
サンフレッチェ広島OBの佐藤寿人氏【写真:編集部】
6月17日に発売される新作フットボールゲーム『Copa City』のイベントに、元日本代表FWの佐藤寿人氏がゲストとして登壇した。本作は、選手や監督ではなく、“試合を運営する側”に焦点を当てた異色のサッカーゲームだ。プレイヤーは都市全体をマネジメントし、交通網の整備や警備計画などを行いながら、巨大フットボールイベントの成功を目指していく。イベント後に行われた個別取材ではサンフレッチェ広島の現状について言及。変化を続ける古巣について言葉を紡いだ。(取材・文:佐藤彰太)[1/1ページ]
「軸になれる選手なのに…」

2026シーズンのサンフレッチェ広島【写真:Getty Images】
2024年、広島市中心部に誕生したエディオンピースウイング広島。新たな本拠地とともに、サンフレッチェ広島は近年、クラブとして大きな成長を遂げてきた。
直近のシーズンではJリーグでも安定して上位を争い、強豪としての地位を確立しつつある。
長年、広島の絶対的エースとして活躍し、クラブの浮き沈みを経験してきた佐藤寿人氏は、現在のチームが抱える難しさについて言及した。
「個人的には、ちょっと人材過多かなっていう。いい選手が多すぎて、本来だったら軸となり得る選手が候補としてたくさんいる。軸になれる選手なのに脇役に回らなきゃいけなかったりとか、そういう難しさがある」
クラブの予算規模が大きくなったことで、優秀な選手を巡る他クラブとの獲得競争でも勝てるようになった。だが、それがそのままチームの強化に直結するわけではない。
「お金があると人を獲れる。でも、1つのポジションに2人実力者がいると、2人が常に満足する出場機会(を得られる)かどうかって言ったら、現状そうではないので…。その辺りの見極めはどこかで必要なんだろうなと思います」
選手層が厚いことは、必ずしもチームが完成されていることを意味しない。
実力者が増えたからこそ、役割の整理や起用法、チーム内のバランスなど、新たなマネジメントの難しさも生まれている。
現在の広島は、新たなフェーズへ踏み込もうとしている。タイトルを狙える戦力を保有しながらも、チームとしての最適解を探り続けている最中なのだろう。
また、今シーズンから指揮を執るバルトシュ・ガウル監督についても、佐藤氏は見極めの時間だと語る。
「一番難しいんじゃ…」

サンフレッチェ広島のバルトシュ・ガウル監督【写真:Getty Images】
「(ミヒャエル・)スキッべ体制から引き継いで、色んな部分で変化のタイミング。どちらかというと選手が(揃って)いるので、その選手をやりくりする所の難しさだと思う。
1年目って選手の能力を把握していく時間で、スキッべ監督は選手を試しながら、ある程度見極めて、2季目という形に繋いでいった。そこは(ガウル監督も)百年構想リーグの半年間のなかで、まさに今見極めてるところなのかなと。一番難しいんじゃないですか?いま指揮を執るのは」
育成クラブとしての色を残しながら、同時にタイトルも求められる現在の広島は、極めて難易度の高いミッションに挑んでいる。
若手を育て、チームを循環させながらも、常に上位争いを続けなければならなくなった今、そのバランス感覚が問われている。
育てながら戦うクラブだった広島は、いまや勝ちながら育てるクラブへ変わろうとしているのだ。
「僕らの頃は、1桁順位なら悪いと思われることはあまりなかった。でも今、8位、9位とかでシーズンが終われば相当多分ネガティブな評価を下されると思う。クラブの規模が大きくなってる以上、そこは向き合っていかなきゃいけないと思います。
その中でも去年タイトル(JリーグYBCルヴァンカップ)を獲りましたけど、カップのタイトルだけでいいのかとか、やっぱり色んな所が出てくると思うので。過渡期なのは間違いないかなと」
J2降格や、3度のJ1制覇を経験してきた佐藤氏だからこそ、現在の広島が置かれている立場の変化を敏感に感じ取っているのだろう。
「その選手たちが殻を破れれば…」

佐藤寿人氏が期待するサンフレッチェ広島の選手たち【写真:Getty Images】
そんな“新生広島”を陰で支えるのは、佐々木翔や塩谷司ら、長年クラブを牽引してきたベテランたちだ。
佐藤氏とも共に戦った経験を持つ選手たちは、30代後半を迎えた現在も主力として存在感を放っている。
「シオ(塩谷)は、本当に言葉以上にプレーのクオリティで示していると思います」
ベテランが力を示す一方で、佐藤氏は本来チームの中心になるべき世代への期待も口にした。
「やっぱり25歳から30歳くらいの、一番いい年代の選手たちが中心になっていかなきゃいけない。その選手たちが殻を破れれば、もっと安定して上で戦えるチームになると思います」
台頭例として、今季は大卒4年目を迎える山﨑大地が出場機会を増やし、着実に成長を遂げている。持ち味である高精度のキックは、ガウル監督のスタイルとも高い親和性を誇る。
経験豊富な選手たちとの競争は、チーム全体のレベルアップにもつながっていくだろう。
強いチームという評価は、すでに確立されている。しかし、勝ち続けるチームになるためには、まだ越えなければならない壁がある。
今や無冠のシーズンでは物足りなさを感じさせるほど、期待値は大きくなった。
佐藤氏の言葉からは、成長を続けるクラブへの期待と、その変化を誰よりも知るからこその視点が感じられた。
(取材・文:佐藤彰太)
【著者プロフィール:佐藤彰太】
1997年兵庫県生まれ、広島育ち。2025年よりフットボールチャンネル編集部に所属。2011-12シーズンのUEFAヨーロッパリーグ決勝でラダメル・ファルカオのプレーに心を奪われて以来、アトレティコ・マドリードのファンとなり、そこからラ・リーガの世界に深く魅了される。これまでの現地観戦は恐らく30試合以上に及ぶ。現地での交流を通じて、ラ・リーガ複数クラブと関係を築き、元アルゼンチン代表MFエベル・バネガと食事を共にしたほか、元スペイン代表DFセルヒオ・ラモスとも親交を深めるに至った。なお、スペインの空気を吸った瞬間に人格が変わると周囲から評されており、前世はスペイン人であることが有力視されている。
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