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本田圭佑 11年前

本田圭佑はレアル・マドリードの10番になれるのか?(前編)【フットボールサミット第9回】

text by ハビエル・モニーノ・ガルシア photo by Kazuhito Yamada

ヨーロッパナイズされた本田のプレー

 最初に本田を新しい世代の代表格と書いたが、それは、本田の存在をただ単にFKが正確に蹴れるだけのロボットとしてではなく、自分がやりたいプレービジョンが頭の中にあり、それを具現化していく力のある選手だからだ。そして彼は嗅覚を備えていて、ゲームごとに異なる幾多のシーンの中で的確なプレーを読み解く力があり、彼はそれを自然にこなしていく。

 CSKAモスクワや日本代表で本田のプレーを見ていると、あらゆる場所から攻撃のゾーンに飛び出していることが分かる。たいていワンタッチ、多くてもツータッチでボールを捌き、ドリブルで突破することもある。ボールが足元に届く前に、本田はどうプレーすべきか見えているからだろう。ほとんど、左足しか使えないという欠点はあるが、それでも彼には足が一本あれば、それだけで十分に思える。

 左足だけで見事なまでに正確性のあるシュートを繰り出し、試合の中で周囲の目を惹く個性にもなっている。チームの背番号10を堂々と背負うために必要なクオリティが備わっている。個人的にはスペインリーグやスペインサッカーへの適応もスムーズだろうと踏んでいる。なぜなら、スペインサッカーで要求されるスピード、そして、ヨーロッパナイズされたプレーリズムを本田はすでに自分のものにしているからだ。

CSKAモスクワの監督が語ったこと

 2012年の1月、私はCSKAモスクワ監督のバレリ・スルツキーと、本田について話す機会を得た。その時、バレリが私に言った言葉は、次のようなものだった。「私が持っている駒の中で本田は一番クオリティの高い選手だよ。だが、彼の頭はスペインに、そしてレアル・マドリードに飛んでいってしまっている。彼がそこに到達するためには、まずここでそれだけの実力があるということを証明しなければならない」

 このロシア人監督の言葉から読み取れるように、おそらく本田はスペインでプレーしたいというオブセッション(執着)が強すぎるために、それが本人にとって仇となる結果を生み出しているということだろう。もし、実際にそうだとしたら、いま彼がレアルに到達するためにできることは、ひたすら彼のキャパシティを証明するために自分の持っているすべてをさらけ出し、所属クラブで最高のプレーをすることのみだと知る必要がある。

 言いかえれば、それができなければ、そのオブセッションは自分が輝くことができればいいという個人主義に陥る可能性がある。そうなれば結果として、最終的にどこにもたどりつけない、最悪のシナリオを生み出すだろう。

【後編に続く】

初出:フットボールサミット第9回

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