
サッカー日本代表GK鈴木彩艶【写真:Getty Images】
日本代表の選手たちが世界の舞台で示したパフォーマンスは、欧州移籍市場にも確かな影響を与えている。中村敬斗や鈴木彩艶をはじめ、多くの選手に欧州各国のクラブが熱視線を送り、今夏の去就は大きな注目を集めている。イタリアから見た日本代表戦士たちの評価と、カルチョメルカート最前線の動向を追う。(文:佐藤徳和)[1/3ページ]
移籍市場で熱視線を浴びる中村敬斗
サッカー日本代表 中村敬斗【写真:田中伸弥】
日本代表のFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)の戦いは、開幕からわずか19日で幕を閉じた。
サムライブルーの戦士たちは、優勝を公言して憚らなかったが、鬼門のノックアウトステージ1回戦を突破することすらできず、志半ばで帰国の途に就いた。最も白熱する7月の戦いを、恐らくは自宅のテレビ、あるいは束の間のバカンスで、スマホやタブレットを使って悔しさを抱きながら観ていることだろう。
セリエAのカルチョメルカートは6月29日からすでにスタートしている。日本の選手も、すでに移籍市場を賑わせており、驚くような移籍劇が起こるかもしれない。まず、名前が挙がったのが、左サイドウィングの中村敬斗だ。
6月15日に行われたグループステージ初戦のオランダ代表戦では、オレンジ軍団を翻弄。1ゴール1アシストの活躍で、その名を世界に轟かせた。
元インテルの指揮官で、日本代表DF長友佑都を指導した経験を持つアンドレア・ストラマッチョーニは、イタリア公共放送『Rai』でオランダ戦の解説を務め、のちにこのように語っている。
「あのソックスを下げて…」

サッカー日本代表 中村敬斗【写真:Getty Images】
「中村がDFのように守っていたのが印象的だった。良く走り、献身的なプレーをする。それから、あのソックスを下げてプレーする左サイドウィングの中村は、私を夢中にさせる」と絶賛している。
そして、2-2の引き分けに終わったこの一戦のあとに、中村の名はイタリアでも報じられることとなった。その移籍先はASローマ。かつて中田英寿がプレーし、スクデット獲得に尽力したクラブだ。
しかし、この噂に根拠はなかった。これは移籍市場に詳しいジャーナリスト、ジャンルカ・ディ・マルツィオがXで「中村はローマの指揮官(ジャン・ピエロ・)ガスペリーニにとって理想的な選手」と投稿したことが発端だった。
「理想的」と書かれていたものが、いつの間にか「ローマが中村に関心を抱いている」という話へと独り歩きし、日本のメディアでも報じられてしまったという流れだ。
信頼性の高いASローマ専門メディア『Il Romanista』も、イタリアで最も発行部数の多いスポーツ紙『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』も、この件については報じていない。
ただ、「理想的」という評価自体は事実であり、ASローマは左ウィンガーのステファン・エル・シャーラウィが退団しており、その後釜として中村は適任の選手である。
『Il Romanista』のディレクター、ダニエーレ・ロ・モナコも中村の才能を高く評価しており、機会があればクラブ関係者に「中村獲得の可能性はあるのか?」と尋ねてみたいと話している。
今夏こそステップアップへ

スタッド・ランスに所属する中村敬斗【写真:Getty Images】
しかし、すでにプレミアリーグの複数クラブが積極的な動きを見せており、とりわけエヴァートンが獲得に関心を示しているという。奇しくも、ASローマと同じダン・フリードキンがオーナーを務めるクラブである。
中村の保有権を持つスタッド・ランスは、24/25シーズンにリーグ・アンを16位で終え、入れ替え戦でリーグ・ドゥ3位のFCメスと対戦。2試合で1分け1敗に終わり、降格の憂き目に遭った。
この時、中村は移籍先を探したが、クラブが移籍を容認しなかった経緯がある。市場価値は1000万ユーロ前後とされており、その金額を大幅に上回る、いわゆる「断ることのできないオファー」が届くこともなかったのだろう。
こうして、中村は不本意ながらW杯イヤー前のシーズンを2部でプレーすることとなった。得点ランキング4位となる14得点をマークしたものの、チームは6位に終わり、入れ替えプレーオフ進出も叶わなかった。
またしても2部で戦うこととなったスタッド・ランスだが、もはや中村を引き留めることはできないだろう。移籍金も高騰し、クラブも移籍を容認する構えだという。W杯が閉幕するころには、新天地が決まっているかもしれない。