
ベガルタ仙台の奥山政幸【写真:Getty Images】
10月17日、2026/27明治安田J2リーグ第11節・徳島ヴォルティス戦をスコアレスドローで終え、第2節から続く無敗記録を10に伸ばしたベガルタ仙台。首位を走るチームにおいて、直近3試合にボランチとして先発出場しているのがDF奥山政幸だ。2016年にレノファ山口FCでJリーグデビューを果たし、プロキャリア11年目を迎えた33歳。サイドバックやセンターバックを主戦場としてきたベテランは今、新境地で飛躍のときを迎えている。(取材・文:郷内和軌)[1/2ページ]
【2026/27明治安田J2リーグ第11節】
2026年10月17日 ベガルタ仙台 0-0 徳島ヴォルティス
(ユアテックスタジアム仙台)
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「仙台に来てからは、ほとんどやったことがなかったです」

9月26日の第8節・いわきFC戦でもボランチとして途中出場し、完封勝利に貢献した奥山政幸【写真:Getty Images】
この1週間、Jリーグのサポーターたちをにぎわせた動画がある。
“オトナはサイコー!”
ロックバンド・怒髪天の楽曲「オトナノススメ」を熱唱するのは、ワールドカップ5大会連続出場を果たしたFC東京の長友佑都。大手ハンバーガーチェーンのWebコマーシャルとして公開された動画は、軽快なダンスと力強い歌声、さらにチームメートのゴールパフォーマンスも相まって、大きな話題を呼んだ。
しかし、ベガルタ仙台のサポーターだけは、反応の様子が異なるものだった。
「これが先生のチャントの原曲か!」
仙台サポーターが言う“先生”とは、2024年夏に加入し、2025シーズンからは副キャプテンを務めるDF奥山政幸だ。堅実な対人プレーと、若手の模範となる人間性を兼ね備え、FC町田ゼルビア在籍時にはキャプテンとしてJ2リーグ優勝にも貢献した守備職人である。
年を重ねることを恐れず、人生はここからが本番だと大人たちを奮い立たせる応援歌。2016年にJリーグデビューし、チームではDF韓浩康と並んでフィールドプレーヤー最年長となる33歳のベテランは今、百年構想リーグで作られた自らのチャントの原曲をなぞるように、新境地で飛躍のときを迎えている。
始まりは、9月20日の第7節・栃木シティ戦にさかのぼる。3点リードの77分に途中出場した奥山は、DF登録ながらボランチの位置に入り、ゲームを締める役割を任される。9月26日の第8節・いわきFC戦も同じくボランチとして66分から途中出場。持ち前の守備力でピンチの芽を摘むだけでなく、隙を見ては前線にも顔を出し、2-0の完封勝利に貢献した。
「学生時代や町田にいた頃にボランチをやっていた時期もありましたけど、基本はサイドバックかセンターバックだったので…。仙台に来てからは、ほとんどやったことがなかったです」
もともと隠し持っていた能力なのか、それとも、ベテランのなせる業と言うべきか。いわき戦の翌日、SNS上で「本職ボランチで合ってますよね?」と本人にコメントを送ったのはDF井上詩音。チームメートも目を丸くさせる活躍だったことが、この投稿からもうかがえる。
ボランチ起用はサプライズか。奥山政幸が積み重ねてきた成長

奥山政幸は、10月4日のジュビロ磐田戦でもボランチとして攻守にわたって存在感を発揮した【写真:Getty Images】
その働きぶりが評価され、続く10月4日の第9節・ジュビロ磐田戦では7試合ぶりに先発出場。サイドへのダイナミックな展開や鋭い縦パスでチャンスを演出するなど、交代するまでの71分間、攻守にわたって存在感を発揮した。
試合後、奥山は自身のプレーをこのように振り返っていた。
「相手は前線にパワーを持った選手が多かったので、落としたところのセカンドボールや、簡単に楔のパスを入れられないようにセンターバックの前を埋めてあげることを意識しました。
それに、攻撃でもうまく全体を見ながら、相手が嫌がるエリアがどこなのかを考えながらプレーしました。前にいる選手たちもうまく動き出してくれるので、自分の中でも良い判断ができたかなと思います」
ボランチとして開拓した新境地。チームにとっても序盤戦の一つのサプライズとなったが、一方で驚きをそこまで感じない者も少なからずいたことだろう。それを物語るのが、クラブにとって17年ぶりのタイトル獲得となった百年構想リーグを総括した際のコメントだ。
「これまで一緒にプレーしてきた先輩方もそうですが、いろんな選手が年を重ねてからも成長する姿を見てきました。これからも現状に満足することなく、自分を信じて、サッカーを続けていきたいです」
百年構想リーグから新システムを採用した仙台。その中で、奥山は自らのキャリアでもほとんど経験がなかったという3バックに挑戦し、ディフェンスラインの一角を支えた。与えられたポジションで自分が何をできるかを考え、その最適解を日々追い求めていく。向上心を持ち続ける姿を示してきたからこそ、今の活躍ぶりに納得感を抱くサポーターも多いはずだ。
「何歳になっても成長できる」。百年構想リーグ終了後、そう口にしていた奥山。あれから4カ月が経ち、新たなポジションで才能を開花させつつある現在、心の中に広がるのはフットボーラーとしての充実感だ。
「純粋に『うまくなりたい』という思いで…」ベテランがチームに与えるもの

10月17日の徳島ヴォルティス戦で3試合連続の先発出場となった奥山政幸(写真下段一番右)【写真:Getty Images】
「サッカーが楽しいなって、今、本当に思いますね。純粋に『うまくなりたい』という思いで、心の底からサッカーを楽しめています。もちろん、体はこれから衰えていく部分もあると思いますけど、それをしっかり補えるような技術だったり、戦術だったりは、もっともっと磨いていけるのかなと思います」
背番号3がピッチ上で体現する成長の二文字。それは当然、チームの中軸を担う下の世代にも大きな影響を与えている。その一人が、ボランチを主戦場とするMF松井蓮之だ。2試合の欠場から復帰した10月11日の第10節・モンテディオ山形戦後、町田時代からのチームメートでもある先輩の活躍ぶりをこのように称えていた。
「どのポジションをやってもハイレベルなパフォーマンスができるのが奥山選手のすごいところ。今までずっとアンカーをやっていたかのようなレベルでしたし、チームのバランスを見ながらのプレーは僕も見習うべきところがあります」
そして、このままでは終われないと言わんばかりに、こう続ける。
「もちろん、同じポジションを争うライバルでもあるので、そこは負けちゃいけないなと。おっくん(奥山)がスタメンで活躍しているのを見て、悔しい思いも当然あったので、これからも切磋琢磨しながら、僕もスタメンに食い込めるように頑張りたいです」
ベテランがもたらすのは“落ち着き”だけではない。どこまでも成長する姿を背中で示すことで、チームにさらなる“刺激”を与える。プロである以上、年齢は関係ない。J2リーグで首位を走る仙台には、キャリアを越えた競争意識が着実に根付いている。
5連勝を懸けた10月17日の第11節・徳島ヴォルティス戦。3試合連続の先発出場となった奥山は、この日も出色のプレーを見せた。
中でも圧巻だったのが38分。仙台は敵陣左サイドでボールを失うと、センターサークル付近にいた徳島のFW渡大生にボールが渡り、カウンターのピンチを迎える。
しかし、素早いトランジションで自陣に戻った奥山は、クリーンなチャージであっという間にボールを奪取。まさに“先生”と呼ぶにふさわしい、ボランチのお手本となるような一挙手一投足だった。