サッカー日本代表は14日、豊田スタジアムでガーナ代表と対戦し、2-0で快勝をおさめた。南野拓実は10月のブラジル代表戦に続いてキャプテンマークを巻き、この試合のファーストゴールをあげた。2戦連発弾を決めた“新リーダー”は偉大な先輩の背中を見据えつつ、W杯への地道な態度を貫いた。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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“新リーダー”と化した南野拓実
2026年FIFAワールドカップ(W杯)まで7か月。来年5月に予定される本大会登録メンバー発表前の日本代表に残された強化の場は11月と3月の4試合しかない。
しかも、アフリカ勢とは第2次森保ジャパン突入後、2023年10月のチュニジア代表戦(神戸)の1試合だけ。14日のガーナ戦(豊田)は貴重なチャンスとなったのだ。
「同じレベルの相手に対して勝ち切れていないという現状がある中で、ホームでしっかり勝つこと。なおかつ、W杯を見据えたうえで、アフリカとの対戦というのはいい準備になると思うので、しっかり勝負にこだわってプレーしたいです」
今やベテランとなった南野拓実は、そう気合を入れていた。
ご存じの通り、10月のブラジル代表戦では遠藤航の負傷離脱もあり、日本代表で初めてスタートからキャプテンマークを巻いた。
「実を言うと、誰をキャプテンにするのかというのは、なかなか着地点を見つけられなかったんです。『(堂安)律のような中堅世代の選手にするのがいいかな』という考えもありました。
でもイタリアなどでは代表キャップ数が多い人に決めているという話を聞いて、拓実というのが一番腹落ちしたということですね」
「彼は日本代表のコンセプトを体現してくれている選手」
これは森保一監督がブラジル戦後の単独取材で語ったこと。確かにその時点で71試合出場25得点という南野の実績は群を抜いていた。
「彼は日本代表のコンセプトを体現してくれている選手。前線からのハードワーク、好守の切り替えは日本が世界で勝っていくための生命線。
それをチーム全体に落とし込むために、拓実の力が必要。しかも、彼は泥臭くハードワークして結果も出す。周りの選手の見本になってくれていると思います」
大きな期待を背負った背番号8は「俺たちはまだ死んでない」というハーフタイムの言葉で仲間たちの闘志を掻き立て、後半頭に反撃ののろしを上げるゴールをゲット。0−2から3−2という歴史的大逆転劇の機運を作り上げた。
南野の存在がどれだけの勇気と希望を与えたのか分からないくらいだった。
ゆえに、遠藤がベンチスタートとなった今回のガーナ戦も、彼が継続してマークを巻くのは当然の流れだった。
「今日は特別なことは何も言っていません。『立ち上がりから押し込んでいくぞ』と話しただけ。それは試合を有利に進めるために必要だと思ったので」
本人は試合前のミーティングでの発言を明かす。同格レベルのガーナを確実に倒すために、『前から行く』という姿勢をまず鮮明にしたかったのだろう。
新リーダーが指針を示した通り、この日の日本代表は最前線の上田綺世、南野と久保建英の2シャドーは試合開始から凄まじいハイプレスを仕掛けていった。
「いやいやもう別にそれはたまたまかなと」
「相手の3バックに対して、そのまま3でハメに行こうっていう話はしてたし、前半から相手が嫌がっているのを感じていた」と本人も手ごたえをつかんだという。
アタッカー陣の献身的守備に中盤、守備陣も呼応。佐野海舟のところでガチンと体を寄せてボールを奪い切り、タテに速い攻めに持ち込む形が何度か見られた。
それがゴールという形で結実したのが、16分のシーン。相手DFが1トップに陣取ったアントワーヌ・セメニョに長いボールを出したところに3バック中央の谷口彰悟が寄せ、佐野が挟んでボールを狩り取った。
そこから堂安、谷口を経由して佐野がキープ。久保とのワンツーから一気に前線へ持ち込み、左から走り込んできた南野に迷わずラストパス。最後は右足で仕留めるに至ったのだ。
「海舟がいいスピードのパスをくれて、綺世がしっかり引き付けてくれたので、あとは決めるだけでした」と背番号8は安堵感を吐露する。
この一撃がガーナにダメージを与え、日本のギアをグッと引き上げたのは紛れもない事実。後半に堂安が1年5か月ぶりの代表ゴールを挙げ、2-0で勝ち切れたのも、先制弾の効果が非常に大きかったと言える。
彼自身はキャプテンマークを巻いて2戦連発。「いやいやもう別にそれはたまたまかなと。巻いてるからこそとは思ってない」と本人は謙遜していたが、代表通算得点数を26に伸ばし、歴代8位タイまで引き上げたのも特筆すべき点だ。
