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Jリーグ 11年前

北嶋秀朗 サポーターと真剣に向き合う男

text by 土屋雅史 photo by Masashi Tsuchiya

 ただ、これは発言した時に色々なことを言われたんですが、サポーターは“12番目の選手”だと言われていて、サポーターも「俺たちは12番目の選手だ」と言うのに、負けた時には“お客さん”になって僕らを非難したり、野次を飛ばしたりする。それで僕はサポーターに対して「勝っても負けても、みんなで勝ったし、みんなで負けたと思っている。だから、負けた時の責任はあなたたちにもあるんじゃないですか?」って言っちゃったんです(笑)。普通だったらお客さんに対してあり得ない発言なんですが、レイソルのサポーターと僕たち選手は、そういうことを言い合える関係だという自信もありました。グラウンド上では喧嘩しても、グラウンドを離れたら問題ないという、選手と一緒のような関係がだんだん出来上がってきていました。それくらいサポーターに対して僕は真剣だし、一緒に戦って欲しいと今でも常に思っています。

――その発言があってから、サポーターの変化を感じましたか?

北嶋 試合が終わってサポーターのところへ挨拶に行く時が、一番僕たちの空気感が出るわけですよ。その時にお互いちゃんと大人の対応ができるようになっていきました。サポーターと対面して「今日はお前らにブーイングしてやるからな」という雰囲気の時には、それを受け止めることもできたし、「今日は我慢するからお前ら頑張ってくれよ」という雰囲気の時には、「次はサポーターを勝たせてやりたいな」と思える関係になっていったんじゃないでしょうか。

――レイソルのサポーターにどういうものを与えることができたと感じていますか?

北嶋 うーん、“仲間”とか“一緒”だとか、そういうことですかね。僕は彼らと常に一緒だったと思うし、「俺たちは本当にお前らを必要としているんだぜ」というのもわかってくれと思っていました。自分なりに常に責任を持って発言したりプレーをしてきたつもりでしたし、レイソルのサポーターはそれを理解してくれていたと思います。

SNSを活用して自分の言葉で発信

――以前からブログを書かれていますが、元々始めたキッカケは何だったんですか?

北嶋 初めは自分のことをわかってもらいたいという所からで、やっぱりメディアから伝わるニュアンスで、「そんな風に言っていないのにな」と感じることがたくさんあったので、ブログなら自分の言葉で、自分の責任の下で発言できると思って始めました。

――個人的に印象に残っているのは、ロアッソに移籍して初ゴールを決めることになる日の朝に更新された「決意。」という文章です。あれはどういう想いで書かれたのでしょうか?

北嶋 ブログにも書いたように、ロアッソでプレーできることに対するものすごく強い感謝の気持ちや、本当にこのチームを大好きになれそうだという想いに満足して、ギラギラした部分が薄れていないかなと感じていました。レイソルの時はこういう状況に対して怒ったり、点が取れない自分に対してもっとストイックに接していなかったかと思って、それを感謝の気持ちでごまかしている自分を感じたんです。そういう退路を断ちたいという想いでした。

 点を取らなくてはいけない試合って、少なくとも年に1回は絶対にあるんです。そういう時に結果を出してきたから、僕は今までサッカーを続けてこれたと思っているし、去年はそれがあの試合でした。だから自分はサブでしたけど、5分間の出場でも絶対に点を取れると信じていたので、ブログに「ゴールを決める。絶対決める」って書いたんです。とは言ってもドキドキしていましたよ。点を取った時は「よかった~」って思いましたもん(笑)。あの日はありきたりな言葉で言えば「ロアッソの一員になれた」というか、やっとこのクラブで自分の歴史の一歩を踏み出すことができたような、そういう日ですよね。忘れられないゴールです。

――Twitterも活用されていますね。

北嶋 文章を書くのが嫌いじゃないんです。Twitterは短い言葉で伝える部分が気に入っていて、負けた試合の後にすぐ自分の想いを書いたりとか、早く伝えたい時に使っています。ただ、ブログもTwitterもコメントの仕方やタイミングには常に細心の注意を払っていますよ。どちらも本音ですから。嘘を書いても仕方ないですし、その時その時で自分の言葉で一生懸命書いているので、本来なら触れなくていいことも、やっぱり触れずにはいられないと思うと触れてしまうし(笑)、言葉にして伝えたくなるんです。

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