
北中米W杯を戦うポルトガル代表【写真:Getty Images】
ポルトガル代表の編成上の生命線は、長らく守備的MFが担ってきた。だが北中米W杯を戦う現在、ウイング陣の充実ぶりが逆にその生命線を脅かしている。ヴィティーニャを中心に据えた「パリ・サンジェルマン方式」が、同国の基盤だ。ただしそれは41歳のクリスティアーノ・ロナウドの扱いという、もうひとつの難題と表裏一体でもある。(文:西部謙司)[1/2ページ]
編成上の肝は攻撃にあらず
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元ポルトガル代表MFルイス・フィーゴ【写真:Getty Images】
ポルトガルはウイングの名産地だ。ルイス・フィーゴ、クリスティアーノ・ロナウド、リカルド・クアレスマなどドリブルの名手を生み出してきた。
技巧派MFもマヌエル・ルイ・コスタ、デコ、ジョアン・ピントなど多数輩出してきている。
CFは人材不足の時期が長かったのだが、出現すればエウゼビオ、ロナウドという史上屈指のゴールゲッターが名を連ね来た。歴史的に強豪国とはいえないかもしれないが人材輩出国ではある。
やや足りないのはSBだがMFを転用してしのいできた。今回もディオゴ・ダロト、マテウス・ヌニェス、ジョアン・カンセロはMF的なSBだが、時代的にちょうど良いかもしれない。
編成上の肝はずっと守備的MFだった。あり余る攻撃的MFの背後を支える選手を必要としてきた。
最強布陣の先例は「黄金世代」のポルトガル

ポルトガル代表MFブルーノ・フェルナンデス【写真:Getty Images】
UEFAユーロ2008(EURO2008)で優勝し、その後しばらく黄金時代を築いたスペインもMFの人材が豊富。シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガス、ダビド・シルバを背後で支えていたのはマルコス・セナだ。
この4-1-4-1システムの先例が1989、91年のワールドユース(現在のU-20ワールドカップ)を制した「黄金世代」のポルトガルU-20である。
北中米W杯に臨むポルトガルにはヴィティーニャ、ベルナルド・シウバ、ブルーノ・フェルナンデスがいる。
いずれもトップクラスのMF。サイドアタッカーもラファエル・レオン、ペドロ・ネト、フランシスコ・コンセイソンと精鋭揃い。CFにはロナウドが鎮座。いつになく穴のないメンバーだが、それだけにやはり守備的MFがポイントになる。
サム・コスタ、ルベン・ネベスのどちらかがその重責を担うと予想されたが、ここまではどう戦っているのか。
守備的MFを引っ込める矛盾

ポルトガル代表MFルベン・ディアス【写真:Getty Images】
ヴィティーニャ、ブルーノ、ベルナルドの3人は外せない。さらにジョアン・ネベスも有力だ。ここに守備的MFを加えると、黄金世代再びの4-1-4-1になるわけだが、ラファエル・レオンやペドロ・ネトを外さなければならない。
現状ではグループリーグ第1節・コンゴ民主共和国代表戦を除き、ネトを右ウイングの先発とする4-3-3を実践している。
手詰まりのときにはアタッカーを増員して攻撃の手数を増やしたいところだが、今のところ交代策はバランスを見ながら講じられている。たとえばラウンド32のクロアチア戦では、1-1の段階でロナウドに代わってルベン・ネベスが投入。ゴンサロ・ラモスの勝ち越し弾が生まれたのはそのあとだった。
もともとポルトガルには弱点が2つある。
まずハイプレスができない。ロナウドをトップに据える以上、間断なく前線からプレッシングを行うのは無理なのだ。レオンを左に置くならさらに難しくなる。もう1つは中盤の守備が強くない。
ベルナルド、ブルーノ、ヴィティーニャは運動量が豊富で守備もしっかりやるMFだが小柄でパワーが足りない。
ハイプレスが続かないので、ある程度相手にボールは持たれる。実際、ボールを持ちながら試合を進めるタイプのコロンビアにはポゼッションで上回られている。
持たれた時の守備強度が高くない。それを補うための守備的MFだから編成上の肝なのだが、人材豊富なウイングを投入するために現在起きている現象は真逆だ。不可欠なはずの守備的MFが途中から出てくる矛盾がある。
それゆえに、現状ではヴィティーニャに全権を委ねるパリ・サンジェルマン(PSG)方式が採られている。