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連載コラム 11年前

日本代表に残る、解けないままの宿題―南アから変わらぬ2つのテーマ(前編)

text by 清水英斗 photo by Kenzaburo Matsuoka


世界基準のボール奪取力を持つ細貝【写真:松岡健三郎】

日本が誇るダブルボランチの限界

 フランス戦とブラジル戦を通して明らかになったこと、それはディフェンス面における遠藤保仁と長谷部誠のダブルボランチの限界ではないかと思う。それは長谷部が今シーズンに入ってからベンチ入りしておらず、試合勘が鈍っているとか、そういう一時的なレベルの話ではない。

 フランス戦でもブラジル戦でも、スペースの広い場所での1対1で振り切られる場面が多く、マークを持たないケースでもボールウォッチャーになる癖があるので背後のスペースへの意識が薄い。賛否両論あるかもしれないが、プロフェッショナル・ファール(戦術的ファール)も効果的に使っていない。

 南アW杯の岡田ジャパンは、遠藤と長谷部の間のアンカーポジションに阿部勇樹を置くことで、バイタルエリア(センターバックとボランチの間のスペース)の守備の安定感を増していた。それは裏を返せば、遠藤と長谷部の2人ではこのバイタルエリアのスペースを守り切れないという判断でもある。

 しばらくアジアを戦ってきたザックジャパンではなかなか表面化しなかった問題だが、やはり強豪と対戦すると、スペースが広く空いた状況でカウンターを受ける際のボランチの守備力がアキレス腱となる。2人はザックジャパンになってからもチームの心臓として働き続けてきた。しかし、日本が世界基準へと脱皮するためには、今よりもエンジンを大きくし、スケールアップしなければ戦えない。

 細貝萌はその可能性を握る選手の一人だ。遠藤や長谷部を凌駕する寄せの鋭さ、球際の激しさ、ボール奪取力は世界基準とも言える。今シーズンは所属クラブのレヴァークーゼンでベンチを温める機会が多いが、日本代表ではザッケローニ監督が彼を起用する機会が徐々に増えており、長谷部のレギュラーを追い落とす可能性も現実的になりつつある。

【後編に続く】

初出:サッカー批評issue59

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