日本代表の躍進は、もはや偶然ではない。Jリーグ黎明期に掲げられた「100年構想」、高校・大学・クラブユースが共存する独自の育成システム、そして欧州から学びながらも日本文化に適応させてきた長期的な強化方針。イタリア・メディアは、急成長を遂げた日本サッカーをどのように見ているのか。アニメ『キャプテン翼』から始まった憧れ、部活文化への関心、そして世界一を見据える長期戦略まで、その評価を読み解く。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
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夢物語ではなくなった世界一
日本代表の強さは、もはやダークホースの域を超え、世界の強豪国の一角を担いつつある。
その礎となったのが、Jリーグ黎明期に策定された綿密な「100年構想」だった。
当時はFIFAワールドカップ(W杯)出場経験すらなかった国が、将来的な世界一を目標に掲げたことで、失笑を買ったこともあっただろう。
しかし、Jリーグ発足から30年以上の歳月を経た今、その構想はもはや絵空事ではない。
日本は着実に歩みを進め、世界の頂点を現実的に狙える位置にまで到達しつつある。
近年では、イタリア・メディアも日本サッカーを多く取り上げるようになった。
サッカーとカルチャーを融合させた雑誌『Rivista Undici』は、著しい成長を遂げた日本サッカーをテーマに特集を組み、その発展の背景に迫っている。
アレクサンダー・カミ氏が記事を寄稿している。
『キャプテン翼』から見えた現実
「私たちがアニメ『キャプテン翼』を見ていた頃、あまりにも多くの細部が現実離れしているように思えた。果てしなく広いピッチ、空中で静止したかのようなオーバーヘッドキック、スーパーヒーローのように動くゴールキーパー。そして17歳の少年たちが戦う高校サッカーの準決勝のために満員となるスタンドは、ほかのどの描写よりも非現実的に見えた」
イタリアでも1970年代後半から、日本のアニメがテレビで放送されるようになった。
とりわけ、永井豪原作のロボットアニメは高い人気を博し、『UFOロボ グレンダイザー』(イタリア語名:UFO Robot Goldrake)や『鋼鉄ジーグ』(同:Jeeg robot d’acciaio)は、今なおカルト的な人気を誇っている。
後者については、イタリア人監督ガブリエーレ・マイネッティがインスピレーションを受けて制作したヒーローアクション映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』が存在するほどだ。
特にアニメや漫画を愛する人々にとって、日本は長らく憧れの国だった。
スポーツアニメもまた多くの子どもたちに視聴され、バレーボールを題材とした『アタッカーYOU!』(同:Mila e Shiro – Due cuori nella pallavolo)や、サッカーを題材とした『キャプテン翼』は、子どもたちをテレビの前に釘付けにした作品として知られている。
後者はイタリアでは『Holly e Benji』のタイトルで知られる。
Hollyは主人公・大空翼の愛称で、イタリア語版での本名はオリヴァー・ハットン(Oliver Hutton)。Benjiはゴールキーパーの若林源三で、ベンジャミン・プライス(Benjamin Price)の愛称である。
つまり、『Holly e Benji』とは「翼と源三」を意味するタイトルなのだ。
こうしたスポーツアニメを通じて、日本特有のスポーツ文化もある程度イタリアで知られるようになった。
その代表例が、いわゆる「部活」である。
イタリアでは、サッカーをはじめとするスポーツはクラブチームで行われている。
そのため、彼らの文化には存在しない学校の「部活動」も「Bukatsu」として認知されており、時には憧れの対象として語られることさえある。
カミ氏はさらに、次のように綴っている。
日本独自の育成文化
「ところが、キャプテン翼は実際には現実を忠実に再現したものだった。日本の育成年代のサッカーは欧米のそれとは大きく異なる。全国高校サッカー選手権はスタジアムを満員にし、全国でテレビ中継され、世界でも最も注目される高校スポーツイベントのひとつとなっている。
それだけでも、日本サッカー界の成長を説明するに十分な要素である。その軌跡は、長期にわたり計画され、ほとんど方法論的とも言えるプロセスの産物だった。スポーツ的な構築である以前に、文化的な構築だったのである」
高校サッカーは、Jリーグ創設前から日本で最も人気のあるスポーツコンテンツの一つだった。
不思議なことに、Jリーグ誕生前の日本で最高峰のサッカーが繰り広げられていた日本サッカーリーグ(JSL)が閑古鳥の鳴く状況だった一方で、高校サッカーには当時から多くの観客が駆けつけ、テレビ放送も行われていたのだ。
学生たちのひたむきなプレーに一喜一憂し、ドラマティックな展開に引き込まれる。
ダイヤの原石たちが見せるプレーには光るものもあるが、トップレベルとは言い難い戦いに、これほど多くの人々が足を運び熱狂する理由は、イタリア人には不思議に映るかもしれない。
また、イタリアのプロ選手の中には、いわゆる高校課程をすべて修了していない者も少なくない。
イタリアの学校制度は5年制であり、留年も珍しくないため、若くしてプロの道に進む選手の中には、学業を途中で切り上げるケースも存在する。
日本では大学出身の日本代表選手も少なくなく、イタリア公営放送『Rai』のワールドカップ特番『Notti Mondiali』では、上田綺世が、恐らく大学を卒業している理由からか、学業に励みながら、プロの道を歩んだ選手として紹介されていた。
もっとも、イタリアではスポーツ推薦のように競技と進学が制度的に結びついた仕組みは一般的ではなく、日本の教育制度が十分に理解されていなかった可能性もある。
そこは、日本のアニメでも描かれきれていなかった部分かもしれない。
