
北海道コンサドーレ札幌の川原颯斗【写真:Getty Images】
函館の地で、開幕戦以来となる8試合ぶりの勝利を飾った北海道コンサドーレ札幌。この一戦で今季初めてメンバー入りし、勝利に貢献したのが川原颯斗だ。学生時代から幾度も取材をしてきたが、川原が主力を担ってきたチームは中学、高校、大学と安定した好成績を残してきた印象がある。そしてプロの舞台でも、“勝ち運”を感じさせる興味深い数字が残っている。「俺、勝ち癖があるんです」と語る23歳。その言葉は、果たして偶然なのか――。(取材・文:黒川広人)
【2026/27明治安田J2リーグ第9節】
2026年10月4日 北海道コンサドーレ札幌 2-1 いわきFC
(函館どつくスポーツガーデン)
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待ち続けたリーグ戦の舞台。川原颯斗が貫いた「まずは守備から」

いわきFC戦で今季リーグ戦初出場となった川原颯斗(写真上段左から2番目)【写真:Getty Images】
今シーズン待望のリーグ戦での出場機会をつかみ、チームの勝利に貢献した川原颯斗は、試合後、安堵の表情を浮かべた。
「安心です。ほっとしました。ずっと試合に出れていなかったので、ルヴァンカップの試合もそうでしたが、まずは絶対に結果を残してやろうっていう気持ちで臨みました。細かいことを言ったら、いろいろ修正しないといけない部分はありますけど、まずはチームの結果を出せたので良かったです」
開幕戦で白星を挙げて以降、2カ月近くリーグ戦で勝利から遠ざかっていた北海道コンサドーレ札幌にとって、この日は何よりも結果が求められる一戦だった。
川原は3バックの右センターバックとして、幾度となく体を張った。学生時代から4バックを基本とするチームでプレーしてきただけに、3バックに慣れているわけではない。それでも、与えられた役割を柔軟にこなせるのが川原の強みの一つだ。
「3バックで戦っていたトップの試合を小さい頃から見てたので。(田中)駿汰くんだったり、ああいうふうになりたいなっていうところはあるので。そういったところは意識していました」
まずはチームの勝利。そのために、自らは守備から入る。与えられた役割を着実に遂行するところにも、川原らしさがにじむ。
「自分が試合に出るとき、結構攻撃のほうが好きっぽくは見られるかもしれないですけど、自分的には守備から入るところを常に大学のときからやってたので、そういった部分を意識して特に臨みました」
今シーズンは、なかなか出場機会に恵まれない日々が続いていた。練習からさらなるアピールが必要だと自らに矢印を向ける中、ようやく巡ってきたのが9月2日のルヴァンカップ・鹿児島ユナイテッドFC戦だった。今シーズン初出場を果たし、チームも勝利。その試合後、川原は笑いながら、こんなことを口にした。
川原颯斗をよく知る二人が語った「いると助かる」理由

川原颯斗は、9月2日のルヴァンカップ・鹿児島ユナイテッドFC戦で今季初出場を果たした【写真:Getty Images】
「勝ててよかったです。俺、勝ち癖があるんです」
確かに、数字を見れば興味深い。
国士舘大学から札幌に加入し、臨んだ百年構想リーグで川原は13試合に出場。その間、チームは9勝1分3敗という好成績を残した。
一方、川原が出場しなかった7試合は3分4敗。勝利は一度もなかった。
もちろん、川原一人の力でもたらされた9勝ではない。対戦相手や試合展開、チーム状況など、さまざまな要素が絡み合った結果だ。単なる偶然と言ってしまえば、それまでなのかもしれない。
それでも、川原をよく知る人物たちが、かつて語ってくれた言葉を思い出す。
北海道コンサドーレ札幌U-18時代に川原を指導した森下仁之氏は、当時こう話していた。
「このチームで一番欠かせないのは絶対に(川原)颯斗です。颯斗がいると、隣の(西野)奨太もやりやすいはず。颯斗がいると、チーム全体がうまく循環するんですよ。逆にあいつがいなくなると、俺って彼に楽をさせてもらっていたんだと痛感する存在(笑)」
そして、国士舘大学時代の川原を幾度となく視察し、獲得に尽力した上本大海氏も、加入後にこんな言葉を語ってくれた。
「チームで一緒にサッカーをしないと、魅力が伝わりきらない選手っているんですよ。一緒にやって、『こいつスゴいな』、『いると助かるな』って。カワはそういう選手だと思います。噛めば噛むほど味が出てくる選手なんです」
「勝ち癖」という言葉だけを切り取れば、運にも似た話にも聞こえる。しかし、川原をよく知る二人の言葉には共通するものがある。森下氏は「颯斗がいるとチームがうまく循環する」と語り、上本氏は「彼がいると助かる」と表現した。
突出した数字や派手なプレーだけで、その価値を語れる選手ではない。自らが目立つ以上に、周囲を活かし、チームを安定させる。目には見えにくい、そんな働きもまた川原が持つ価値なのだろう。
周囲から確かな評価を得てきた一方で、本人の自己評価は厳しい。百年構想リーグを振り返った際、こんな言葉を口にしていた。
「『そんなこと言うな』とか言われましたけど(笑)」周囲も認識する“勝ち癖”

ルーキーながら定位置奪取を目指す【写真:Getty Images】
「百年構想リーグもスタートで出たのが、結局5試合だったので(3勝1分1敗)。そこはやっぱり、信頼をまだまだ勝ち取れてないと思います。途中から出て、勝利に貢献できたところはあると思いますが、まだまだです。ウィークを挙げたらきりないんで、そこを一つずつ潰していって、新シーズンはもっとスタートで出れるようになっていきたいと思っています」
実際、川原は課題に挙げるフィジカル面の強化にも取り組んできた。週に3、4度、全体練習後にも個人トレーニングに励み、半年間で体重を3kg以上増やしたという。
そうして自らと向き合い続ける川原の力を求めていたのは札幌だけではなかった。夏の移籍ウインドーが開いていた9月、百年構想リーグでの川原のプレーを高く評価し、獲得に関心を示すクラブがあったのだ。それでも、川原が選んだのは札幌に残り、自らの力でポジションをつかむ道だった。
「スタッフ陣からも、いつかお前の力が必要になると熱く言われたので。正式なオファーが出る・出ないもありましたが、最終的にはこのチームでやると自分で決めました。札幌のために戦うだけです。ここからですね!」
札幌で戦う決意を胸に、つかんだ今シーズン初先発の機会。チームは8試合ぶりの勝利を手にした。いわきFC戦の前々日に23歳の誕生日を迎えたばかりの川原にとって、新たな一年は最高の形で幕を開けた。
「俺、勝ち癖があるんで」
そんな“勝ち癖”を周囲も認識しているようで、チームメートからはこんなツッコミもあったという。
「周りからは笑われましたけどね。ゴメス兄さん(堀米悠斗)とかには『そんなこと言うな』とか言われましたけど(笑)。きょうもこうやって勝てて、ほっとしてます。大きな1勝ですよ」
ただ、一つ勝っただけでは「勝ち癖」とは呼べない。
次節はジュビロ磐田戦。川原にとっては、百年構想リーグで初先発を飾って勝利を手にし、その後、出場機会を増やしていくきっかけとなった相手でもある。
「磐田戦が百年構想リーグでの自分の初スタメンの試合で、それこそ(西野)奨太が点を取って勝ったので。自分的には縁起のいい場所です。でも、目の前のやつに勝って、チームでも勝って、勝利に貢献したい。J1昇格のために、チームのために戦うだけです」
川原がいると、勝率が高くなる。
それは偶然なのか、必然なのか――。
その答えは、ここから川原自身がピッチの上で証明していく。
(取材・文:黒川広人)
【著者プロフィール:黒川広人】
北海道出身。大学卒業後、フジテレビで番組制作を担当。2018年よりDAZNにてJリーグ関連の番組制作に携わる。2022年からは株式会社dscに所属し、Jリーグ、Jクラブ、WEリーグをはじめとする各種スポーツ団体の映像ディレクション業務を担当。また、地元・北海道を中心に学生年代の取材活動も精力的に行う。
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