明治安田J2リーグは残り2節を残し、水戸ホーリーホックが首位に立つ。J2に入会した200年以来、J1・J3への昇降格を経験していないこのクラブは悲願達成を目前に、足踏みをしている。これまで経験してこなかった重圧を乗り越え、クラブの歴史に新たな1ページを刻むことができるか。(取材・文:ショーン・キャロル)[1/2ページ]
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初昇格へ、水戸ホーリーホックが首位に立つ
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もしあなたが2月の時点で誰かに、水戸ホーリーホックが「シーズン残り2試合の段階で、チームがJ2の首位に立ち、3位に4ポイント差をつけている」と言ったとしたら、きっとその人はあなたを狂っていると思っただろう。
8か月前の彼らであれば現在の順位を聞いて歓喜していたに違いないものの、この茨城のチームにとって現状はすべてが順風満帆というわけではない。日曜日にホームで大宮アルディージャに0-2で敗れたことで、J1初昇格という歴史的快挙を逃す可能性もまだ残されている。
J2の上位争いは信じられないほど接戦であり、直接昇格を争うライバルにホームで2試合とも落としたことは、水戸が首位というこれまで経験したことのないプレッシャーに少し苦しみ始めていることを示唆している。
大宮戦での敗北は、10月10日にホームでジェフユナイテッド千葉に土壇場で決勝点を許した0-1の敗戦に続くもの。その結果もあり、水戸は現在2位のV・ファーレン長崎にわずか1ポイント差、3位の大宮および4位のジェフとは4ポイント上回る位置にいることとなった。
その敗戦を除けば、直近の森直樹監督率いるチームはそこまで悪い調子というわけでもなく、直近6試合で4勝を挙げている。しかし、次の試合(11月23日)で勝利すればJ1昇格を確定できる一方で、それを実現するためにはアウェイでV・ファーレン長崎を倒さなければならない。しかも、この高木琢也監督率いる長崎は4月25日以来ホームで負けていない。
失われた攻撃の輝き。その一因は…
このような象徴的な勝利でタイトルを確定させることこそが、水戸の狙いであると森監督は断言している。
「簡単なリーグではないので、そんな簡単に昇格や優勝は無理だと思っていました」と森監督は大宮戦後に語った。
「しっかりと2週間準備できますので、長崎戦に向けて準備したいと思いますし、必ず長崎に勝って昇格を決めたいと思います」
そのような形でJ1昇格を決めることができれば、まさに理想的な結末となるだろう。しかし、そのためには最近失われている攻撃の輝きを取り戻す必要がある。
守備面では依然として堅実さを見せている。大宮戦でも守備では大きな動揺を見せなかった一方で、攻撃面では試合の主導権を握ることができなかった。
その一因となっているのは、現在も膝の負傷で離脱中の渡邉新太の不在だろう。彼は9月20日のいわきFC戦で負傷して以来出場していないが、それでも13得点でチームのトップスコアラーの座にいる。
先週末の大宮戦では、粟飯原尚平と多田圭佑が前線に入った。粟飯原は8月にFC岐阜から加入して以来8試合出場も無得点であり、かつ大宮戦で最大のチャンスを逃し、多田も今季14試合出場1得点に留まっている。
試合途中からは、梅田魁人と安藤瑞季がピッチに立った。梅田は今季5試合目の出場(すべて途中出場)で無得点、安藤は4月以来の出場で、今季は1得点にとどまっている。
一貫性の欠如。水戸ホーリーホックは未知の領域に臨む
このほかにも、水戸は今季これまで多くの選手を前線で起用している。久保征一郎が4得点、奥田晃也が2得点。3得点を挙げた寺沼星文はシーズン途中に東京ヴェルディに移籍し、1得点を挙げた草野侑己もシーズン途中にレノファ山口に移籍に移籍した。今季途中に湘南ベルマーレから加入した根本凌は3試合目で負傷して無得点に終わっている。
実際、森監督がこれまでに起用した選手の総数は41人にのぼる。比較として、長崎は34人、大宮は29人、千葉は32人、徳島ヴォルティスは31人、ベガルタ仙台は29人を起用していることを考えれば、その多さは驚くべきものと言えるだろう。
この一貫性の欠如こそが、プレッシャーが高まる中でチームが噛み合わなくなっている一因かもしれない。
そしてもちろん、水戸にとって昇格争いのような高みはまったく未知の領域であることも忘れてはならない。彼らはJ2へ昇格した2000年以来、いわば「J2の中位圏」という無人地帯に取り残されてきたのだ。
これまでの最高順位は2019年(長谷部茂利監督時代)の7位。2003年にも同じ7位だったが、当時のJ2は現在の22チーム制ではなく12チーム制だった。
プレーオフ進出はすでに確定しており、J2での26シーズン目となる今季は、クラブ史上最も成功したシーズンとなることが保証されている。とはいえ、今の状況で昇格を逃すことになれば、もはや素直に喜ぶのは難しいだろう。
