
藤枝MYFCでプレーする菊井悠介【写真:Getty Images】
J2・J3百年構想リーグの第2節が14日に各地で行われ、藤枝MYFCはホームで松本山雅FCと対戦した。元日本代表DF槙野智章率いるチームはこの試合に2-0で勝利し、今シーズン初白星を獲得。キーマンとなったのは、古巣対決となった菊井悠介だ。今季から藤枝でプレーする彼は、大きな覚悟をもって移籍を決断した。親戚にあたる守田英正にも伝えていた大きな夢を叶えるために。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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古巣との対戦でキャプテンを任された菊井悠介

記者会見に応じる槙野智章監督【写真:Getty Images】
2022年末の現役引退から丸3年の元日本代表・槙野智章監督を招聘し、明治安田J2・J3百年構想リーグ・WEST-Bの戦いに挑んでいるJ2・藤枝MYFC。
2月8日の開幕節はJ3・FC岐阜とホーム・藤枝総合運動公園サッカー場で激突。勝利への大きな期待が高まったが、ふたを開けてみると0−2とまさかの敗戦。いきなり壁にぶつかることになってしまった。
そこで新指揮官は工夫を凝らしたミーティングなどで徹底修正を図ると同時に、スタメン5人を入れ替えて、14日のJ3・松本山雅FC戦を迎えた。
この重要な一戦でキャプテンを託されたのが、今季新加入の10番・菊井悠介。2022年に流通経済大学から松本山雅入りし、昨季まで10番・キャプテンの大役を担っていた男にとって今回は初の古巣対決だ。
槙野監督はキャプテン・中川創をベンチスタートにしたこともあって、藤枝の新10番に目に見えるリーダー役をあえて任せたのだという。
「古巣に挑む時というのは、いろんなプレッシャーやストレス、葛藤がある中、戦わなきゃいけない。今回、試合前に選手全員に伝えたのは『菊井をサポートしてくれ』『助けてやってくれ』ということ。彼自身も非常にメンタル的に強い選手ですし、期待して送り出しました」と指揮官は胸の内を明かした。
菊井本人も意図を前向きに受け止めた。
いつも通りにいかないプレー「やっぱり相手が山雅というのが…」

槙野智章監督と抱擁を交わす菊井悠介【写真:Getty Images】
「粋な計らいというか、あの人らしいなと。正直、嬉しかった。試合前はすごく難しいメンタリティだったのは確か。そこでキャプテンマークを巻くことで『自分は藤枝の一員なんだ。もうやるしかない』と思えた。強い気持ちで試合に入れました」
4年間、慣れ親しんだ山雅サポーターが大挙してゴール裏に陣取る中、試合に入った菊井。今季から名将・石崎信弘監督体制に移行したチームは、彼が師事した名波浩、霜田正浩、早川知伸時代のスタイルとは異なり、守備強度とタテへの推進力を押し出すようになっていた。
自身が在籍していた時代と比較しながら、菊井は複雑な胸中を吐露する。
「松本を離れてそんなに時間は経っていないけど、自分がやっていた時とは逆というか、やろうとしていることは全然違いますし、この百年構想リーグの中で一番やりづらい相手だと感じていました。
相手は奪ってショートカウンターというところですし、自分たちはショートパスで外していくスタイル。紙一重の勝負になるなと考えていました。
そういう中、僕も平常心でやろうと思ったんですけど、前半は珍しくボールが足につかなかったり、相手が見えなかったりした。やっぱり相手が山雅というのが大きかったですね」
藤枝もやや攻めあぐねた印象で、前半はシュートは5本のみ。スコアレスでハーフタイムを迎えることになり、後半に勝負をかけるしかなかった。
「PKはみんなが蹴らせてくれる雰囲気はあった」

後半は大いに攻め立てた藤枝MYFC【写真:Getty Images】
槙野監督が52分にオーバーアクションで判定に異議を申し立て、イエローカードを食らうと、チームの闘争心が一気にヒートアップ。左ウイングバック(WB)・中村優斗が中心となって仕掛け、藤枝の攻撃が大いに活性化された。
そして58分、彼が左の大外で倒されてFKを得る。これを満を持して蹴ったのが菊井だった。
「(中川)創と話して、GKの前に入っててほしいと。そこで触れれば触ってくれてもいいし、触らずにそのままゴールに入ってもいいと。そういう感じで、自分の引き出しの中からあのボールを蹴ることで、事故が起きるかもしれないなと思って、選びました」
高度な技術を持つ背番号10のキックはそのままゴールに突き刺さり、藤枝は待望の先制点をゲット。一気に勢いづく。
そこから一方的に攻め込むようになり、74分には再び中村優斗のドリブル突破からPKをゲット。これをまたも菊井が沈めて、2−0とリードを広げることに成功する。
「PKはみんなが蹴らせてくれる雰囲気はあったんで、思い切り蹴ろうと。松本でもずっと蹴っていましたし、自信はあるんで」と背番号10は目を輝かせた。
こういう時に確実に仕留めてくるのがこの男。大舞台の強さは親戚に当たる守田英正に通じるところかもしれない。