
サッカー日本代表の久保建英【写真:編集部】
代表で初めて、自ら背番号を選んだ。久保建英が希望したのは、負傷でワールドカップ(W杯)出場を逃した南野拓実が背負ってきた「8番」だった。先輩への敬意と覚悟を番号に込め、さまざまな経験を糧に成長を遂げた久保が、日本代表の中心選手として2度目のW杯へ挑む。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
南野拓実から受け継ぐ「8番」

サッカー日本代表の南野拓実【写真:Getty Images】
初招集からまもなく7年になる日本代表で、初めて自分の意思で背番号を選んだ。
FIFAワールドカップ2026(W杯北中米大会)に臨む26人の代表メンバーに選出された直後。背番号を決める段階になって、レアル・ソシエダの久保建英はモナコの南野拓実へ電話を入れた。
そしてスマートフォン越しに、覚悟を込めて「いいですか」と切り出した。
第2次森保ジャパンで南野が象徴してきた「8番」を、来たる北中米大会で背負いたいと申し出た。
背番号に関して、久保は「10番」以外なら何番でもかまわない、というスタンスを貫いてきた。
実際、18歳でデビューを果たした2019年6月のエルサルバドル代表戦の「21番」を皮切りに「17番」や「20番」など、招集された選手たちの顔ぶれに応じていくつもの番号を背負ってきた。
前回のカタール大会では「11番」を背負ってグループステージのドイツ、スペイン両代表戦で先発。現時点で久保にとって最後の代表戦出場となる昨年11月のボリビア代表戦では「20番」だった。
しかし、今回だけは事情が違った。どうしても「8番」をつけてプレーしたかった。
千葉市内で行われていた合宿に合流した29日。久保はこんな言葉を残している。
「南野選手が出られない、という状況になって…」

サッカー日本代表の久保建英【写真:Getty Images】
「僕としては基本的には何番でもいまはいいかなと思っていましたけど、南野選手が出られない、という状況になって、だったら『8番』を、他の誰かがつけるくらいならば自分がつけたいと思って」
いつものように歯切れよく、かつテンポよく紡がれる言葉から熱い思いがにじみ出てくる。
昨年12月末に左膝前十字靱帯断裂の大怪我を負った南野は、復帰へ向けて懸命なリハビリを積んでいた。しかし、間に合わなかった。選外となった南野が、無念の思いを抱いているのは想像に難くない。
だからこそ思いを受け継ぎたかった。もっとも、何も言わないわけにはいかない。
今大会に臨む選手たちの背番号が発表される直前。電話越しに「いいですか」と許可を得た。久保によれば、南野は「逆につけてくれるのだったら、という話でした」と快諾し、背中を押してくれたという。
クールに映るようで、内面には熱さを脈打たせる男。代表で初めてひと桁を背負う久保が言う。
「南野選手はピッチの内外でチームを鼓舞できる存在ですし、そういった部分もしっかり引き継いで、陽気で明るい部分も含めて、いろいろなものを引き継いでやっていきたいと思っています」
久保自身もW杯イヤーを迎えた直後に、初めてと言っていい大怪我を負った。
1月18日のバルセロナとのラ・リーガ第20節。ソシエダが1点リードで迎えた66分だった。
カウンターから敵陣の左サイドへトップスピードで突入していった久保が急に失速。左太もも裏を押さえてピッチ上に倒れ込んだ。左ハムストリングに負った肉離れを、いまではこう振り返っている。
「最悪の状況ではないのかなと…」

バルセロナとの試合で負傷した久保建英【写真:Getty Images】
「怪我をした時点で全治的には(W杯に)間に合う、という話は聞いていたので。もちろん『もったいない』と思いましたけど、最悪の状況ではないのかなとポジティブにとらえていました」
4月11日のアラベスとの第31節で復帰を果たすまで、3カ月近くもの戦線離脱を余儀なくされた。いまでは不安はないと強調した久保は「悪いことばかりではないのかな」と苦笑しながらこう続けた。
「スプリンターの選手がよくやるというか、足が速くなると太ももの怪我が多くなってくるらしいので、そういう意味でもちょっとポジティブにとらえています。まあ怪我をしないのが一番なんですけどね」
自身が臨んだ初めてのW杯だったカタール大会を、久保は自虐的な言葉で位置づけてきた。
「自分にとっては、半分は黒歴史みたいなW杯でしたね」
先発したドイツ代表戦とスペイン代表戦はともにハーフタイムで交代し、日本の逆転劇をベンチで見届けた。クロアチア代表とのラウンド16では発熱を含めて体調を崩し、無念の欠場を余儀なくされている。
久保は「自分の見積もりが甘かったというか、勘違いしていました」と後にこう語っている。