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「47番を着けたい」。そう思ってくれる選手が増えるように――ベガルタ仙台・荒木駿太が背番号に込めた覚悟【コラム】

シリーズ:コラム text by 郷内和軌 photo by Getty Images
ベガルタ仙台 荒木駿太
ベガルタ仙台 荒木駿太【写真:Getty Images】



 ベガルタ仙台は8月15日、2026/27明治安田J2リーグ第2節で大分トリニータと0-0で引き分けた。ホーム開幕戦で今季初先発・初出場を果たした荒木駿太は、攻撃だけでなく、課題とされてきたプレス強度でも存在感を発揮した。チームが優勝した明治安田J2・J3百年構想リーグにおいて不完全燃焼を味わった荒木は、なぜ背番号を「7」から「47」に戻したのか。そこには、元チームメート・宇野禅斗から受けた刺激と、今季に懸ける覚悟があった。(取材・文:郷内和軌)[1/2ページ]

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【2026/27明治安田J2リーグ第2節】
2026年8月15日 ベガルタ仙台 0-0 大分トリニータ
(ユアテックスタジアム仙台)

「ゴリさんからもそこはすごく言われて…」

ベガルタ仙台 荒木駿太
ベガルタ仙台 荒木駿太【写真:Getty Images】


 8月15日に行われた2026/27明治安田J2リーグ第2節、大分トリニータ戦は、ベガルタ仙台にとってホーム開幕戦だった。

 ユアテックスタジアム仙台のピッチに立った男は、並々ならぬ闘志を全身にたぎらせていた。

「開幕戦に出られなかったので。その悔しさをぶつけてやろうという気持ちで入りました」

 この日、2シャドーの一角として、今シーズン初先発・初出場を果たしたFW荒木駿太は、最終ラインの背後を果敢に狙う動きを見せれば、ときには中盤まで下がってボールを引き出し、セットプレーではキッカーも担当。持ち前の豊富な運動量でピッチを駆け回り、仙台の攻撃を活性化させた。

 だが、活躍が目立ったのは攻撃だけではない。この試合では、守備の部分においても、魂のこもったハードワークで存在感を示した。

 特に印象的だったのが、前半20分のプレーだ。後方からのビルドアップを試みる大分は、右のセンターバックのDF井上聖也から、センターサークル付近にポジションを構えるMF山口卓己へとパスをつなぐ。その瞬間、ハーフウェーラインにいた荒木は一気にスプリントを仕掛ける。山口がトラップした一瞬の隙に体を入れ、ボールをハントすると、前線のFW小林心にパスを渡し、決定機の起点となった。

 さらに、その1分後には、同じく最終ラインでボールを回す大分守備陣に対し、猛烈なハイプレスを敢行。ボールには触れたものの奪い切ることはできなかったが、気迫がこもったプレーの連発にサポーターからは喝采が上がった。

「ゴリさん(森山佳郎監督)からもそこはすごく言われて、自分の課題でもあるなと思っていたので、かなり意識して試合に臨みました」

 もっとも、労をいとわない献身性は荒木の真骨頂であり、サポーターの誰もが知るところである。だが、筆者の目には、今シーズンはその献身性に“強さ”が肉付けされたように見えた。実際、試合後の記者会見で荒木のプレーぶりを問われた森山監督は、このような賛辞を送っている。

「(相手への)プレスの時の強度が低いというのは、本人にも課題として言ってきました。ただ、今日は彼のボール奪取から何度か決定的なチャンスが生まれましたし、守備のところでも相当頑張って走ってくれた。非常にいい出来だったんじゃないのかなと思います」

「個人としては納得いくような半年間じゃなかったなと…」

ベガルタ仙台 荒木駿太
ベガルタ仙台 荒木駿太【写真:Getty Images】


 思わず指揮官も目を細めるパフォーマンス。そこに至るまでには、もがき、葛藤した半年間がある。

 2026/27シーズンの始動日翌日の7月4日。大勢のサポーターの前で行われた初練習の後、荒木は自らに矢印を向け、厳しい言葉を残していた。

「危機感というものは常に持っていますけど、今年はいつも以上に危機感を強く感じています。百年構想リーグでのようなプレーやコンディションだったら、確実に試合には出られない。勝負のシーズンだと思っています」

 加入1年目の2025シーズンは、サイドハーフや2トップの一角としてレギュラーに定着。シーズン36試合に出場し、そのうち31試合は先発出場を果たすなど、年間を通してフル稼働した。

 しかし、百年構想リーグはプレーオフラウンド2試合を含む全20試合のうち18試合に出場するも、3-1-4-2の新システムへの順応に時間を要し、本領発揮とはならず。ゴールも地域ラウンド第17節の湘南ベルマーレ戦で挙げた1得点にとどまった。

 チームはJ2・J3全40クラブが参加した特別大会を制した。一方、歓喜に沸くチームの中で、荒木自身は忸怩たる思いを抱えていたという。

「チームとしては良かったですけど、個人としては納得いくような半年間じゃなかったなと、強く感じています。半年間、プレーしていて、自分の中で『この試合が良かったな』と思えた試合が一度もありませんでしたし、つらいシーズンになってしまったなと」

 さらに、今オフにはセレッソ大阪からFW中島元彦が1年半ぶりに復帰、藤枝MYFCからMF浅倉廉も新たな戦力として加わった。前線のレギュラー争いがますます激化していくのは明らかである。「このままでは生き残れない」。その危機感を胸の奥に刻み込み、荒木は新たなシーズンへ踏み出した。

 だからこそ、開幕までの1カ月でこだわったのが、ハードワークの部分だ。多くの選手にとって初めての経験となった夏のシーズンイン。前線のプレーヤーとして得点にこだわる一方、これまで以上にプレーのインテンシティーを高め、球際で常にファイトする。灼熱の太陽が照りつける中でも、その姿勢を貫き、自らの存在価値をアピールし続けた。

 その変化は、しっかりと指揮官の目にも届いていた。先述の森山監督のコメントには、このような続きがある。

「プレシーズンからよかったので、どっかで使わないとダメだなと思わせてくれた選手でした」

 今シーズンは一味違う――。周囲の期待に応えるかのように、ホーム開幕戦で躍動した荒木。浅倉との交代でピッチを退くまでの65分間で見せたのは、指揮官からの信頼を確かなものへと変えるに十分なプレーだった。

「『47番を着けたい』と思ってくれる選手が増えるように…」

ボルシアMG 宇野禅斗
ボルシアMG 宇野禅斗【写真:Getty Images】


 その荒木は今シーズン、背番号を「7」から「47」に戻し、新たなスタートを図った。

 同学年でもある中島から直接電話を受け、熟考の末にエースナンバーを譲り渡したのは、サポーターの間でも有名な話だ。そこではどんな言葉が交わされ、どんな思いで受け渡したのか。それは、二人のみが知るところであり、外から詮索するのは野暮なことだろう。

 ただし、間違いなく言えるのは、「47」を再び背負うこともまた、フットボーラー・荒木駿太の覚悟の表れであるということだ。

 それを裏付ける言葉がある。先述の初練習後の取材時のこと。この背番号を再び着けることへの意気込みを筆者が尋ねた際、本人はこのような答えを返していた。

「『47番を着けたい』と思ってくれる選手が増えるように、頑張っていきたいです」

 荒木にとって「47」は特別な番号だ。憧れの海外選手として挙げるフィル・フォーデン(マンチェスター・シティー)が背負う番号であり、FC町田ゼルビア在籍時の2024シーズンにも着用している。クラブをまたいで通算2シーズンを47番で過ごし、「プロになってから一番長く着けている番号」だという。

 だが、理由はそれだけではない。「47を憧れの番号にしたい」。その強い決意の背景には、1人のプレーヤーの存在がある。

「常にアグレッシブなプレーをするし、移籍してからもレベルアップしている。後輩ですけど、尊敬していますし、見習う部分も多い選手です」

 その後輩とは、2023~24年夏までの1年半、町田でチームメートとして共闘したMF宇野禅斗である。青森山田高校では全国制覇を経験し、22年、当時J2の町田に加入。23年には高校時代の恩師である黒田剛監督の下、クラブ初のJ1昇格に貢献。24年の夏に清水エスパルスへ移籍後は持ち前のボール奪取能力をさらに開花させ、昨年7月にはE-1選手権で日本代表デビューを飾ったボール奪取と運動量を持ち味とするボランチだ。

 その宇野は今オフ、ドイツ・ブンデスリーガのボルシアMGに移籍。初の海外挑戦をスタートさせたが、クラブ加入の際、「尊敬する先輩が着けていた番号」として選んだのが、この47番だった。

 移籍前には本人から直接報告を受けたという荒木は、当時の素直な感想を明かす。

「自分の番号を着けてくれるって聞いたときは、すごくうれしかったです」

 とはいえ、これぞアスリートの本能なのだろうか。後輩からの熱いメッセージは、自らの闘争心を奮い立たせる着火剤にもなった。

「プロサッカー選手同士なので、負けたくないっていう気持ちは常にありますし、その気持ちは禅斗も同じく持っているはず。直接対戦することはできないですけど、きっと彼は海外でも活躍してくれると思うので、だからこそ、自分もそれに負けないぐらいの活躍をしたい。お互いに刺激をもらい、刺激を与える、そういう関係であり続けたいと思っています」

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