2025/26シーズンのプレミアリーグはアーセナルの優勝で幕を閉じた。実に22年ぶりのリーグ優勝。ミケル・アルテタ体制で築き上げた堅守やセットプレーを武器に安定して勝ち点を積み重ねた。黄金期到来の予感もするが、リヴァプールやマンチェスター・シティのようになるには、まだ足りない部分も多い。重要なのは、今後の移籍市場における考え方だ。(文:安洋一郎)[1/2ページ]
アーセナルが22年ぶりの優勝
ミケル・アルテタ監督率いるアーセナルが、2025/26シーズンのプレミアリーグを制した。
2022/23シーズンから3季連続で2位。あと一歩のところでトロフィーに届かなかった名門が、2003/04シーズンの“無敗優勝”以来となるリーグ制覇を成し遂げた。
これは、プレミアリーグにおける“新たな時代”の始まりを意味するのかもしれない。
近年のプレミアリーグは、リヴァプールを率いたユルゲン・クロップと、マンチェスター・シティを率いたジョゼップ・グアルディオラによって、一段も二段もレベルが引き上げられた。
一つの時代を築いた両者は、多大な成功を収めた末にチームを去る決断を下した。クロップは2024年夏に退任し、グアルディオラも今夏限りで監督の座を退く。
過去10年間が彼らの時代だったとすれば、プレミアリーグは今、新たな周期へと突入したとも言える。
その象徴が、22年間もリーグ優勝から遠ざかっていたアーセナルの戴冠だ。
では、彼らはなぜ再びリーグの頂点に立つことができたのだろうか。
競争力が激しいプレミアリーグを戦うための体力
まずは、リーグ全体の“時代の変化”について触れておきたい。
近年のプレミアリーグは、リーグ内の競争力がかつてないほど高まっている。
その要因の一つが、2022/23シーズンの昇格組3クラブがすべて残留した一方で、2023/24シーズンと2024/25シーズンの昇格組がいずれも1年で降格したことにある。
つまり、特定の17クラブが高額な放映権料を背景に、継続的な戦力強化を行える構図が生まれていた。
しかし今季は、この「17クラブ+昇格組」という構図が崩れた。
サンダーランドとリーズ・ユナイテッドが残留したことで、既存の17クラブのうち2クラブが降格を経験した。
18位で降格したウェストハム・ユナイテッドは勝ち点39を記録。これは直近20年で見ても極めて高い降格ラインだ。
一方で、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権争いは大混戦となり、最終的にリヴァプールは勝ち点60でCL出場権を獲得した。これは、自分たちが2002/03シーズンに記録した最低勝ち点でのCL出場権獲得と並ぶ数字である。
また、今季欧州カップ戦に出場していた9クラブのうち、ニューカッスル・ユナイテッド、クリスタル・パレス、ノッティンガム・フォレスト、トッテナム・ホットスパーがボトムハーフに沈んだ。辛うじてトップハーフに踏みとどまったチェルシーも10位だった。
その一方で、ボーンマス(初)、サンダーランド(初)、ブライトン(2回目)という欧州カップ戦常連ではない3クラブが出場権を獲得した。
これは、リーグ全体の競争力が高まったことを証明するには十分な材料だ。
この過酷なリーグを戦い抜く上で、最も重要になるのが「チームとしての体力」である。
そして、それこそが今季のアーセナルが他クラブを明確に上回っていた点だった。
戦力ダウンを最低限にすることができた理由
シーズン後半の失速は、アルテタ体制における長年の課題だった。
詳細は昨年5月に執筆した『無冠確定のアーセナル。アルテタではタイトル獲得は難しいのか。完璧主義者が陥る“負のスパイラル”【コラム】』でも触れた通りだ。
2022/23シーズンと2023/24シーズン、アーセナルはともに第33節で敗戦を喫し、そのタイミングで首位から陥落。終盤戦で逆転優勝を許していた。
この課題が完全に解消されたとは言い難い。実際、今季も第32節と第33節で連敗を喫し、一時的にマンチェスター・シティに首位の座を明け渡している。
なぜ、この時期にアルテタのチームは失速するのか。理由は明確だ。
2023/24シーズンと今季はいずれも、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝、準決勝の前後にあたる時期だった。それまでに蓄積された疲労に加え、強度の高い試合が連続することで、チーム全体が消耗していたのである。
アルテタは、グアルディオラやアストン・ヴィラのウナイ・エメリのような欧州カップ戦経験豊富な指揮官と比較すると、ターンオーバーに消極的な傾向がある。
そのため、特定の選手に出場時間が偏りやすい。結果として、コンディション低下や疲労蓄積による負傷が発生し、チーム全体のパフォーマンスも落ちていた。
だが、今季はその弱点を「編成」が補った。
これこそが、アーセナルに足りなかった「ラストピース」だったと言えるだろう。
