昌平高から世代屈指のアタッカーが川崎フロンターレに加入した。恥骨結合炎によりシーズン始動から別メニューが続いていたが、4月12日の鹿島アントラーズ戦でJリーグデビュー。前途洋々のポテンシャルを秘める18歳は、プロ2試合目にして壁にぶつかっていた。(取材・文:江藤高志)[1/2ページ]
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「焦っちゃった」デビュー2戦目でぶつかった壁
デビュー戦の鹿島アントラーズ戦で、ある程度の爪痕を残していただけに、少し物足りないパフォーマンスだった。
川崎フロンターレの高卒ルーキー、長璃喜の話だ。前節の鹿島戦でデビューを果たした長は続くアウェイの横浜F・マリノス戦でも途中出場。1-1で迎えた77分にピッチに立っている。川崎サポーターからの期待の視線を集める中、長はファーストプレーでミスしてしまう。
「ファーストプレーでトラップミスして、入りが悪くて。なんか2、3回チャンスあったんですけど、チャンスを生かしきれなかったです」
そう話す長は「ファーストプレーであんまうまくいかなくて、なんか焦っちゃったっていうのがあります」と肩を落とした。
もっとできるはずの長を知っているだけに、らしくないプレーが続いたとは思っていたが、それはどうやらファーストプレーでのミスが尾を引いていたということらしい。それくらいに18歳のメンタルは繊細だということだろう。
その長はパスミスという形で決勝点に関わっている。1-1で迎えた後半アディショナルタイムの98分。山原怜音からのパスを引き受けた長がカウンターに打って出た場面だ。
ミスを帳消しにした橘田健人の走り
「最初はとりあえず1本、仕掛けたいなと思ったので。パスってよりは、ドリブルを意識したんですけど」
ところが長は思い通りのドリブルができず。
「あまりうまく運べず。焦って」しまったことが「パスミスだったりそういうのにつながっちゃった感じです」と述べている。
得意のドリブルでスピードに乗り切れず。セカンドチョイスとしてパスを選ばざるを得なかったことで、パスの精度が落ちてしまった。そんな背景もあり左前を走るエリソンへのラストパスは、長を対応しようとする喜田拓也の足元に入ってしまった。
その喜田に跳ね返されて、エリソンへのパスは通らず。ルーズボールになったボールをカバーしようとした長の視野に入ってきたのが、長距離をフリーランニングしてきた橘田健人だった。
「パスミスして『やっべ』と思って、戻ろうと」考えた長だったが、橘田がこのルーズボールを回収。エリソンへのパスを通す。
「ラストチャンスだったんで。ゴール前に入っていこうと。そしたらボールがこぼれてきたので。良かったです」
この場面をそう振り返る橘田は、山原が長へのパスを出した瞬間、その山原と同じ位置に居た。すなわちハーフウェーラインから25mほどの地点だ。
この場所からのランニングで長をフォローした橘田は、フル出場の試合終了間際のフルスプリントに「キツかったです」と苦笑い。ただ、「ああいうので得点に関われたので。個人としてはいい経験になったというか、これからもああいうのをやっていけるように。結果が出たんで、続けていきたいなと思います」と前を向いていた。
「パニクってて…」
その橘田からのパスを受けたエリソンは、「ボールが来たらトラップをしてシュートを逆サイドに打とうというふうには考えてました」とのイメージで左足を強振。朴一圭の反応速度を上回る強烈なシュートがファーサイドのサイドネットを揺らした。
長はミスした。ただ、一人のミスはチームメイトのフォローで十分に挽回が可能だ。それを示した決勝ゴールの瞬間を、長は独特の表現で言い表している。
「もうなんか、ぐっちゃぐちゃでした(笑)」
その言葉の真意は、その瞬間からの記憶が無いということらしい。
「ちょっとパニクっててあんま覚えてないっす」
そして、そうした機会を与えてくれた監督やスタッフ、チームメイトに感謝の言葉を口にする長だった。
「本当にこういう経験をさせてくれた監督だったりスタッフだったり選手とかに感謝したいです」
長は結果的にチームの勝利に関わったが、もしかしたら個人的な評価は下げてしまったかもしれない。だからこそ、この経験を次に生かしてほしいと思う。ちょっとやそっとのミスで動じないメンタルを身につけて、チームメイトのミスをフォローできる選手になってほしい。
(取材・文:江藤高志)
【著者プロフィール】
1972年大分県中津市出身。出版社勤務を経て、1999年よりフリーライターに。01年ごろから川崎フロンターレでの取材を開始。04年からJsGOALフロンターレ担当となり、専門マガジン『川崎フットボールアディクト』の編集長を務める。
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