
北海道コンサドーレ札幌の宮澤裕樹【写真:Getty Images】
今季ここまでリーグ戦12試合中11試合に出場し、北海道コンサドーレ札幌で改めて存在感を示しているのが、宮澤裕樹だ。チーム浮上へ向けて勝利が不可欠だった第12節のモンテディオ山形戦でも、鮮やかなパスで荒野拓馬の追加点を演出した。37歳になっても、その輝きは色あせず、むしろ渋みを増している。札幌一筋19年のバンディエラが見据えるのは、もう一度J1の舞台で戦うことだ。(取材・文:黒川広人)[1/2ページ]
【2026/27明治安田J2リーグ第12節】
2026年10月21日 モンテディオ山形 0-2 北海道コンサドーレ札幌
(NDソフトスタジアム山形)
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37歳・宮澤裕樹が北海道コンサドーレ札幌で示す存在感

モンテディオ山形戦でも後半から途中出場した宮澤裕樹【写真:Getty Images】
この日も宮澤裕樹に出番が訪れたのは、後半の66分だった。今季はチームが苦しい状況のなか、流れを引き戻す役割を期待される場面が多い。そして、宮澤は幾度となくその期待に応えてきた。本人も今季のプレーに手応えを感じている。
「自分が試合に出させてもらったなかで、チームが自分に求めていることはできていると思います。自分には今、役割があります。途中から入ることで、チームの良い薬になれていると思います。必要なことをどれだけ表現できるかという面では、良い仕事ができている」
川井健太監督も、宮澤に全幅の信頼を寄せている。
「僕が言うことはないですね。環境を与えて、チームとしてやりたいことを提示しますが、彼は僕のなかで本当に誤差がない選手なので。交わす言葉はほぼないんですけど、信頼しかないです」
北海道コンサドーレ札幌一筋19年。積み上げてきたリーグ戦の出場数は500試合を超える。まさに、札幌の象徴。バンディエラと呼ぶにふさわしい、クラブにとって唯一無二の存在だ。
「裕樹さんがいると、ポゼッションがスムーズに展開される」
「裕樹さんは、人の二つ、三つ先の手を考えている」
チームメートやスタッフも、そのプレーに賛辞を惜しまない。
実際、宮澤がキャプテンを務めた2016年から2023年にかけて、札幌はJ1昇格を果たし、J1の舞台で戦い続けてきた。クラブの歴史を語るうえで、背番号10の存在は欠かせない。
しかし、近年は度重なる負傷に悩まされ、出場機会が減少していた。2024年は21試合、2025年は15試合、百年構想リーグではわずか1試合の出場にとどまり、宮澤の苦境と重なるように、クラブもまた、苦しい時間を過ごしてきた。
それでも、2026/27シーズンに向けて身体をイチからつくり直してきたことが、今季の充実したプレーにつながっているという。
「もっとみんなの思いを俺らにぶつけてくれ」。苦境で宮澤裕樹が伝えた言葉

テゲバジャーロ宮崎戦後、宮澤裕樹と西野奨太はサポーターと対峙した【写真:Getty Images】
「百年構想リーグでは特に怪我が多かったので、その時間も使って、しっかり身体をつくり直したというか。ケアも入念にやりました。シーズンに入ってからはチームに帯同できていますし、練習もできているので、足の状態は良いですね」
この日も、鮮やかなターンでスタンドを沸かせると、その後も華麗な股抜きからクロスを送り、荒野拓馬の追加点を演出した。長年ともに戦ってきた盟友のゴール。チームを活性化させるうえでも、大きな意味を持つ得点だった。
「経験のある選手が途中から出ていることが多いなか、各々の役割をしっかり果たすことが、チームの助けになりますし、次に向かう活力にもなります。きょうは(荒野)拓馬も久しぶりに試合に出て、結果につながったので。
拓馬が盛り上がると、チームも盛り上がるので、良かったと思いますね。今、勝つことは、このチームにとって非常に重要だと思います。特に若い選手が多く出ているなかで、メンタル的にも、次に向かう自信にもつながると思います」
宮澤の存在感は、ピッチの中だけにとどまらない。
リーグ戦で7試合勝利がなく、チームが苦境に立たされていた第8節のテゲバジャーロ宮崎戦。試合後、サポーターへの挨拶の場には、重苦しい空気が漂っていた。
「ここで話すのは意味がない」
そんな声も上がるなか、宮澤は一歩前に出て、サポーターに訴えかけたのだ。
「もっとみんなの思いを俺らにぶつけてくれ」
あの時、どんな思いでその言葉を発したのか。宮澤に胸の内を尋ねた。
札幌は、まだ死んでいない。宮澤裕樹と指揮官が示した覚悟

9月26日のテゲバジャーロ宮崎戦後、サポーターへ挨拶をする北海道コンサドーレ札幌の選手たち【写真:Getty Images】
「僕らも1試合1試合一生懸命やっています。ただ、頑張って戦っていると、こっちが思っていても、頑張っている、頑張っていないを判断するのは、サポーターの皆さんだったり、見ている方々なので。皆さんのそれぞれの声を自分たちは受け入れないといけない。
僕たちは、すぐにトレーニングをして、悔しさを取り返すための努力ができますけど、サポーターの皆さんは、また1週間待たないといけない。お金を払って、声を枯らして、苦しいゲームを見せられて、またフラストレーションをためて、仕事に行くという循環でしたからね。
そういうことを考えると、やはり自分たちは受けるべき声を真に受ける。それを受け止めたなかで、自分たちがブレずにどう過ごしていくかだと思いました。そこでしっかりと向き合えたからこそ、連勝につながったと思いますし、ここから継続していくことでしか、自分たちは前に進めないと思います」
チームがうまくいかないとき、責任の矛先が他者に向き、組織がまとまりを失ってしまうことは珍しくない。だが、当時、選手たちの言葉を聞いて、こう感じた。
札幌は、まだ死んでいない。
宮澤は、選手としての責任を口にしていた。
「ピッチに立っているのは俺ら選手だから。監督じゃなくて、俺らの責任だから」
一方、川井監督も自らの責任を強調した。
「ここまでの結果は俺の責任。選手たちはやっているから。やれないようにしているのは俺の責任だから」
そして、こう言葉を続けた。
「俺は責任放棄する気はさらさらない。このチームでJ1に上がる。そのために北海道に来た」
もちろん、サポーターの前で発せられた言葉ではあったし、チームには改善すべき課題も残されている。それでも、試合後には、ある選手もこう語っていた。
「今は監督の求めることを選手ができていない。自分はそれが変われば必ずチームは浮上できると、この状況でも思っています」
試合後も選手と監督がそれぞれの立場で責任を引き受けようとする姿に、チームが再び上向く可能性を感じたことを覚えている。
宮澤も、苦しい時期にもチームがブレずに取り組んできたことを強調する。