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元Jリーガーが分析。チュニジア代表目線の「日本代表戦のリアル」とは。「私も現役時代…」なぜ崩壊していたのか【田中裕介のMatch dive】

シリーズ:田中裕介のMatch dive text by 田中裕介 photo by Getty Images
日本代表対チュニジア代表
日本代表対チュニジア代表【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)・グループリーグF第2節で、チュニジア代表は日本代表に0-4で完敗した。90分を通して全くと言っていいほど良いシーンを作り出せなかったチュニジアに何が起きていたのか。かつて横浜F・マリノスや川崎フロンターレで活躍し、現在は解説者としても活躍する元Jリーガー、田中裕介氏に、この一戦の戦術的攻防をMatch dive(深層分析)してもらう。(文:田中裕介)[1/2ページ]

注目は最前線に…

チュニジア代表FWセバスチャン・トゥネクティ
チュニジア代表FWセバスチャン・トゥネクティ【写真:Getty Images】


 オランダ代表戦を2-2のドローで終えた日本代表に対し、初戦を落として監督が交代したチュニジア代表は、勝ち点獲得を狙って[5-4-1]のミドルブロックをベースにこの試合に臨んだ。

 チュニジア代表の先発メンバーと配置は以下の通り。

 GK:ダーメン。DF:左からアブディ、レキク、タルビ、ブロン、バレリの5バック。 3CBは左からレキク、タルビ、ブロンの並び。 MF:中盤は底にスキリ(左)とベン・スリマン(右)のダブルボランチ。二列目の左SHにメジブリ、右SHにサードを配置。 FW:最前線にトゥネクティを配した形。

 注目は、本来ウイングを得意とする、ドリブルや突破力があるトゥネクティをセンターフォワード(最前線)に起用した点だ。

 これは、ボールを奪った後のカウンターで彼のスピードを活かし、日本の背後のスペースを突くという狙いが見えた。

明確に露呈していたチュニジアの弱点

北中米W杯 GS第2節 vsチュニジア サッカー日本代表 先制点を奪った鎌田大地
鎌田大地のゴールシーン【写真:Getty Images】


 2分、チュニジアは前線からのプレスでボールを奪い、メジブリがミドルシュートを放つなど、良い立ち上がりを見せた。

 しかし直後の3分、前からプレスに行こうとした動きを日本のビルドアップで外されてしまう。チュニジアの前線はGK鈴木彩艶へプレスを掛けたが、ここで鈴木が安易なフィードを選択せずに、右ストッパーである冨安健洋へ。冨安が中央へ打ち込んできた鋭い縦パスに対し、鎌田大地に絶妙なフリックを許してしまう。

 このワンタッチにより、チュニジアのボランチの背後に生じていたスペースを突かれ、日本に中央での前進とスピードアップを許すこととなった。

 そこから大きく左に振られた鋭いサイドチェンジから、日本の左WB中村敬斗に正確なクロスを供給され、最後はゴール前へスプリントして走り込んできた鎌田に仕留められてスコアは0-1。チュニジアにとっては、立ち上がりのハイプレスを完璧に剥がされただけでなく、高い位置へのプレッシングに伴う「DFラインと中盤の間のスペース管理」のミスが明確に露呈した失点となった。

 さらに失点直後の5分には、日本のDFライン中央の板倉滉が右サイドに開いてロングフィードを送り込み、再び決定的なピンチを迎える。

 この一連の対応は、チュニジアの左サイドにおける守備のバランスの悪さとDFラインの背後への対応の脆さを如実に露呈させるシーンとなった。

 続く8分には、またしてもチュニジアの左サイド奥のスペースにランニングをした上田綺世が、鋭いターンからペナルティエリア(PA)内へ侵入。ゴール前へ決定的なクロスを送り込まれるが、ここはチュニジア守備陣が最後のところでクリアし難を逃れた。

 結果としてチュニジアは、開始わずか10分の段階で、自陣左サイドに関わる守備の乱れから3度もの決定的なピンチを作られ、そのうちの1本を早々に失点に結びつけられる極めて重い立ち上がりとなった。

上田綺世の動きに対して…

日本代表FW上田綺世
日本代表FW上田綺世【写真:田中伸弥】


 時間経過とともに露呈していった左サイドの守備の課題。この序盤の攻防を経てゲームが進むにつれ、チュニジアの左サイドにおける構造的な問題がピッチ上で徐々に露呈していくこととなる。

 まず、左WGに入ったメジブリの守備強度の低さから、日本の右ストッパーである冨安の配球に対して実質的な制限を掛けることができなくなった。

 この冨安をフリーにしてしまう守備の緩さを日本にうまく突かれ、自在に前進を許したことが、前半のゲーム運びにおいて日本側に大きな優位性を与える要因となった。

 また、左ボランチのスキリも本来は広範囲をカバーする機動力に優れたタイプではないため、日本の速いパスワークやドリブルに対してスライドやプレスバックの遅れが目立ち始めるシーンが増えた。

 守備時は同じシステムで守る日本の場合、佐野海舟と田中碧の機動力とスタミナは凄まじく、そこのスペースが空かないが故に、守備時のスペース管理の両チームの差は顕著に感じた。

 そのスキリの周辺にできるスペースを、日本の右シャドーの伊東純也のドリブルや、前線から絶妙なポジショニングで落ちてくる上田綺世に活用され、守備ブロックのズレが生まれていった。特に左ストッパーのレキクと中央のタルビは、この日本の攻撃陣を食い止めることができなかったという印象だ。

 この上田の「落ちる動き(ボランチ脇の位置まで下がって受けるプレー)」に対し、チュニジアの3CBは「誰がマークを引き継ぎ、どこまで付いていくべきか」の基準を設定できず、中央の守備は完全に後手に回った。

 特に左ストッパーのレキクや中央のタルビが上田に後手を踏む形でDFラインと中盤の間のスペースにギャップが生まれた結果、致命的な2失点目が入る。

 30分、DFタルビが安易なフィードを前方へ展開。ボールをカットした板倉から素早い楔を前線の上田に打ち込む。そこから持ち込んだ上田が自ら豪快なミドルシュートを突き刺した。

 この2失点目以降、チュニジアはボールを奪った後にカウンターを狙おうとするが、日本の速いカウンタープレスや切り替えの早さに苦しめられ、なかなか前にボールを運ぶことができない。

 そのまま決定的なチャンスを一度も作れず、ほぼ何もできずに前半を終了した。

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