
日本代表は1-2でブラジル代表に敗れ、またしても決勝トーナメントで勝利を挙げられなかった【写真:Getty Images】
日本代表はブラジル代表に敗れ、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)をベスト32で終えた。戦術やシステムだけでは埋められない差はどこにあるのか。岩政大樹氏は「フォア・ザ・チーム」の本当の意味、日本らしいサッカーの在り方、「個」の力、そして育成について持論を展開。ブラジル戦は、日本サッカーが次の4年間で何を積み上げるべきか、その課題を浮き彫りにした90分でもあった。(取材・文:竹中愛美)
【単独インタビュー/取材日:6月30日】
「フォア・ザ・チーム」の本当の意味

前田大然は両チーム最多78回のスプリント回数を記録し、攻守において持ち前のスピードを発揮した【写真:Getty Images】
ーー前回は「今大会の日本代表の良い雰囲気が、勝つために良いチームなのかは別の話。議論になってほしい」といったような話がありました。実際に中のことはわからない部分もあるので、代表の空気感など何とも言えないところもあります。
「そこがまさに日本のこれからの議論であって、つまり、これは戦術的な話でもあるし、メンタリティ的な話にもなるんですけど。全員がちゃんとハードワークして、全員がしっかり基本に忠実に、凡事徹底って森保さんが言っていますけど、それって選手も、強いチームを作るためにはものすごく大事なことだとは思うんです」
ーーメンバー発表会見のときに、森保監督が確かに、今大会のテーマに「凡事徹底」を挙げられていました。
「例えば、Jリーグの優勝しているチームたちって、川崎(フロンターレ)が優勝しているときも3トップは結構、家長(昭博)とか攻め残りしていてとか、(横浜F・)マリノスとかもそうです。みんなでハードワークはするんですけど、そのハードワークするということが、どういうハードワークかによって解釈って結構違うと思っていて。
攻め残りまでしなくても、例えば、全員が戻ることが“フォア・ザ・チーム”じゃなくて、フランスの選手たちを見ていても、それぞれの個性をチームのために使うのが“フォア・ザ・チーム”であってみたいな感覚に見えるんですよ。日本の監督さんが“フォア・ザ・チーム”で行くと、自分を押し殺して、常に戻りましょう、常に頑張りましょうみたいな感じが日本の“フォア・ザ・チーム”な気がするんですけど」
ーー選手の中にはそういった献身性について、「チームのために走ったり、守備をしたりしないと、試合に出られない」といったような話もされていました。
「強豪国のそれってもうちょっとなんか、勝つためから選ばれている。今の日本の勝つためがこれなんだっていう定義はそうなんだろうと思うんですけど、それは本当にそうなのかみたいなことを議論すべきって感じかな」
ブラジルを真似るのではなく、日本らしさを磨く

ゲームキャプテンを務めた堂安律は献身的な守備も光った【写真:Getty Images】
ーー世界のトップトップとやって勝つには本当にそういう細部が勝敗を分ける、と。
「議論すべきというものに正解はないんだけど、かといって、今言った話とまた矛盾する話になるかもしれないです。ブラジルと同じような路線を昔みたいにブラジルがやってるからこうすればいいんだって、強豪国を見ながらやるような時代でももうなくて。日本は独自の路線を考えれば全然いいと思うんですよね。日本のまさにその献身性とかって、堂安みたいに10番の選手がああやってハードワークをするみたいなことを打ち出してっていう。
1つの戦い方として、3-4-3の中でウイングバックに攻撃的な選手なんだけど、ハードワークをさせるみたいなことは面白いなと思ったんですよ。ならば、それを通してもよかったかなということですね。それを見たかったなと。それでいくと、守備のところも少し下がって守るような戦いをしましたけど、同じように献身的に走るだったら、プレッシングをかけに行くことで足を使って、みんなでガンガン追いかけるみたいなこともしてもよかったかなと。
それもアジアのときにはガンガンプレスかけてたわけで、3対3を受け入れた上で、プレスかけていくみたいなことで、プレッシングで日本の献身性を表現していこうよみたいなことも1つの考え方だと」
ーーなかなか今大会では見られなかったですね。
「5-2-3でやるとそうなるんですけどね。5-2-3でやるんだけど、そうならないようにするためには、戦術的な準備が必要で、少し出ていくようなやり方もどっちもあるんですけど、それは森保さんの(サンフレッチェ)広島のときを見ていても5-4-1が好きなので。となると、その戦いでしか選択肢はなかったんだろうなと思います。
そこを持っているコーチ陣がいるわけでもないし、現実的なところが、攻撃もそうかな。ブラジルとかもそうだし、大会通して、結局このレベルになるとですけど、アジアで質が上回っていると、いろんなバリエーションの攻撃が見えましたけど、きょうもどういうふうに攻めたいのかよくわからず、大会を終えちゃったなという感じ」
世界との差を埋めるために必要なもの

試合後、サポーターに挨拶をする日本代表の選手達【写真:田中伸弥】
ーー後半、日本は防戦一方でした。それはあえて行かなかったのか、それともブラジルの圧が強くて、行きたくても行けなかったのか。
「(ブラジルは)プレッシングはうまくかけていましたけど、開く場所は作っていましたし、そこからどんな攻撃を仕掛けるかは、やろうと思えばもう少しチャレンジできたとは思います。ただ、それをやるんだったら、さすがに(ボールを)受けれる選手が必要になってくる。でも、それを狙った戦いじゃなかったんだろうなっていう人選に見えちゃうし、久保がいれば違ったんだろうなとかもあるんですけどね、結局。
そうなると、長い時間をかけて次の世代の選手を育成しなきゃいけないとかって話になるんですよ。あとは僕、試合が終わって思ったのは、結局、W杯本大会までこういう強豪国と本気の試合をする機会がないなと、このアジアの環境は難しいなと思いましたかね」
ーーそうですね。
「さっきの3-4-3の話ですが、アジアで見せたものを出すのか出さないかの判断もできないまま、親善試合でやっただけの話で、1発勝負できょうみたいなやり方だったら、これの方が苦手でしょっていう戦いを突きつけられることはない。そういう試合しかやっていないので」
ーー親善試合の場だとなかなかそういう状況にはなりづらいですよね。
「なりづらい。これも結構解決が難しい。今大会もアジアは全然上がれなくて、アフリカはどんどん強くなっているなと思いますし。となったときに、日本は確かに成長しているなと思うんですけど、ブラジルも確かに成長してきているし、アフリカも成長してきて、他の強豪国も成長している中で、日本だけじゃないので成長するのは。
その速度を上げていかないと、いつまでも追いつけないよっていう話になるので。でも、そういう意味では、いろんな議論ができそうな終わり方で、特に優勝経験国がこうやって本気の勝負をしてくださった、それを見せてくださったのはサッカー界にとってはものすごく大きい試合だった」
(取材・文:竹中愛美)
【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。
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【了】
