
新シーズンに向けて始動した東京ヴェルディの森田晃樹【写真:藤江直人】
東京ヴェルディは6日、新シーズンに向けて始動した。今オフ、去就に大きな注目が集まった森田晃樹は、複数の要素が交錯するなかでヴェルディ残留という決断を下した。慣れ親しんだ緑のユニフォーム、そして重みある10番。新たなシーズンへ歩み出す司令塔が語る、残留に込めた真意とは。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
——————————
「すごく短い時間で決めました」
東京ヴェルディへの残留を決意した森田晃樹【写真:藤江直人】
愛着深いクラブへ残留するのか。それとも新天地へ移籍するのか。
シーズンが終わるたびに去就を巡る決断に頭を悩ませてきた森田晃樹は、一転して今オフは「すごく短い時間で決めました」と笑顔で振り返る。
「シーズンが終わってから本当に2週間から3週間くらいで。12月の中旬には決めていました」
ガンバ大阪から正式なオファーが届き、東京ヴェルディが全力で慰留していると報じられた矢先の昨年12月22日。森田の残留を伝えるヴェルディのクラブ公式Xへの投稿がファン・サポーターを大喜びさせた。
ヴェルディがJ2を戦っていた時代からの恒例と言ってもいいオフの争奪戦。今オフは二者択一だったのか、という問いに「どうですかね」を二度繰り返した森田は、さらにこんな言葉を紡いでいる。
「でも(選択肢は)少なかったとは言っておきますね。それでも、毎年同じくらい悩んでいますけど難しいですよ。どの選択が正解なのか、というのがわからないなかでの決断になるので」
たとえばガンバはこのオフに、3年間指揮を執ってきたスペイン出身のダニエル・ポヤトス監督が退任。ドイツ出身のイェンス・ウィッシング監督が就任するなかで、サッカーが大きく変わる可能性がある。
あくまでも一般論として、体制が変わるチームを外から見る選手の思いを森田はこう語った。
残留の決め手は「それはやはり…」

森田晃樹が残留を決意する要因に挙げた東京ヴェルディの城福浩監督【写真:編集部】
「監督が変わるとなれば、選手としては次のイメージがわかないと思いますけど、だからと言ってそこばかりを気にしているわけでもない。それでも試合に出る、という強い気持ちがあるのなら僕はいいと思う」
どのチームのユニフォームに袖を通したとしても、もちろんピッチに立てる自信はある。そのなかで森田がヴェルディとの契約を更新し、プロになって8年目となる新シーズンへ臨む決め手は何だったのか。
答えを探していけばJ2を戦っていた2022年6月に就任し、翌2023シーズンには指揮官とキャプテンとして16年ぶりのJ1昇格をゲット。2シーズン連続のJ1残留を果たした城福浩監督の存在に行き着く。
「まだ確定していたわけじゃないですけど、それでも城福さんが(新シーズンも)監督を続けるんじゃないか、みたいな話がありました。それはやはり僕にとって、ひとつの判断材料になりました」
森田の残留が発表された同時刻には、実は城福監督の契約更新も発表されている。偶然の一致なのか。森田は「そのほうが盛り上がると、クラブも思ったんじゃないですか」と笑いながらこう続けた。
「やはり(城福監督のもとで)自分も成長できると思っているので、そこは大事な要素でした」
もっとも、5シーズン目の指揮を取る城福監督が「大丈夫なのか」と心配した一件があった。
木村勇大が名古屋グランパスへ移籍した昨年8月以来、空いていた10番。黎明期のヴェルディ川崎時代にはラモス瑠偉が象徴とした伝統の背番号を、森田に継がせたいと江尻篤彦強化部長が切り出した。
10番の打診に森田晃樹が3日間も返答しなかったわけ
今シーズンから「10番」を背負う東京ヴェルディの森田晃樹【写真:藤江直人】
「直近でいうとラモスさんに匹敵するような選手じゃないと、ヴェルディの10番は難しいと思っていて。下部組織から上がってきた選手がこの背番号をつける。そのくらいヴェルディの10番は重い、と」
小学校3年生だった2009年からヴェルディひと筋の森田を、後継者に推した理由を明かした江尻強化部長によれば木村も、2024シーズンの見木友哉(現・アビスパ福岡)も望んで10番を背負ったという。
しかし、2022シーズンの新井瑞希(現・水戸ホーリーホック)を含めて、期待の日本人選手が10番を背負ったその年に他チームへ移籍している。悪しきジンクスに城福監督も心配を寄せていた。
「それでも僕のなかでは森田しかいなかった。チャレンジングな百年構想リーグを、彼を中心にしてヴェルディがともに前へ進むんだ、という形をみなさんへ発信できる最高のチャンスだと思ったので」
しかし、江尻部長が期待を込めて託したのに、ちょっと迷った様子だった森田から返信が来ない。
数えて3日目。痺れを切らした江尻強化部長が「どうするんだ」と電話を入れた。
受話器の向こう側から返ってきた「付けろ、と言うのならば付けます」なる森田の言葉を思い出しながら同強化部長が苦笑する。
「(5年間背負った)7番にも未練があったようで、彼が『7番は誰になりますか』と言うから『松橋優安に付けさせる』と。優安も『森田くんが言うのなら僕が7番を付けたい』と望んだのでうまく回りました」
しかし、背番号の変更には裏話があった。
よみうりランド内で6日に行われた新体制発表会見。10番が刻まれた百年構想リーグ用の新ユニフォームで登壇した森田が、申し訳なさそうに打ち明けた。
「思い悩んでいたわけではなくて……忘れていました。江尻さん、すみません!」