
ガーナ代表と引き分けたイングランド代表【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループL第2節・イングランド代表vsガーナ代表が現地時間23日に行われ、スコアレスドローに終わった。8割近くボールを握りながらも相手を崩せなかったのは事実だが、この結果は悲観するべきではない。むしろトーマス・トゥヘル監督はすでにトーナメントを勝ち上がるためのプランを立てているように見える。(文:安洋一郎)
イングランド代表とガーナ代表がスコアレスドロー
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ガーナ戦で決定機を逃したハリー・ケイン【写真:Getty Images】
「試合前から分かっていたが、難しい試合だった」
イングランド代表のトーマス・トゥヘル監督は、スコアレスドローに終わったガーナ戦を「難しい試合」と振り返った。
ドイツ人指揮官がこのような感想を抱くのも無理はない。パナマ代表との初戦に勝利していたガーナ代表は、決勝トーナメント進出を確実なものにするため「勝ち点1」を狙うフットボールを展開した。
トゥヘル監督も「相手は初戦よりもさらに守備的で、[4-5-1]のブロックを敷いてきた。先に点を取って試合を動かさない限り、我慢比べの展開になる。かなり低い位置で守られていたため、攻撃のリズムを上げるのが難しかった」と語り、自分たちが使いたいスペースを消され続けたことが試合を難しくさせたと振り返っている。
実際にイングランドは試合を通して79%のボール支配率を記録。しかし、これはボールを持たされたという感覚に近く、19本のシュートを放ちながらもゴールラインを割ることはできなかった。
試合に勝てなかったのは事実だ。しかし、この結果を単純にネガティブなものと捉えるべきではない。
リーグ戦とトーナメントの違い

トーマス・トゥヘル監督とハリー・ケイン【写真:Getty Images】
イングランド代表が目指しているのは、1966年の自国開催以来の優勝だ。すなわちトーナメントでトップに立つことを目標としている。
仮にクラブチームが戦う長期のリーグ戦となれば、ガーナのように自陣に引く相手を崩し切れないと優勝は難しいかもしれない。ただし、W杯はそういった大会ではない。
グループリーグの場合は相手との戦力差があるケースもあるが、ラウンド32以降の場合は基本的に力が拮抗した相手が続く。ベスト8以上となれば、ガーナ戦のように90分を通して自陣深くに構え続ける相手は少なくなるだろう。
目標である優勝に必要なものは何か。それは引き分け狙いの相手を崩し切ることではなく、初戦のクロアチアのように力のある相手に対してどう勝ち切るのか、というのが第一のテーマになる。
トゥヘルがトーナメント以降の戦いを見据えているのは、すでに第2戦までの戦いでも見られている。
ゴードンとラッシュフォードの起用順に見える意図

クロアチア戦でゴールを決めたマーカス・ラッシュフォード守備陣が粘り強く奮闘【写真:Getty Images】
その代表例が、アンソニー・ゴードンとマーカス・ラッシュフォードの起用順だ。
前者はオフザボールに強みを持つアタッカーで、走ることを厭わない。
ボール保持の局面では、最前線のハリー・ケインが降りたスペースに走ることで長いボールを引き出しつつ、非保持では走り続けることでチームを助ける。
ガーナ戦でも精力的にプレッシャーをかけ続け、カウンターを受けそうな場面では素早いプレスバックでマイボールにした場面もあった。
一方のラッシュフォードは、オンザボールに強みを持つタイプのアタッカーだ。ボールを持った時の仕掛けは一級品。ドリブルで複数人の相手を剥がし、高精度のインスイングのクロスやシュートで得点のチャンスを伺う。
トゥヘル監督はクロアチア戦で72分に両者を入れ替えた。ガーナ戦はゴードンが65分にベンチへと下がった後の83分にラッシュフォードが投入された。
彼らを起用する順番を逆にするという発想もあるだろう。先に攻撃力のある選手を起用し、後から守備強度のある選手を投入するというプランも捉え方によっては理にかなっているかもしれない。
しかし、優勝を目指すイングランド代表にとって重要なのは、トーナメントで負けないことであり、トゥヘル監督は試合のプランを修正しやすい方法で戦っている。
スタメンの11人では高い強度で相手を圧倒し、後半はラッシュフォードやエベレチ・エゼのようなスーパーサブ適性の高い交代カードを活用しながら火力を上げて勝利に近づける。
ガーナ戦も勝ち切ることはできなかったが、ラッシュフォード投入以降の時間帯に多くの決定機が生まれた。
86分の大チャンスをハリー・ケインが決めきれなかったのは痛恨だが、アディショナルタイムを含めて10分弱の時間で試合全体のゴール期待値(xG)の52.7%に該当する0.718を記録。最後に火力を上げることができたのは事実だ。
このトーナメントを勝ち抜くうえで有効な采配をすでに見せている時点で、トゥヘル監督のプランにはブレがない。何よりも彼はチェルシー時代にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制覇しており、一発勝負の大会で結果を残してきた実績がある。
ガーナ戦で勝ち点3を逃した事実は変わらない。しかし、トゥヘル監督が見据えているのはグループリーグ突破ではなく、その先にある優勝だ。
その視点に立てば、このスコアレスドローを必要以上に悲観する必要はないだろう。
(文:安洋一郎)
【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu
【グループリーグ最新順位表】FIFAワールドカップ2026
【決勝トーナメント表】FIFAワールドカップ2026 組み合わせ一覧
【全試合日程・放送予定の一覧】FIFAワールドカップ2026
【了】
