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J3 4時間前

「正直、辞めようかと…」角田駿がそれでも残った理由。レイラック滋賀FCと歩んだ8年の軌跡「本当に1ミリも考えられないような光景」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images
レイラック滋賀FC、角田駿

レイラック滋賀FCの角田駿【写真:Getty Images】



 明治安田J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドWEST-B第5節が8日に行われ、レイラック滋賀FCはロアッソ熊本に1-0で勝利した。滋賀県初のJクラブとなった滋賀で8年目を迎えた角田駿は、ホーム開幕戦のピッチで胸が熱くなった。観客数200人台の時代からチームを知る最古参は、滋賀サッカー史の節目で何を思ったのか。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
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「僕からすれば本当に奇跡」

レイラック滋賀FC、角田駿

レイラック滋賀FCの角田駿【写真:Getty Images】

 クラブの、そして滋賀県サッカー界の歴史に語り継がれていく瞬間にピッチの上で立ち会えた。

 滋賀県民が長く待ち焦がれてきた初めてのJクラブになったレイラック滋賀FCでプレーして8年目。29歳にして最古参選手でもある角田駿の脳裏を駆け巡っていたのは「奇跡」の二文字だった。

「この場所でこうなっているのが、僕からすれば本当に奇跡だと思っているので。そもそも僕がこのチームに来て8年目を迎えているなかで、ここまでになるとは思ってもいなかったのですごく感慨深いですね」

 彦根市の平和堂HATOスタジアムにロアッソ熊本を迎えた、8日の明治安田J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドWEST-Bグループの一戦は、開幕から5節目にしてようやく訪れたホーム開幕戦だった。



「滋賀県にとって初めてのJクラブのホーム開幕戦、という大事な試合で勝つのがどれだけ影響力を与えるのか。そこを僕たちも本当にわかっていたので、しっかりと勝てたのはすごくよかったと思う」

 Bグループの10チームで2位の10得点をあげていた熊本を相手に、労を惜しまないハードワークと体を張った守備でクリーンシートを達成。59分に西山大雅が決めた千金の一発を守り抜いた。

 3バックの右センターバック(CB)として、2試合ぶり3度目の出場をゲット。最後までピッチに立ち、敵地に乗り込んだギラヴァンツ北九州との前節に続く連勝に貢献した角田が声を弾ませた。

「熊本さんの攻撃力に対してゼロで抑えられた、というのは今後の試合においても僕たちの自信になる。負けない試合を続けていくためにも、これからもクリーンシートをテーマに掲げて戦っていきたい」

「本当に1ミリも考えられないような光景」

レイラック滋賀FC

レイラック滋賀FCのサポーター【写真:Getty Images】

 群馬県で生まれ育ち、桐生第一高校から北陸大学をへてクラブ名称がMIOびわこ滋賀だった2019シーズンに加入。鈴鹿アンリミテッド(現・アトレチコ鈴鹿クラブ)との日本フットボールリーグ(JFL)開幕戦で先発に名を連ねたが、東近江市の布引グリーンスタジアムに集まった観客は621人だった。

 同シーズンには公式入場者数が206人だった試合も経験している角田が苦笑しながら振り返る。



「7年前の僕からすれば、本当に1ミリも考えられないような光景でした。ホームでもゴール裏が10人くらいだった試合もあっただけに、入場してスタンドを見たときにはグッとくるものがありました」

 2019シーズンのチームメイトは、今シーズンは一人も残っていない。MIO時代を知るフィールドプレイヤーも26歳の秋山駿だけとなり、その秋山も熊本戦ではベンチ入りを果たせなかった。

 そのなかで角田は「僕を拾ってくれたチームなので」と、いまも滋賀へ恩返しの思いを抱き続ける。夏場に左足の第5中足骨を骨折し、交渉中だったJクラブ入りが幻と化した大学4年次に話はさかのぼる。

「いまにつながる縁だったのかな、と」

レイラック滋賀FC、角田駿
レイラック滋賀FCの角田駿【写真:Getty Images】

「行くところがなくなってしまった状況で、さらに3、4カ月もの間、サッカーができませんでした。そして怪我が明けた最初の週にMIOのセレクションがあって、そこで拾ってもらった、という感じでした」

 しかし、JFLでは苦戦が続いた。2022シーズンには16チーム中で最下位になりながら、優勝した奈良クラブ、2位のFC大阪がJ3へ参入したなかで、レギュレーションで地域リーグへの降格を免れていた。

「あのシーズンは前年まで主軸だった選手たちが抜けた影響ですごくしんどかった。チームの雰囲気はよかったのに、試合になると勝てない。ただ、そこで残留できたのが、いまにつながる縁だったのかな、と」



 危機感がピークに達したチームは2022シーズンのオフに経営体制を刷新。クラブスポンサーだった「麗ビューティー皮フ科クリニック」が筆頭株主となり、名称も「レイラック滋賀FC」へと変わった。

 積極的な補強も行った滋賀は翌2023シーズンに快進撃を演じ、2位で11月26日の最終節を迎えた。敵地でヴィアティン三重に勝てば、北九州とのJ3・JFL入れ替え戦に出場できる状況を手繰り寄せた。

 しかも滋賀は15分までに2点を先行する。2点目を決めたのは角田だった。しかし、1点差で迎えた85分にPKで追いつかれ、2-2で引き分けて3位へ転落した。PKを与えた角田は自分自身を責め続けた。

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