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セリエA 11年前

長友佑都と森本貴幸の現在地(前編)

text by 神尾光臣 photo by Kazuhito Yamada

常にポジション争いを強いられる長友佑都

35試合、2988分出場で2ゴール。これが昨シーズンの長友の公式戦成績である。

 出場試合数はカンビアッソに次いで2番目、出場分数でも5番目。この数字だけを見れば主力として定着していることは自明なのだが、一部のファンやメディアにはそう見られていなかった。失点に絡んだことも度々あり、新聞では出場選手で最低の評価、評点をつけられることもしばしば。ハッスルする様子にサン・シーロでは毎試合のように声援をもらってはいたものの、マイコンのようにチャンスが作れないと「あいつはインテルの器ではない」とスポーツ系サイトの記事に書き込まれたこともあった。

 競争相手も増えた。プレシーズンでは下部組織所属のエムバイエが評価を上げ、「サイドバックとして主力に割って入るか?」と言われていた。マイコンはマンチェスター・シティに移籍することになるが、その分サイドバックにはレンタル先のパルマで復調していたジョナタンを呼び戻し、さらに右ではなく、左のサイドバックが出来る選手を補強してきた。ポルトに所属していたウルグアイ代表のアルバロ・ペレイラ。スピードと運動量があり、攻守両面に貢献出来るアウトサイドと、特徴は長友ともろにかぶる。

 これをもって地元紙は、「右はサネッティ、左はペレイラで定着するだろう」と予想。スカイ・イタリアの中継でコメンテーターを務める元ミランのコスタクルタも「長友は今後ベンチを温めることになるのではないか」と語っていた。

 昨シーズン終盤に下部組織から内部昇格したストラマッチョーニ監督は、就任直後に一度長友を先発から外した経緯がある。誰もが「長友の立場が微妙になった」と言った。しかし長友は、信頼を失ったとは考えず、むしろ当然のようにこう言い切る。「安定して、しっかりとチームのために貢献するということがもちろん僕の役割ですし、ポジション争いというのはビッグクラブなんで、各ポジションに2、3人はビッグなプレーヤーがいるというのは当たり前のこと。そこでしっかりと、アピールしていきたいなと思っています」

 そして長友はその言葉通り、安定したプレーで評価を勝ち取っていくのである。

 リーグ開幕のペスカーラ戦では、新加入のカッサーノと息の合ったプレーを早速見せた。サイドへ流れた彼にボールを預けて、前線に飛び出し、オーバーラップしてクロスを放つ。カンビアッソと交錯して裏のスペースをガラ空きにするミスは一度あったが、そのあとは安定して何度かパスカットに成功し、ドリブル突破から相手のイエローも誘った。

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