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J2 14時間前

古巣の水戸がJ1昇格。徳島ヴォルティス、山田奈央は何を思うのか。「『残っていればよかった』みたいな話をされたけど…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images
山田奈央 徳島ヴォルティス
徳島ヴォルティスに所属する山田奈央【写真:Getty Images】



 明治安田J1昇格プレーオフ2025・決勝が13日に行われ、徳島ヴォルティスはジェフユナイテッド千葉とアウェイで対戦。0-1で敗れ、J1昇格をあと一歩のところで逃した。DF山田奈央は、敵地であふれ出る涙を抑えることができなかった。昨季まで過ごした古巣・水戸ホーリーホックがJ1昇格を果たした事実も、彼にとっては悔しさの残る結果になったはずだが、いま抱く思いとは。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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徳島ヴォルティスの変化「失点が重なっていたので…」

徳島ヴォルティス サポーター
アウェイまで駆けつけた徳島ヴォルティスのサポーター【写真:Getty Images】

 水戸ホーリーホック、V・ファーレン長崎に続く3つ目のJ1切符をかけ、12月13日に行われたJ1昇格プレーオフ決勝。

 J2リーグ3位・ジェフユナイテッド千葉の本拠地・フクダ電子アリーナに乗り込んだのが、4位・徳島ヴォルティスだ。

 彼らは7日の準決勝・ジュビロ磐田戦を1−1で終え、辛くも第一関門を突破。大舞台への挑戦権を得たのだ。

 増田功作監督は直近3試合で右センターバック(CB)を務めていた井上聖也に代え、東京ヴェルディ時代にJ1昇格プレーオフで勝ち上がった経験のある山越康平を右CBに抜擢した。

「ここ数試合、失点が重なっていたので、対人能力や組織への献身性を含めて起用した」と説明する。



 指揮官としては、今季J2最少失点の「24」でフィニッシュした“鉄壁の守り”をまず取り戻したうえで、トニー・アンデルソン、ルーカス・バルセロス、渡大生の前線トライアングルでゴールをこじ開け、2021年以来の最高峰リーグ復帰を射止めようと目論んだのだろう。

 こうした中、最終ライン中央に陣取り、統率役を担ったのが、23歳の若きDF山田奈央だ。

 2002年生まれの成長株は浦和レッズユースから2021年に水戸ホーリーホック入り。そこで4年間、実績を積み重ね、今季から徳島に加入した。

 増田監督から絶大な信頼を寄せられ、3バック陣では最多となる35試合出場とフル稼働しているのだ。

「それが大きかった」痛恨の先制点献上

ジェフユナイテッド市原・千葉のカルリーニョス・ジュニオ
先制点をあげたカルリーニョス・ジュニオ【写真:Getty Images】

「自分は本当にJ1に行きたい思いが物凄く強い」と山田本人も語気を強めていたが、悲願まであと一歩と迫ったのは確か。千葉に勝ち切って何とか新たな扉を開きたいところだった。

 前半は両者ともに手堅い試合運びを披露。千葉の方が徳島のギャップを突いて何度かチャンスを作ったが、徳島の守備組織は崩れなかった。

 スコアレスのまま迎えた後半。徳島は一気に攻撃のギアを上げ、敵陣に攻め込んでいく。

 最大の決定機が訪れたのは59分。左ウイングバックの高木友也のスルーパスがバルセロスに通り、中央を走ってきたアンデルソンにボールが渡ると、背番号9は右足を一閃する。

 次の瞬間、シュートはクロスバーを直撃。彼らは喉から手が出るほどほしかった1点を手にすることができなかった。



 チャンスの後にピンチあり。徳島は最大級の警戒を払わなければならなかったのだが、69分に均衡を破られてしまう。発端は相手左サイドのスローインだった。

 これを千葉が素早くサイドチェンジし、右SB高橋壱晟がグイグイと前進。思い切って上げたアーリークロスにファーから飛び込んできたのがカルリーニョス・ジュニオ。彼のドンピシャヘッドがネットを揺らし、徳島は絶対に許してはいけない先制点を献上してしまったのだ。

「スローインのところで簡単にサイドチェンジされてしまうと高橋選手のクロスの質が高いのは分かっていた。そこで時間ができてしまったと思います。

 とはいえ、中にはカルリーニョス選手しかいなかったので、対応できる部分はあったと感じますけど、ボールホルダーにもっと寄せるというのを1年間やってきたのに一瞬でやられてしまった。それが大きかったと思います」

 そう言って、背番号3をつける守備リーダーは苦渋の表情を浮かべていた。

敵地で号泣「こんなにいいメンバーに恵まれるシーズンは…」

山田奈央 昇格プレーオフ
ジェフ千葉の日高大と競り合う山田奈央【写真:Getty Images】

 こうなると、徳島は2点を取って逆転するしかない。

 増田監督もベンチのキャプテン・岩尾憲ら持ち駒を次々と投入。最終盤には山越を最前線に上げ、パワープレーにも打って出たが、千葉の守備は崩れない。

 彼らは準決勝・RB大宮アルディージャ戦で3失点を喫したのを踏まえ、徹底的に横やタテのボールへの対策を講じてきたのだろう。

 その強固なブロックに跳ね返され、得点を取れないまま、無情のタイムアップの笛が鳴り響く。

 17年ぶりのJ1復帰の歓喜に包まれるフクアリの中で、徳島の選手たちは崩れ落ちる。山田も人目をはばからず号泣した。



 背番号3をつける男は、辛い胸の内をこう吐露する。

「本当に今年1年やってきて、こんなにいいメンバーに恵まれるシーズンはそうそうない。ベンチに入れないメンバーもチームのために自分を押し殺して毎日練習に励んでいる。

 だからこそ、試合に出ている自分は責任を果たさなければいけなかった。それと僕自身、J1行きたいっていう思いが本当に強くて、この試合に人生をかけて挑みました。

 でも届かなかった。何が原因かはまだフルで試合を見ていないから分からないですけど、足りないところがあるんだなと感じました」

 彼にしてみれば、4年間過ごした水戸が今季J2優勝・J1初昇格を決めた悔しさもあるはずだ。

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