柏レイソルの久保藤次郎【写真:Getty Images】
柏レイソルの久保藤次郎が、本来のキレを取り戻しつつある。明治安田J1百年構想リーグでは本調子とは言えない状態が続いたが、開幕戦では復調を感じさせるプレーを披露した。開幕前、久保は10日間ブラジルへ渡っていたという。そこで何を求め、何を持ち帰ってきたのか。(取材・文:高橋大地)
【2026/27明治安田J1リーグ第1節】
2026年8月8日 柏レイソル 2-1 水戸ホーリーホック(三協フロンテア柏スタジアム)
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「久保やべー。めちゃくちゃ怖い」水戸の背後を突いた久保藤次郎
柏レイソルの久保藤次郎【写真:Getty Images】
復調の兆しと言っていいのではないだろうか。
2026/27明治安田J1リーグ開幕戦。水戸ホーリーホックを2-1で下した柏レイソルで、久保藤次郎は出色の出来を見せた。
久保は2025シーズン終盤に負った怪我の影響もあったのか、本調子とは言えない状態で百年構想リーグを過ごしていた。
2025シーズンにはJリーグアウォーズの優秀選手賞に選出され、東アジアE-1サッカー選手権の日本代表にも名を連ねた。あの頃に見せていた久保本来のキレを、取り戻しつつあるのかもしれない。
この日の久保は、対戦相手から見ても明らかな脅威になっていた。
ハーフタイム、たまたま耳に入ってきた水戸サポーターの会話が印象に残っている。
「久保やべー。めちゃくちゃ怖い」
対戦相手のサポーターから聞こえてきた言葉が、この日の久保のプレーを物語っていた。
柏の1点目では、垣田裕暉のゴールをアシスト。それ以外にも対面する相手との1対1で優位に立ち、得意のドリブル突破や原田亘と小泉佳穂との連係で再三チャンスを作った。
試合後、ミックスゾーンに現れた久保は、記者に「キレが戻ってきたんじゃないか?」と尋ねられると、少しはにかみながら答えた。
「そうっすねぇ、まぁまぁ……はい、ありがとうございます(笑)」
その反応に取材陣から笑いが起こったが、本人にもプレーへの手応えはある。
「コンビネーションで行くところと、個で行くところの両方をしっかり行けてたんじゃないかなと思います」
久保へスルーパスを送った小泉は、1点目の場面をこう振り返っている。
「藤次郎が本当にいい形で相手を食いつかせて、(マークしていた選手を)置いていけたので、そこで勝負ありだったかと思います」
3バックを採用する水戸に対し、柏のようにボールを保持しながら相手を動かすチームにとって、ウイングバックの背後は狙いどころの一つになる。
特に、水戸のように前方へ人を捕まえに出てくる守備であれば、その選手を食いつかせた先に生まれるスペースをどう使うかが攻略のポイントになる。
柏もそこは共通認識を持っていた。
「相手が後ろで比較的人にタイトに来るチームだったので、その分、裏が空くというのはチームとして共通認識を持っていました」
小泉はそう説明する。
そして、その「裏」を実際に取ったのが久保だった。
小泉が降りてセンターバックを引き連れてボールを受ける。久保はマーカーが食いついてくるのを待ち、小泉とのワンツーで抜け出し、相手ウイングバックの背後へ一気に加速した。
チームとして準備していた狙いと、久保の持つ特長が噛み合った瞬間だった。
最後の局面について、久保は笑顔で振り返る。
「ちょっとタッチが大きくなって、相手が寄せてくるかなと思ったんですけど、あまり寄せてこなかったので、結構ラッキーなところはありますけど。でも良かったです」
そして、先制点を生み出した一連のプレーには、もう一つ、久保が開幕前に取り組んできたことの成果が表れていた。
それは、フィジカルだ。
「ああいうところって、結構、技術というよりフィジカルじゃないですか。やっぱりフィジカル向上を目標にブラジルへ行ったところもあるので、そういう部分がしっかり出たと思います」
「助っ人外国人みたいに」。オフでブラジルに渡った理由
柏レイソルの久保藤次郎【写真:編集部】
久保はシーズン開幕前、10日間にわたってブラジルへ渡った。
「ブラジルに行って、ブラジル人と一緒にプレーしたわけではないです。プレーはしていないです。チームに入ってプレーするとなると、さすがに怪我のリスクもありますし、クラブも許してくれないので。現地ではフィジカルトレーナーの方と、どちらかというとフィジカルの強化をしていました」
その決断の根底には、自分がもう一段階上のレベルへ進むために、何が足りないのかという自己分析があった。
「日本にいるブラジル人は規格外の体ですし、自分がもっと上に行くためには、フィジカル能力を上げない限り上には行けないと思ったので、新しい刺激を求めて行きました」
久保が求めているのは、単純な筋力アップではない。
もともと持っているスピードや技術に、本人が『助っ人外国人みたい』と表現する力強さを加えること。その一端が、この日のピッチで縦への推進力となって現れていた。
「何て言うんですかね、日本人っぽくないというか。助っ人外国人みたいに、ガッと一気に行っちゃうようなプレーを僕はやりたいなと思っているので、そういう意味では結構良かったです」
一方で、2-1という結果だけを見て満足しているわけではない。
久保が課題として挙げたのは、リードしてからの試合運びだった。柏は終盤、水戸に押し込まれる時間が増え、試合を完全にコントロールするまでには至らなかった。
「最後は押し込まれて、苦しい展開になってしまったので。(今後)上位チームとの対戦になったら相当厳しくなると思います。それこそ細かいミスとか、そういうところをしっかり修正していきたいです」
「日本人とブラジル人のいいところを」久保藤次郎が描く“ハイブリッド”な理想像
柏レイソルの久保藤次郎【写真:Getty Images】
ブラジルで磨いたフィジカル。それを活かした縦への推進力。そして、柏で積み重ねてきた味方とのコンビネーション。久保が思い描いているのは、それらを併せ持つ選手だ。
「ちょっと恥ずかしいのであまり言いたくないですけど(笑)、本当に子どもみたいな考え方だなとは思うけど…」
そう前置きしてから、自身が目指す姿を明かした。
「外国人選手がいないからこそ、ああいうプレーというか、日本人のいいところとブラジル人のいいところを掛け合わせて、ハイブリッドみたいな選手になりたいというのは、ちょっと頭の中にあります」
相手を動かし、空いたスペースを見逃さないリカルド・レイソルのスタイル。その中で周囲とつながりながらも、最後は個のスピードとフィジカルで局面を打開する。
久保がそんな選手になることができれば、個人として残す数字も変わってくるはずだ。
今季掲げる目標は明快である。
「2桁ゴール、2桁アシスト、ベストイレブンです」
それだけの数字を残すには、開幕戦で見せたようなプレーを継続し、まさに「助っ人外国人」のようなプレーを目に見える結果へつなげていかなければならないだろう。
そしてもちろん、見据えるのは個人成績だけではない。
「チームとしては、ACLE優勝とJリーグ優勝とルヴァン優勝と天皇杯優勝と……。四冠、狙えるタイトルはすべて狙いたい」
個人では2桁ゴール、2桁アシスト、ベストイレブン。チームでは四冠。高い目標を次々と口にする姿からも、新しいシーズンに向けた久保の意欲が伝わってくる。
百年構想リーグでの停滞を経て、ブラジルで磨き直した自身の武器。
相手サポーターが思わず「怖い」と漏らした開幕戦のパフォーマンスは、久保が思い描く「ハイブリッド」な選手へと近づく、確かな一歩だった。
(取材・文:高橋大地)
【著者プロフィール:高橋大地】
1988年7月生まれ、東京都出身。株式会社カンゼンWEB局編集局長。WEBサイトおよび書籍の編集者として活動し、『ジュニアサッカーを応援しよう!WEB』編集長、『競馬チャンネル』初代編集長、『ベースボールチャンネル』編集長などを歴任。サッカーをはじめとするスポーツ分野を中心に、編集・取材・執筆を行う。週末は少年サッカーの現場でボランティアコーチとして活動。育成年代のスポーツ環境づくりや地域スポーツの普及・発信にも取り組んでいる。
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