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スペインをも封じたブラジルの高い守備力はなぜ実現したのか? スコラーリ監督のマネージメント力に迫る

text by 河治良幸 photo by Kenzaburo Matsuoka

ルイス・グスタボが果たした大きな役割

 大会前の印象ではやや小粒感の否めない陣容の中でも、ボランチのルイス・グスタボの起用に多くのブラジル国民が疑念を抱いたのではないか。何しろ欧州王者とはいえバイエルンではスペイン代表ハビ・マルティネスやドイツ代表シュバインシュタイガーの控えにすぎないからだ。

ルイス・グスタボ
ルイス・グスタボ【写真:松岡健三郎】

 しかし、大会が始まり、日本戦、メキシコ戦と進んでいく中ではっきりした。このルイス・グスタボこそスコラーリ監督が“理想的なバランサー”として配置した選手なのだと。188センチの高さがあり、献身的に振る舞うボランチは攻撃における貢献は限られるものの、守備範囲が広い上に、状況に応じて左サイドバックの経験を発揮する。

 ルイス・グスタボが中盤の幅広いエリアをケアすることで、ボランチの相棒であるパウリーニョが積極的に高いポジションを取ることができる。伝統的にブラジル代表はボランチを守備的な選手と攻撃的な選手で組み合わせるが、アタッカーとしても優れるパウリーニョの特徴を活かすには、従来以上に攻守の役割を分担することが重要なのだ。

 もう1つ、ルイス・グスタボが大きな役割を果たしたのが左サイドのケアだ。彼が背後のリスクを管理することで、左サイドバックのマルセロが攻撃時はウィングに見まがう位置まで上がり、ネイマールと厚みのあるサイド攻撃を展開。左サイドの後方をルイス・グスタボがカバーしていれば、守備時もそのまま攻め残り、その後の攻撃に備えた。

 またセンターバックの一人がワイドに開いての対応を強いられれば、バックラインにポジションを落として、ゴール前の中央で高さと強さを発揮した。本来はフェルナンドという選手がこのポジションで有力候補だが、ルイス・グスタボがハイレベルに、しかも抜群の安定感で仕事を全うしたことにより、スコラーリ監督の中で序列のトップに立ったのではないか。

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