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J1 1か月前

「残り3試合で…」浦和レッズ、長沼洋一はサポーターに誓う。「前節ああいう負け方をし…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 石田達也 photo by Getty Images

 明治安田J1リーグの第35節が25日に各地で行われ、8位・浦和レッズと7位・FC町田ゼルビアが埼玉スタジアム2002で対戦し勝点「1」ずつを分け合った。「男ならプレイで声援を勝ち取れ」という横断幕が掲げられるなか、途中からピッチに入った長沼洋一が奮闘する姿を見せた。(取材・文:石田達也)

異様なホーム戦。長沼洋一の出番は突然…

長沼洋一 浦和レッズ
【写真:Getty Images】

 いつものホームではなかった。

 直近の7試合で1得点という極度の得点力不足に陥る浦和レッズは、前節の横浜F・マリノス戦(0-4)では前半だけで4失点。サポーターは試合途中に応援をボイコットした。

 FC町田ゼルビア戦のゴール裏スタンドには「男ならプレイで声援を勝ち取れ」という横断幕が掲示され、応援フラッグも拍手も、そして大きなコールもなく浦和の選手はピッチに立った。

 マチェイ・スコルジャ監督は「ファン・サポーターの方々の気持ちはよく分かります」と、この沈黙への理解を示し、「ファン・サポーターの方々と一体になってこそ、レッズは成功を収めることができると思います」と続けた。

 試合開始からハードなプレスをベースに、町田は浦和陣内へと侵入。迎え撃つ浦和も決定機を与えず、相手のコーナーキックやクロス、ロングスロー、フリーキックなど体を張って弾き返す。

 その中で反撃に転じる。しかしオフザボールの動きで背後を狙っていくが、前線で収まらない場面やパスが出てこない場面が散見した。

 アタッキングサードで攻略できず、中盤で激しく攻守が入れ替わり、シュートシーンも乏しい展開となった。

 そして29分、MF長沼洋一の出番は突然やってきた。

 27分に町田のコーナーキックが不発に終わると、DF石原教広がピッチに倒れて起き上がれずに担架で運ばれるアクシデントが発生。急いで準備を終えた長沼が3度手を叩きながらピッチに立つと、主戦場の左サイドバックではなく、そのまま右サイドバックに入った。

「僕のところから何か変化をさせたいと思った」

「急でしたが、でも慌てることなくいつも通りに入りました」

 ポジショニングや周りとの連係にも優れ、複数ポジションをこなせるマルチプレイヤーは、どのポジションでも結果を残すことが自身の強みと語る。

 投入直後にはGK谷晃生が蹴ったフリーキックをヘディングでクリアして見せると、ギアを一つ上げ町田のストロングポイントであるFW相馬勇紀とMF増山朝陽に向かっていく。

 右サイドハーフで出場したMF関根貴大は、長沼とコミュニケーションを密に取り、町田の強みに蓋をする。

「(長沼)洋一が入ってくる時に、外側(ウイングバック)の対応は構造上、ある程度は捨てるしかなかった。なので、ロングボールに対して洋一が出るのか、自分が出るのかをはっきりさせようと明確に伝えました」

 41分、長沼は町田のディフェンスラインからのロングボールに対し、「よーい!どん」の形で増山と並走。競り合いながらも体を当て「目の前の相手に負けないことだけ」を意識し、ボールを奪い切るなど1対1での勝負強さをアピールした。

 お互いが攻めきれず前半をスコアレスで終えると、長沼はセカンドボールの回収に意識を向けてチームにリズムをもたらそうと考えた。

「FWイサーク(・キーセ・テリン)が孤立して1対2や1対3になって、相手ボールになることが多かったので、僕のところから何か変化をさせたいと思った」

 また、「相手が来ていないのに蹴らないこと、相手が来ても1つ剥がすこと」にも注力しながら、後半はボールを落ち着かせることに集中するとプレスを回避し相手の矢印を折っていく。

「弱かったっすね」

 すると48分、MFサミュエル・グスタフソンが右サイドに展開。敵陣深くから関根がクロスを送りブロックされるが、跳ね返りを拾った長沼が右足でゴール前に再度ボールを供給する。

そこへイサークが頭で合わせたが、谷に止められた。味方をサポートする形が増えたことで、ようやくゴールへの形が見えてきた。

 そして74分には左サイドでMF渡邊凌磨とFW中島翔哉がパス交換で中央を崩すと、そのこぼれ球に反応した長沼が左足でミドルシュートを狙ったが、相手キーパーに阻まれてしまう。

 コースもスピードも申し分なく、パンチ力あるシュートだったのだが本人いわく「弱かったっすね」。谷の安定感あるキャッチングに処理されてしまう。

 その後の87分に浦和にビッグチャンスが訪れる。

 長沼がセンターライン付近でボールを引っかけてショートカウンターを発動させると、MFマテウス・サヴィオとFW小森飛絢とのコンビネーションプレーからフリーになった中島が左足でゴールを狙った。

 しかしこれも谷が右手1本でスーパーセーブ。終盤にかけてセットプレーのチャンスも増えていたが、最後まで1点が遠く0-0のまま試合終了を告げる笛が鳴った。

 90分を戦ってスコアレスに終わったが、スコルジャ監督は背番号88の働きに賛辞を送っている。

「浦和レッズというクラブは続いていく」

「無得点に終わり、勝つことはできませんでした。満足はしていませんが、アグレッシブな姿勢を見せ、ゲームコントロールしていた。守備で相手を抑えたところはポジティブだった。ヒロ(石原)が交代してからの(長沼)洋一は非常に良かったと思います」

 これで勝点53を積み8位の浦和。数字上優勝の可能性は消えているが、残留争いにも巻き込まれてはいない。

 この先の残り3試合をただの消化試合にする訳にはいかない。1つでも勝点を積み上げ順位を上げ、その勢いと共に次のシーズンに向かう。それがチームに求められるところだ。

 キャプテンの関根はチームの思いを代弁するように「シーズンは終わっていきますが、浦和レッズというクラブは続いていく。その中で、それぞれの選手が自分の価値をどう示せるかが大切になってくると思います」と言葉に力を込めた。

 長沼は「前節(横浜FM戦は)ああいう負け方をし、ホームに帰ってきてファン・サポーター、見にきてくれた人に良い試合を、勝ち試合を見せたかったです。勝ち切れなかったのが残念。残り3試合で良い試合をして勝ちたいです」と奮起を誓った。

 この状況を打開するため、埼スタを熱狂のスタジアムにするために決定機を作り確実に仕留めて勝つ。“プレイで声援を勝ち取る”、それが求められていることは間違いない。

(取材・文:石田達也)

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【了】

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