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あなたが観ている試合には“台本”があるかもしれない(前編)

今、あなたが観ている試合の勝敗があらかじめ決まっていたとしても、熱狂することができるだろうか? 恐らくほとんどの人は興ざめするだろう。だが、そんな許されざることが世界中で起こっている。なぜ八百長はなくならないのか? ベストセラー『黒いワールドカップ』で八百長問題を丹念に調査した著者が再び筆をとり、最新事情をレポートする。(翻訳:山田敏弘)※2013年8月時点

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古くから行われてきたスポーツにおける不正

 それは、今日のスポーツ界で最も深刻な問題だと言える。

 シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイといった主にアジアの国々を拠点に、八百長を行う集団が暗躍している。彼らは、国際試合からマイナーなリーグのゲームまで、何百という試合で八百長を仕組むべく世界中を飛び回っている。

 このスキャンダルについて見たことも聞いたこともない、またはそんなことあり得ないと考える読者は、いきなり八百長などと言われても作り話か悪い冗談のように思うだろう。だがそれは間違いだ。

 この八百長という汚職問題の背景と、それによって私たちの愛して止まないスポーツが、信頼を失って崩壊するのを防ぐために何ができるのだろうか。

 悲しいことだが、スポーツの世界に八百長と汚職はつきものだ。ギリシャには、紀元前776年に建築された古代オリンピックの競技場が現在も残っている。競技場の外にはかつて、神をまつる像や神殿が立ち並んでいたが、それらの建造物は、オリンピックの試合で不正行為や八百長をはたらいた選手やコーチたちから徴収した罰金によって建てられたものだった。

 つまり、スポーツ界における汚職の歴史は古く、少なくとも2800年前から存在していたのだ。ただ、八百長のような不正行為は、競技スポーツが存在する限り消えることはないだろう。それは人間の性だと言えるからだ。

 そして現代に生きる私たちは、これまでにはなかった問題に直面している。新しい形の八百長だ。そのまったく新しい現象は、スポーツを崩壊させる可能性すらある。現代の八百長は、ステロイドの摂取やスポーツ界に存在する諸問題を押しのけ、スポーツを死に追いやるだろう。

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