが担うべき役割について強く意識する。
「連戦の中でAFCチャンピオンズリーグエリートやJリーグもあります。リーグ連覇とACLEのタイトルを狙っている中では、一人ひとりがしっかり準備をしないといけない。
その中で毎試合、良いパフォーマンスをして、良い活躍をすることができれば、相乗効果で若い選手が追い抜いてやろうという底上げにもなるし、底上げだけじゃなく引っ張ることが大事だと思いますし、そういった役割になりたいと思っているので、もっともっとチームが勝てるようなプレーをしなければいけないと思っています」
鹿島のDNAを受け継いでいるからこそ、勝利への飢えは人一倍感じている。屈することなく抗い、戦い、愚直に前へと進む。松村の視界の先には頂点へと続く確かな道が見えている。
「僕自身もチームもそうですし、鹿島というチームは勝ちが必要なチームです。僕も正直、点を取ったりアシストをしたり、連敗を止めたことはありましたが、納得はしていないし悔しいです。
でも、くよくよしている暇はない、直ぐ次の試合が来るし、少し間を空けてまた自分たちを見つめ直す時間もあると思うので。去年優勝した時も苦しい時間もあったので、全員でやっていきたいと思っています」
その言葉を胸に、松村は自らの答えをピッチで示していく。
(取材・文:石田達也)
【著者プロフィール:石田達也 フリーライター】
千葉県出身。浦和や千葉を中心にJリーグやアマチュアスポーツまで幅広く取材。サッカー専門誌、地域情報誌などにも多数寄稿。「職業サッカークラブ社長」(ベースボール・マガジン社)などの書籍編集を担当。「浦和ACL戦紀」(ELGOLAZO BOOKS)共著がある。
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