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[対談]中盤のメカニズムに秘める可能性 ハマのボランチコンビが語る戦術論

text by 浅川俊文 photo by editorial staff

ボールを奪う質の違い

富澤清太郎
富澤清太郎【写真:編集部】

――今シーズンのお互いのプレーをどう見ていますか?

富澤 みなさんも感じていると思いますけど、マチはキープ力があるし、タテへ入れるボール、浮かしたりするボールとかも前の選手が扱いやすいように入れたりとか、そのへんのセンスが抜群じゃないですか。あと、ボールに向かって走って相手と競り合う時の強さ、競ってボールを奪うところがすごいなと。俺はああいうボールの取り方が、あんまできないな、と。

中町 俺とカンペーさん、ボールの取り方が違うんですよね。俺の持ってないものをカンペーさんは持ってますね。俺は独力で間合いを詰めて、ガチャッと取ることができない。ボールをもぎ取れないんですけど、カンペーさんはそういう取り方ができる。そこは、もともとセンターバックをやってたからですかね。

富澤 マチは、スルスルスルって行って、ガチャガチャガチャって当たって、クッとボールを取るんだよね、流れの中で。上手いなあって思う。取ったあともボールを持って、ドリブルができる足腰の強さってのが凄いなって感心する。結構大変な作業だと思うんですよ。力を使うし、負担もかかる。それは、このチームでボランチをやるようになってわかったことなんですけど、ドリブルするのも凄く大変なんだなとか、足に負担がかかるからボールを扱うのも大変。それを守備をしながらできるのは凄いなあって。

中町 カンペーさんはずっとセンターバックの選手という印象があったんで、いい意味でボランチにないものを持ってるボランチかなと思います。あと、アンカー的なポジションの選手には、足元の技術がない選手もいるんですけど、カンペーさんはヴェルディ出身ということもあって、小技を駆使してプレーする。例えば、全然上手くない人だとボールが来てダイレクトで返すだけになっちゃうけど、いったんボールを止めてひとコネできると、だいぶ次の展開が違ってくる。ひとつかわして逆に出すとか、そういうのは少なくともセンターバックの選手は普通できない。そういうカンペーさんのプレーもヴェルディ時代には見てこなかったので、そういう意味では本来、ボランチの選手なんじゃないかなっていう(笑)。相手の逆を突いたり、ちょっと弱いパス出してみたりとかは感覚を持ってないとできないんで。それひとつ違うだけで相当変わってくると思いますよ、パスに意思を込められるっていうのは。ただパスを出しているだけでは、どこかでしわ寄せが来ちゃうんで。

――富澤選手は、ポジションがボランチになって心理的にだいぶ違ってきたのでは?

富澤 ええ、だいぶ違ってますね。センターバックってホント、過酷なんですよね。精神的にいちばん大変。ヴェルディ時代、服部さん(服部年宏選手/現・FC岐阜)も「センターバックがいちばん嫌だ」って言ってたんですよ。あの人もいろんなポジションをやりますけど。センターバックは死と隣り合わせなんですよ、ホントに(苦笑)。ちょっとしたことでも失点につながって、自分に振りかかってくるものも大きいじゃないですか。ボランチになると後ろにセンターバックがいて、彼らを使いながら守備ができるし、心にちょっとしたゆとりを持ちながらプレーできる。そうすると全体を考えるようになれる。そういう部分で、凄く余裕が出てきましたね。無理に頑張りすぎて失速することなく、「サッカーは90分間で勝っていけばいい」とか、今までより長いスパンで捉えて、ゲームを戦っていけるようになりましたね。

中町 センターバック出身のボランチってなかなかいないんじゃないですか? 逆ならいるけれど。だから守備範囲が広くて、今のマリノスは自陣に二つ守備ラインがあるみたいな感じになるんですよ。相手がショートカウンターで出てきたときに、カンペーさんがファーストで守備に行けたりする。そこで一度止められるし、後ろのラインは後ろで強いし、そう簡単にやられる感じはしないですよね。

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