鹿島アントラーズは6日、明治安田J1リーグ第38節で横浜F・マリノスと対戦する。2位・柏レイソルと勝ち点1差で迎えるこの最終節、鹿島は勝利すれば9季ぶりの優勝が決まる。短い期間の中で酸いも甘いも噛み分けたこのチームは、簡単には負けない力強さを身につけていた。(取材・文:加藤健一)[1/2ページ]
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首位に立ち迎える最終節
鬼木達監督を招聘して迎えた今季、鹿島アントラーズは厳しい船出となった。
宮崎キャンプ中に行われたファジアーノ岡山との練習試合ではミスが目立ち、相手の強度の高さに圧倒される結果となった。開幕前の恒例となったいばらきサッカーフェスティバルの水戸ホーリーホック戦も消化不良感の残る90分だった。
迎えた湘南ベルマーレとの開幕節も、良さが出せないまま90分を終えた。
当時を思い出すと、1試合を残して首位に立つ今の姿を想像するのは少し難しい。しかし、今は優勝するにふさわしいチームになっていると言える。
ただ、その道のりは限りなく険しかった。
師岡柊生、関川郁万、安西幸輝が相次いで負傷し、シーズン中の復帰は絶望的となった。さらに、2度の3連敗があり、10月の上位対決3連戦では3戦連続ドロー。首位を独走しかけていたが、柏レイソルに猛追された。
それでも、鹿島は粘り強く戦い、勝利を手繰り寄せた。
第37節の東京ヴェルディ戦は、そんな今季の鹿島を凝縮したようなゲームだった。
+3→+20。今季の戦いを如実に表す数字
「今年結構あった展開というか。自分たちがうまくいかない中でも、前半0(失点)で折り返すっていうところは、みんなで(目線を)揃えてやれていて、その中で後半1点取って勝てた。自分たちで崩れなかったことが良かったかなと思います」
三竿健斗が言うように、なかなかゲームの主導権を握れない前半というのは、今季何度も見た光景だった。
それでも勝利を手繰り寄せる強さが今の鹿島にはある。
我慢して前半を終え、ハーフタイムに、あるいは後半途中の交代カードをきっかけに加勢して勝負を決める。これが今季の鹿島の必勝パターンとなった。
我慢しながら粘り強く戦う先発陣から、交代選手たちにバトンが渡る。これが勝負を決める合図になる。
前半は23得点17失点(得失点差+6)、後半は33得点13失点(得失点差+20)。この数字が鹿島の戦い方を如実に表している。
昨季が前半が31得点15失点(得失点差+6)、後半が29得点26失点(得失点差+3)だった。特に後半の違いがよりはっきりと浮かび上がってくる。
ギアを上げるのは松村優太の仕事になった。ベンチスタートに満足することはないだろうが、5人交代制の現代サッカーにおいて、交代選手の重要度は相対的に上がっている。
ここまでリーグ戦のすべての試合に4人が出場している。フルタイム出場の植田直通と早川友基、1試合を除く36試合に先発した鈴木優磨、そして先発はわずか10試合の松村優太である。
終盤戦の直近7試合で先発したのはわずか1試合。ただ、交代で出た6試合で2得点3アシストを記録している。
松村優太だけではない。試合を決めるジョーカーの存在
7月20日の柏レイソル戦で松村が土壇場に逆転ゴールを決め、鹿島は連敗を3で止めた。続くFC東京戦では81分に田川亨介が先制ゴールを決めてこれが決勝点に。
アビスパ福岡戦では84分に舩橋佑が同点ゴール。アルビレックス新潟戦ではレオ・セアラが87分に勝ち越しゴールを決めた。
4試合続けて生まれた試合終盤の勝敗を左右するゴールは、いずれも交代選手が決めたものだった。
ベンチスタートとなる選手の活躍に、三竿健斗は目を細める。
「日頃から頑張っているのを仲間は見ているので、そういう選手が結果を出してくれるのは本当に自分のことのように嬉しい」
自身も怪我で出遅れ、前半戦はベンチスタートとなることも多かった。相方の知念も夏場までは中盤の強度を高める交代カードとしての起用も少なくなかった。
シーズンを通して不動の地位を築いた選手は鈴木や植田、早川、レオ・セアラくらいだろう。他の選手たちは怪我があったり、競争の中でベンチスタートとなる時期を経験している。
例え先発で出られなかったとしても、その悔しさを胸にしまって、ピッチではチームのために力を尽くす。シンプルではあるが、これが今の鹿島の強さだと三竿は言う。



