ピッチを往復して選手を殴り続けた“名将”
同校の監督が築いた体制は、完全に軍隊そのものだった。
語り草になっている光景がある。監督が生徒を叱ることになった。ゴールライン上から怒声を伴って殴り始め、反対のゴールラインに到達する。
「痛えな、また、オレかよ…。早く終わってくれないかな」
殴られる側は、感情を殺してひたすら耐え続けていたそうである。だがそれが監督には、反省の色がないと映ったのかもしれない。ピッチの縦方向(国際基準では105m)を歩いて殴り続けた監督は、さらにUターンしても殴り続けるのだ。
「なんだ、まだ終わらないのか…」
監督は「分かっているのか!」と、顔を真っ赤にして怒鳴り拳を振り降ろし続けていたが、もはや殴られる側には痛み以外に何も響いて来なかったという。
さて、昨日アップした記事と当記事は、全て全国高校選手権優勝経験を持つ名門校での出来事だ。
名門校だから優秀な選手たちも輩出してきたが、反面その後の人生までも狂わされた被害者が無数に、しかも確実に存在する。活躍した選手たちにはマイクが向けられてきた。しかし好きなサッカーを続けられなくなってしまった犠牲者の声は誰も拾って来なかった。
また逆にこうした「指導」とは言いがたい「訓練」によって生き残った選手たちが、本当に質の高い選手だったのかという疑問も残る。休養もない長時間の酷使に耐えられるのは、プレーの質というより、フィジカルの持久力に優れた選手たちということになる。
実際多くの強豪校では、中学時代に大きな可能性を示したタレントを平気で切り捨ててきてしまったのである。
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※詳しくは『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』でご覧になれます。