川島永嗣のプロフェッショナリズム(前編)

日本人選手が海外で活躍するうえで、GKのポジションはもっとも難しいと言われてきた。
指示を出すためには語学力が求められ、何よりもチームで信頼される存在でなければならない。
幾重にもハードルが課せられるポジションで、日本の守護神、川島永嗣はどう評価されているのか。

2013年06月03日(Mon)10時43分配信

text by 小川由紀子 photo Kenzaburo Matsuoka
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流暢な英語で臨機応変に切り返す

川島永嗣のプロフェッショナリズム(前編)
川島永嗣【写真:松岡健三郎】

 2010年7月、川島永嗣は3年半所属した川崎フロンターレに別れを告げ、ベルギーリーグ行きを決めた。

 入団先はリールセ。1906年創立。リーグ優勝やチャンピオンズリーグ出場経験もある古豪だが、近年は降格の憂き目に遭い、ちょうどトップリーグに昇格したばかりの時だった。

 そこでレギュラーの座を獲得した川島は、翌シーズンには日本人ながらにチームキャプテンに任命され、降格の危機にあえぐチームの残留に貢献。

 そしてこの夏、クラブスタッフやファンに惜しまれつつ、ベルギーの強豪スタンダール・リエージュへと巣立った。

 海外という戦いの場で、日本の守護神は、着実に、そして確かに、より高いところへと前進を続けている。

 さかのぼること2010年7月6日、ベルギーのブリュッセル空港に降り立った日本人GKを、大勢のベルギーメディアが取り囲んだ。長旅の疲れも見せずに躊躇なく英語でインタビューに応じていたのが川島だった。

 堪能な語学力――。

 彼が成功した理由のひとつとして、コミュニケーション能力は外せない。

 もともと海外志向が強く、来る日に備えて英語、イタリア語など、語学の習得に励んでいたというが、翌日の入団会見でも、クラブ側が「念のために」用意した通訳は出る幕がなかった。

 地元民が「エイイー」と発音してしまう珍しい名前をもったこの日本人GKは、冒頭から最後まで流暢な英語で受け答えし、何より、初の海外移籍とは思えない堂々とした態度が報道陣に鮮烈な印象を与えた。

 語学に堪能なことは聞いていたが、実際に目の当たりにした印象は、前評判以上だった。とくに感心したのはボキャブラリーの豊かさ。「会見」という、予想外の質問も飛び出しかねない瞬発力の求められる場において、川島はすぐには出てこないような高度な単語をスラリと口にする。

 また、前もって用意できるスピーチならそこそこ話せても、ふいに声をかけられたときに咄嗟に気の利いた言葉は出にくいものだが、彼はすでにもう何年も海外に住んでいるかのように、ごく自然な様子で会話を弾ませていた。

 大宮アルディージャ時代にイタリア留学の経験があるとはいえ、初めて訪れた海外の場所でまったく物おじしないスマートさ。単に語学力があるだけでない川島のコミュニケーション能力には、正直脱帽だった。

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