
ブラジル代表に敗れ、決勝トーナメント1回戦で北中米W杯を去ることになった日本代表【写真:Getty Images】
「日本全体としてマインドが新興国なんですよね」――。日本代表がブラジル代表に敗れ、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)を終えたあと、岩政大樹氏が最後に語ったのは、戦術やシステムではなく、日本サッカーが築くべき「文化」だった。勝者のメンタリティーとは何か。歴史を積み重ねるとはどういうことなのか。そして、この敗戦を見た子どもたちへ何を残せるのか。世界の頂点を目指すために必要なものを、日本サッカーの未来という視点から語った。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:6月30日】
ブラジル戦、勝敗を分けたのは…

先制ゴールを挙げるなど攻守で奮闘した佐野海舟【写真:Getty Images】
ーー改めてになりますが、ブラジル戦の勝敗を分けたポイントはどこにあったと思いますか?
「うーん、そもそも歴史と力の差ですかね」
ーーというのは?
「勝敗を分けたポイントって、試合における何かがあると語るときには、想定外のことが起こったときにしか言うべきことじゃないと思うんです。サッカーっていろんな取り方ができるから、ここはこうすればっていろいろ言えるんですけど、想定内のことが起きているときにはそれは想定内のことでしかないので。
例えばイーブンの状況でいっていて、想定していなかったすごいミドルが決まるとか、意味わからん1発が入っちゃったみたいな、ことならまだわかるんですよ。今回はそうではない。想定内のことが想定通りに起こった試合だったので。強豪国のオランダや優勝経験国のブラジルとまだオープンでやり合えるほどの選手が育ってないというのはあったんだと思います。試合が終わった後の選手たちのコメントも1人1人個の力って話が出ています」
ーー話されていましたね。
「逆に言えばオープンな展開になったときに、点を決めたのは佐野海舟であって、彼はできる能力を今持っている。フィールドプレイヤーでは唯一と言っていいかもしれないですけど、対抗できている選手なので、そういう選手が11人、もしくは少なくとも半分ぐらい揃っていかないと、対等なオープンな展開に持ち込めないですよね。あと冨安(健洋)とかね、あのぐらいのレベルの選手、(鈴木)彩艶もそうですけど、そういう選手が育ってきてはいるので」
ーーそうですね。鈴木選手も冨安選手も攻守が光りました。
「肌感覚で(試合に)入ったときに、選手たちの中でこのぐらいクローズな展開に持ち込まないと勝てねえなっていうのは感じたからああなったんだと思う。実際、後半とか結構もっとプレス行こうぜって言って出てきて、行ったと思う。行ったんだけど、そこから個の力の問題と、システム上の構造的な問題と、個の特徴かな。3-4-3でサッカーをして、守備をそのまま3-4-3でやるチームってそんなに、というか、強豪国ではほぼないんですよね。
その理由がそこには必ずあるんですよ。それは、今回イングランドの(監督の)トゥヘルも3-4-3をチェルシーでやったりして、去年もアモリム(監督)がマンU(マンチェスター・ユナイテッド)で失敗しましたけど、みんな3-4-3、強豪国、強豪チームにいったら、やらないですよね。
弱者の戦いをするのはできますけど、強豪国を打ち破って、連戦連勝していこうとして、優勝するためには、システムだけの問題じゃないんですけど、システムの問題はあると思う。何を目指すか、どこを目指すか。でも、ブラジルに1発ちょっと上手くやれば、勝てそうだなとは確かに思った」
「日本全体としてマインドが新興国」

またしても決勝トーナメント1回戦を突破できなかった日本。ブラジルのような強豪国との差は何なのか【写真:Getty Images】
ーーそれは佐野選手がゴールを決めたときですか?どこでそれを感じたのでしょうか?
「そのときも思ったし、後半、上手くいけばですけど、両ウイングバックを変えた森保さんの策も、別に僕は森保さんらしいなと思ったし。それで対角のクロスがブラジルから明らかに減って、少し崩し切ろうとした中だったので。
最後(ブラジルが)上手かったからやられてましたけど、ああいうのが入らずに延長に入って、ネイマールなんかを出してきたときに、さらに攻撃の枚数が増えたら、スペースができて、そこで少し攻撃の選手、町野とかちょっとあれでしたけど、鈴木唯人とかを出して、ドリブルで運べる選手とかがいたら、下手したら下手したと思うんですよ。
1発ポーンと入ったり、ぐらいまでは全然あるけど、勝ち、これは勝ちきれなかったなって言えるような、ゲーム内容では全然ないですね。これ言ったらだって、初めて出たW杯も、アルゼンチン戦とかクロアチア戦も、1点取っていればっていう話になっちゃうから。その差ですよね。これを埋めるのはそんなに簡単じゃない」
ーー試合後には選手たちが個の能力の部分を口々にされていました。世界の強豪と対戦するとまざまざと見せつけられて、それをまた埋める作業ですが、レベルの高い欧州のトップリーグに身を置いていくこと、それを日常にすることが大前提になってきますよね。
「もちろん、そうですけど、もっと草の根からですね、当然。僕はそっち側が、どう選手を作り、輩出していくか、だと思います。ブラジル代表の選手たちみたいに、1人1人で管理できるプレーエリア、それは攻守においてですけど、エリアが広い選手が揃えば、きょうみたいに、あそこまで全員が引きこもって守る必要はなくなる。
ボールを相手に渡す必要もない。1人で解決できることが出てくるはずなので、ブラジルじゃなかったらプレスをかけて取れているシーン、結構あったと思います。そこを外す能力が彼らにはあった」
ーーそうですね、ブラジルの方が上回っていたかもしれません。
「それがやっぱり決定的な差になったし、選手たちもこれでいって取れないんだっていうのはたぶん感覚的にあって、あれでもう少し後半の頭とかにプレスに行ったところで取れていれば、ショートカウンターみたいになっていれば、もっと脅かしたと思います。けど、そういうシーンを作れなかった。ブラジルは(ボールを)とられなかった。
だけど、日本からすると取りきれなかったって話になるので、そういう個がどれくらい出てくるかは必要ですよね、結局。それをどう作り出していくか。あとは個人的には、やっぱり新興国だから仕方がないんですけど、日本全体としてマインドが新興国なんですよね」
勝者のメンタリティーはどう育まれるのか

チュニジア代表戦後のミーティングにて。日本代表がW杯で優勝を目指す戦いはこれからも続いていく【写真:Getty Images】
ーーマインドが新興国?
「つまり、予選でああやって1勝2分けで舞い上がっちゃうじゃないですか。ブラジルが1勝2分けで舞い上がるわけないんですよ。何やってんだ!になるわけじゃないですか。これって僕めっちゃ大事だと思う。僕は鹿島(アントラーズ)にいたから、他の強豪と言われる、優勝狙いたいです、みたいなにして、優勝全然していないチームたちが周りに結構いるじゃないですか。そことの違いってまずそこだと思っていて。
リーグ戦を戦っていて、みんな開幕前は優勝するぞって言うんですけど、前半戦が終わったぐらいで、2位とか3位のときに、鹿島だったらなんで1位になっていないんだって言われるんですよ。他のチームたちはリーグの真ん中で3位とか2位にいたら、上位争いしてるぞって舞い上がってますよ、いつも。
その差ってマジデカいと思っていて。日本の選手の切り取られたコメントとかも出てましたけど、コメントも軽くなっちゃうんですよね。そういうのって結構その勝負の神様が離れていく感じが僕はしていて。僕もその経験を若いときにしたので、鹿島で発言とかいろいろそういうのをすごく戒められるんです」
ーーそうだったんですね。
「それって根底にある、自分たちが本当に優勝を目指している国なんだっていうところの、文化みたいなところ。当然これは歴史の時間が必要なんですけど、ここの理解のためには、まず結果で、鹿島もブラジルも優勝しているからそうなるんであって、その誇りみたいなものが、まだまだ新興国の誇りでしかないので、そこも含めてですけど」
ーー勝者のメンタリティも必要になってくる、ということですね。
「これは難しいんですけどね、言葉で言うと。感覚的なものなので。でも、歴史の積み重ねがないですからしょうがないですよね。ブラジルなんてもう毎回決勝トーナメント行って、予選でこのぐらいでやって、本気を出していくぞみたいな、このギアチェンジみたいなところって長年の蓄積であって、それって別に何か伝え聞いてというよりも、たぶん、子供のときから今の選手を見ていて、その歴史が積み上げられているものだから。
簡単じゃないですね。暗黙知みたいなもんなので、優勝を目指せばいいとかそういう話でもなくて、そういうものを僕はものすごく感じたかな。W杯をずっと見ていても毎回思いますけど、予選を見てこの予選だとこのチームが良いですねとか、このチームは全然大したことないですよ、みたいなことを言うんですけど、トーナメントで全然変わるから、特に優勝経験国は。
でも、日本はまだグループリーグは本番みたいなところで入っていくから、そういうのも含めて優勝を目指していく戦いをずっと続けていくんですけど、そういうのを感じられた試合だったので、すごく良かったですよね」