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J1 14時間前

「去年の後半からは…」横浜F・マリノス、山根陸がベンチに座る日々に考えたこと。残留は嬉しい。けど「個人的には…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤井雅彦 photo by Getty Images,Editor
横浜F・マリノス、山根陸
横浜F・マリノスの山根陸【写真:Getty Images】



 横浜F・マリノスの山根陸が確かな進化を遂げている。中盤でバランスを取りながら、攻守両面で存在感を発揮。今季は得点力向上にも取り組み、その成果を数字として示している。背景にあるのは出場機会を減らした昨季後半の悔しさだ。「より怖い選手になるために」。反骨心を胸に、“世界”を見据える22歳は歩みを止めない。(取材・文:藤井雅彦)[1/1ページ]

明治安田J1百年構想リーグ・地域ラウンド第18節
東京ヴェルディ 0-6 横浜F・マリノス
味の素スタジアム

横浜F・マリノス大量リードで山根陸が考えていたこと

横浜F・マリノス
大量得点を奪った横浜F・マリノス【写真:Getty Images】


 ともすれば、無意識のうちに前傾姿勢を強めてしまいそうなシチュエーションだった。

 0-6で大勝した東京ヴェルディ戦でのこと。前半アディショナルタイムにユーリ・アラウージョが3点目を、そして、後半のファーストプレーで谷村海那がこの日自身2得点目を決めて、スコアを0-4に広げる。

 残り45分で正反対の現象が起きない保証こそないものの、よほどのことがないかぎり、勝ち点3の安全圏と言っていい。

 そんな展開で山根陸はボランチとして何をイメージしてプレーしていたのか。相手が前掛かりになった間隙を縫って、得点を奪いに出る考えはあったのか。解答は明快なものだった。

「その時その時のバランスもあるし、チームとしてひと息つきたい場面もある。相手陣地でボールを動かすことが大事な時間帯もあるので、そこはバランスを見ながら。今日であれば相手の5バックに対して、ウチの両サイドバックが高い位置を取っていたので、ボランチのところは“へそを守る”というか、少し慎重になるところはありました」

 なるほどたしかに、である。

 横浜F・マリノスは序盤からボールを保持しながら、ヴェルディのプレスをいなしていく。センターFWの谷村も相手センターバックに対して、優位性を保ち、高い位置で起点を作れていた。相手陣内へスムーズに進入することで、両サイドバックが高い位置を取れていたのである。

 そこで中盤の底を留守にせず、カウンターへの備えを第一優先とした。両センターバックやボランチの相棒である渡辺皓太とコミュニケーションを図りながら、不必要なスペースを与えないこと。スタンドプレーに走るのではなく、しっかりと状況判断した上での冷静なプレー選択だった。

「より怖い選手になるために」。その先のステージを追い求めて

横浜F・マリノス 木村卓斗 山根陸
横浜F・マリノスの山根陸【写真:編集部】


 中盤で強さを発揮することで、セカンドボールの回収役として黒子に徹し、チームとして相手陣内で過ごす時間が長くなるための最善手を選ぶ。

 この働きには大島秀夫監督も「五分五分のボールを自分に持っていける回数も多くなったし、強度もかなり上がっている。今のサッカーは何よりもそれが求められることを認識して強くなってきた」と舌を巻いた。

 百年構想リーグの地域リーグラウンド全試合に先発。ゴールデンウィークの5連戦もフル稼働したようにタフさを増しつつある。それだけではない。第4節・ヴェルディ戦と第12節・浦和レッズ戦では得点も記録した。

「スコアの部分をより意識していきたい」と開幕前に語っていたとおりのアクションが数字として表れている。

 中盤でのゲームコントロールはお手の物。その先のステージを追い求めていた山根は言葉を発することで自身を鼓舞していた。

「前方向へのランニングで相手がついてくれば、仲間の誰かが空く。ゴール方向にプレーするのは大事だなと感じる。勝つことが一番だし、バランスを崩してまで前へ行こうとは思わないけど、チャンスをうかがいながら、ダイナミックにプレーしたい。より怖い選手になるためにゴール前でのクオリティを上げたい」

 得点意欲を隠そうとはせず、前面に押し出して、プレーヤーとしての価値を高めることにチャレンジしていた。彼本来の持ち味であるバランス感覚を維持しながら、チャンスの場面では積極的にゴールを狙っていくアクションに比重を置いていた。

 その背景には、出場機会を減らした昨季後半の苦い記憶がある。残留争いにもがき苦しむチームにおいて、背番号28はシーズン前半こそ定位置を確保していたが、夏以降は出場機会が激減。

 ロングボール主体のスタイルに転換した影響もあり、8月以降の先発はわずか2試合にとどまった。

 悶々とした日々に何を感じて、学んだのか。

「この先どうしていくかという思いになる時間と出来事だった」

横浜F・マリノスMF山根陸
横浜F・マリノスの山根陸【写真:Getty Images】


「去年の後半のようなサッカーになったからこそ、自分にプラスアルファが必要だなと感じたし、自分の中の反骨心みたいなものも大きくなった。試合に出られないなりに感じることは多かった。

 チームとしては残留できて本当に良かったけど、個人的にはめちゃくちゃ悔しかった。この先どうしていくかという思いになる時間と出来事だった。この18試合というよりは去年から考えていたこととその取り組みで、マインドの部分が一番の変化かなと思う」

 取り組むべき課題は明確。中盤での力強さや存在感を高め、さらに相手ゴール前でのプレー回数を増やす。それらを体現するために必要なひとつがフィジカル要素だった。

「去年の後半からは自分が何かレベルアップしたり、変化しないといけない部分があると感じて過ごしていた。シンプルに局面での強さも足りないし、自分の特徴や技術を考えた時により高い位置で怖い選手になれないと、上のレベルになった時に息詰まってしまう。トライ&エラーの繰り返しだけど、まずは前へ入っていく回数や機会が大事。そのために逆算すると、フィジカル的な部分を高めないといけない。

 90分の走行距離はもとからチームで上位だけど、それよりもハイスピードランのところ、アクセルのところを意識している。スプリントの距離などもフィジカルトレーニングから意識しているので、今年になってからデータ上では数字として実ってきているし、その実感もある。でも、よりパワーも迫力も出したい」

 迎えるプレーオフラウンドでも自身の成長と目に見える結果を求めて全力疾走する。すでに横浜F・マリノスの中核になりつつあるが、それだけでは足りない。夢舞台として公言している『世界』へ飛び出すために求めたいのは、圧倒的な力だ。

 チームの成績を背負い、勝敗を左右する選手になるために。山根陸が歩みを止めることはない。

(取材・文:藤井雅彦)

【著者プロフィール:藤井雅彦】
1983年生まれ。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、記者活動をスタートさせる。サッカー専門紙『エル・ゴラッソ』では創刊時から執筆し、06 年途中からマリノス担当に。 現在はサッカー専門誌などにも多数寄稿。「現場に勝るものなし」を信条に、担当クラブのいまを追っている。 ウエブマガジン『ヨコハマ・エクスプレス』主筆

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