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J1 4時間前

ここまでやれるのか。大森博は「能力が高いから全部を守れてしまう」。ファジアーノ岡山新加入CBのルーツは中学時代に【コラム】

シリーズ:コラム text by 難波拓未 photo by Getty Images

ファジアーノ岡山 大森博

ファジアーノ岡山の大森博【写真:Getty Images】



 ファジアーノ岡山は2月14日、明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンド第2節でサンフレッチェ広島と対戦し、1-1で突入したPK戦を5-4で落とした。これで開幕戦に続き、2試合連続でPK戦での敗戦となった岡山だが、明るい材料もある。J3でキャリアを築いてきた23歳のDF大森博の存在だ。空中戦での強さと足元の技術を活かし、圧倒的なパフォーマンスをみせた。(取材・文:難波拓未)[1/2ページ]
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試合には敗れても、ファジアーノ岡山にあった大きな収穫

 カテゴリーの違いは関係ない。深めてきた自信が、確信に変わった。

 中国ダービーと銘打たれた一戦は、アウェイの岡山が10分に先制するも、前半終了間際に同点に追いつかれ、71分には大学2年生で特別指定選手のMF小倉幸成が2度目の警告を受けて退場してしまう。

 10人での戦いを強いられた中、全員で粘り強く守り切り、PK戦での勝点2獲得を狙った。だが、2試合連続で勝点1の獲得に留まった。

 “一度きり”の特別大会での初勝利は次節以降に持ち越しとなったが、チームには大きな収穫があった。

 一つは、退場者を出した後に広島の猛攻を耐え切ったこと。もう一つは、開幕戦に続き3バックの右でフル出場したDF大森博が、1人のDFとして出色のパフォーマンスを披露したことだ。しかも、MF江坂任も「調子が良くて実力のある」と形容する広島を相手に、である。



 J2の徳島ヴォルティスから今季に完全移籍で加入したDFは、これまでJ3で研鑽を積んできた。プロ2年目の2022年7月に徳島から福島ユナイテッドFCに育成型期限付き移籍で加わり、J3でリーグ戦デビュー。

 その後、福島で2年半コンスタントにピッチに立ち、昨季は栃木SCで33試合に先発出場し、主力としてJ2昇格プレーオフ争いを戦った。

 そして、今季はJ2でのプレー経験がないまま、一段飛ばしのステップアップで国内トップリーグに初挑戦している。

 しかし、観る者にそれを忘れさせるくらいの能力の高さを発揮中だ。初めてのJ1であっても、できることが多いのである。

188cm・82kgの恵まれた体格だけでない大森博のポテンシャル

栃木SC 大森博

栃木SC時代の大森博【写真:Getty Images】

 まずは、サイズを活かした空中戦の強さ。岡山のハイプレスを回避するために蹴られてきたボールを跳ね返し、簡単には起点を作らせない。

 セットプレー時も189cmの韓国代表DFキム・ジュソンに競り勝つ。跳躍力があり、最高到達点が高いことに加え、滞空時間の長いヘディングでのクリアには飛距離がある。

 大きく弾くことができれば、自陣ゴールからボールを遠ざけることができるし、その間にチームとして守備ブロックを整え直すこともできる。屈強な広島の選手を相手に、引けを取らないどころか、圧倒的とも言える出来だった。

 188cm・82kgの体躯は、地上戦のデュエルにも活かされている。4分、FW鈴木章斗が後方からのロングボールを受けようと少し下がったところに、密着マークで付いていく。ボールが手前でバウンドして、鈴木がトラップする直前に、身体を当ててキープさせない。

 こぼれ球をMF松本昌也が回収し、縦パスをFW河野孝汰が収め、右サイドを抜け出したFWルカオのクロスを江坂が合わせるというチャンスが生まれた。人に対しての強くて激しいアプローチで相手の攻撃を潰し、岡山の代名詞とも言える縦に速いカウンターに繋げた。

 大柄ではあるが、機動力もある。ベースポジションから前後左右に飛び出す決断が早く、移動スピードも速い。



 16分にはボランチと3バックの間に瞬間的に下がって縦パスを受けた鈴木章からのスルーパスに、FWジャーメイン良が斜めに抜け出してきた。

 DF鈴木喜丈がジャーメインを追いかける中、鈴木章の下がる動きに釣り出されかけていた大森が素早く戻り、内側に絞って挟み込み、ボールを奪う。その後、すぐに身体を投げ出してクリアし、こぼれ球を狙っていたFW小原基樹の寄せを回避した。

 45+1分にはジュソンから小原の縦パスにタイトに食らいつく。一度は小原のトラップスルーでかわされるも、そのボールを収めようとした鈴木章にも厳しくぶつかり、回り込むようにして伸ばした足でボールを突く。相手の身体に当てて、マイボールのスローインにすると、目の前で見ていた木山隆之監督からは拍手が送られた。

 試合を通してドリブラーの小原とマッチアップを繰り返した。前半終盤に股抜きでかわされ、警告を受けた。

 それでも、52分には完璧な対応を披露する。

立田悠悟に「能力が高いから全部を自分で守れてしまう」と言わしめる背番号6の手応え

ファジアーノ岡山 大森博

サンフレッチェ広島戦で鮮烈な印象を残したファジアーノ岡山の大森博【写真:Getty Images】

 広島のカウンターが発動し、小原が広大なスペースをスピードに乗って突き進んできた。ハーフウェイライン付近で1対1に晒されたが、外に誘導しながら細かなステップで間合いを調整し、内側に切れ込んでくるドリブルを読み切り、左足でタックルを、その直後に素早く身体を入れる。

 最後は小原のファウルを誘い、カウンターを食い止めるどころか、高い位置でのマイボールにしてみせた。試合の中で守備対応をアジャストさせていったことを感じるシーンだった。

 DF立田悠悟に「能力が高いから全部を自分で守れてしまう」と言わしめる背番号6は、「チームとしても、(守備で)前節よりも前に強く行けていたし、ラインコントロールも(立田)悠悟くんの声を中心にしっかりとコンパクトに上げ下げできていた。守備のやり方やコミュニケーションは間違っていなかったと思います」と試合後に手応えを口にした。

 迎撃能力の高さは、木山監督が試合後に評価した「10人で追加点を与えなかったこと」にも貢献していた。守備対応で実力を示しているだけでなく、攻撃面でも違いを生み出そうとしているところにスケールの大きさが垣間見える。



 アビスパ福岡との開幕戦では、両チームがキックオフ直後にロングボールを蹴り合う中で、ボールを足元で収めて、目の前の相手をかわしてから縦パスを差し込むことを最初にトライした。

 今節も自陣では相手のプレスをいなしてから中央に楔のパスを出したり、相手陣内では足裏でボールを引いて、右斜めに押し出すドリブルで突破を狙ったりと、簡単にロングボールを蹴るのではなく、攻撃の出発点としての意識の高さも示してみせた。

 プロ内定を勝ち取った修徳高校では大型ボランチとしてプレーしており、足元の技術には自信がある。

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