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「2試合で4点くらいは取れた」ベガルタ仙台、古屋歩夢は決して満足しない。「取れるだけのゴール」を求めて追う理想のストライカー像とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images
ベガルタ仙台FW古屋歩夢

ベガルタ仙台の古屋歩夢【写真:Getty Images】



 J2・J3百年構想リーグの第2節が14日に行われ、ベガルタ仙台は敵地・ニッパツ三ツ沢球技場で横浜FCを1-0で下した。デビュー戦の衝撃的な一撃で、一躍脚光を浴びた古屋歩夢。しかし本人が見つめているのは称賛ではなく、決め切れなかった数々のチャンスだ。開幕から2試合連続で先発を任された18歳は、いまどんな思いを胸にピッチへ立っているのか。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
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「いろいろな人に褒められましたけど…」

ベガルタ仙台、古屋歩夢

開幕戦でゴールを決めたベガルタ仙台の古屋歩夢【写真:Getty Images】

 周囲から続々と寄せられてくる賛辞の声に、実はギャップを募らせていた。

 秋春制へのシーズン移行に伴う特別大会、明治安田J2・J3百年構想リーグが開幕してすぐに、ベガルタ仙台ユースからトップチームへ昇格したばかりの18歳のルーキー、古屋歩夢の名前が瞬く間に知れわたった。

「いろいろな人に褒められましたけど、自分のなかではもう切り替えているので」

 古屋自身は過去の話だと素っ気ない。それでも栃木シティのホーム、CITY FOOTBALL STATIONに乗り込んだ7日の地域リーグラウンドEAST-A開幕戦で決めたゴールはあまりにも衝撃的だった。



 後方からのロングパスを、J1での経験が豊富なマテイ・ヨニッチと激しく競り合い、腕を巧みに使ってスペースを作りながら右足甲で止める。しかし、敵陣左サイドで決めた神トラップは序章に過ぎなかった。

 相手キーパー、相澤ピーターコアミが前へ出ているのを瞬時に確認した古屋は、右足のインサイドによるループシュートを選択。ボールは美しい弧を描きながら、約25m先の無人のゴールへ吸い込まれた。

 仙台大学附属明成高校の卒業を目前に控えた現役高校生Jリーガーが、2トップの一角で先発に抜擢されたデビュー戦でゴールを、それも極上のゴラッソで決める。必然的にネット上は騒然となった。

 しかし、敵地・ニッパツ三ツ沢球技場に乗り込んだ14日の横浜FCとの第2節でも先発をゲット。この試合では無得点に終わった古屋は、胸中に募らせているギャップの意味をこう説明した。

現状にまったく満足していないワケ

ベガルタ仙台、古屋歩夢
2試合連続スタメン出場を果たしたベガルタ仙台の古屋歩夢【写真:Getty Images】

「2試合で1ゴールという数字は、端から見れば『点を取っているよね』となると思うんですけど、自分のなかではまったく満足していなくて。2試合で4点くらいは取れた、と思っているので」

 横浜FC戦で最初のシュートを放ったのも古屋だった。開始わずか2分。右サイドから中央へあげられたクロスを、2トップを組む岩渕弘人が自陣へ戻りながらフリックしてボールを落とした直後だった。

 ファジアーノ岡山から新加入した28歳と、瞬時に視線を交わしていたのだろう。

 ボールが来るのが「わかっていました」と明かした古屋はワンタッチから、振り向きざまに利き足の右足を振り抜いた。

「自分のなかで『シュートを打つ』と決めていたので、決められなかったのが一番悔しかったですね」



 ゴール正面、約20mの距離から、意図的に力を抜いてコントロールを重視した一撃はクロスバーのわずか上を通過した。43分には後方からのパスに走り込みながら、今度は左足をダイレクトで合わせた。

 栃木シティ戦の4本に続いて2本のシュートを放った古屋は、シュート以外のプレーでも魅せた。

 まずは34分。右ウイングバックの五十嵐聖己のパスに反応した古屋は、伊藤槙人との競り合いで巧みに身体を入れ替えながらポケットを侵略。そのまま左足でクロスを放ってコーナーキックを獲得した。

 圧巻は50分。敵陣の中央でこぼれ球に反応すると、横浜FCのキャプテン、細井響との肉弾戦からこのときも入れ替わって前へ。食い止めようとした細井はファウルを取られ、イエローカードを提示された。

 身長176cm・体重79kgのストライカーは「身体が強いというよりも……」とこう続けた。

「先輩選手から学んでいるので…」

ベガルタ仙台、森山佳郎監督
ベガルタ仙台の森山佳郎監督【写真:Getty Images】

「体の使い方を普段、先輩選手から学んでいるので、そういうところが出たのかなと思います」

 チームの4点目を決めた開幕戦の59分に続いて、横浜FC戦では72分にベンチへ下がった。試合は自身と交代した小林心のパスを宮崎鴻が決めて先制した仙台が、そのまま逃げ切って開幕連勝を飾った。

 ストライカーの本音にフォア・ザ・チームの精神をまじえながら、古屋はこんな言葉を残している。

「(自分の無得点は)悔しくもあり、でもチームが勝つのが一番なので。やはり勝ててよかったです」

 エース格の宮崎が右太もも裏を痛めて出遅れていた状況で、森山佳郎監督はキャンプで好調だった古屋を2戦連続で先発に指名。威風堂々としたプレーぶりを、横浜FC戦後にうれしそうに振り返った。



「本人に『弱気だったら代えるぞ』と言う必要がないくらいに強気でしたね。何よりもシュートまでもっていける、というところが彼の魅力だし、新人とは思えないメンタリティーをもっていると思います」

 さらに及第点を与えたい気持ちをグッとこらえながら、今後に関しても次のように言及している。

「特に褒めなくても『自分はできる』と思うというか、すぐに調子に乗ってしまうので、緊張感をもたせながらですね。若い選手は満足した瞬間に落ちていくので、そこはちょっと締めながら、はい」

 仙台のクラブ公式ホームページには、選手ごとにQ&Aが掲載されている。そのなかで古屋の紹介欄をのぞいてみると、「最近の悩みは何ですか?」の問いに「頭が悪い」と綴っている。どういう意味なのか。

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