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連載コラム 11年前

日本代表に残る、解けないままの宿題―南アから変わらぬ2つのテーマ(後編)

text by 清水英斗 photo by Kenzaburo Matsuoka

攻撃面はまずまずの出来。問題は危険スペースの察知

 攻撃面に関しては、すでに述べた守備面のカウンターへの脆弱さに比べれば、もう少し可能性が広がっているように筆者は感じている。個性のある駒はそろっているので、あとはそれをどう配置して世界のディフェンスラインを突破していくか。特にブラジル戦ではそのような課題に対するザッケローニ監督の様々なテストが行われた。

 組み合わせを考えるためには、まず、ゴールという目的から逆算しなければならない。ゴールを挙げるためにはシュートを打たなければならず、シュートを打つためには世界のDFをかわしてスペースを作らなければならない。

 どのようにしてスペースを作るか? 世界のDFは当たりが強く、動きが鋭く、チャレンジ&カバーなどの戦術連係も優れている。ということは、アジアでやっているレベルよりもさらに時間とスペースは限られる。

 そう考ると、ゴールに直結する動き出しから日本人離れしたシュートを打てる本田圭佑を最前線に置き、ゴール前のわずかなすき間から相手をかわしてゴールを決められる香川真司が仕掛けていくブラジル戦のシステムは面白い。実際、試合全体を通してブラジルのディフェンスをかわしてゴールを脅かしたのはほとんどこの2人だった。そういうスペシャルな能力のある選手をできるだけゴールに近い位置でプレーさせるのは、どのシステムでも大切なことだ。

 彼ら2人に対して通常のFWと同じようなポストプレーを求めるのは持ち味を消すことになるので、いわゆるゼロトップのように彼らが中盤へ下りて自由にボールに触りながらビルドアップに参加する形を作りたい。そのためには両ウイングの選手とボランチの遠藤がポイントとなる。

 前線中央の本田や香川、あるいは中村憲剛が中盤に下りる動きに対して相手のセンターバックが釣られたら、両ウイングが相手ゴールに向かって斜めに飛び出すことで裏のスペースを突く。ブラジル戦ではザッケローニもこのような攻撃の形を考えていたようだが、「ほとんどそのねらい通りにいかなかった。バイタルエリアには入れても、裏へのチョイスが出せなかった」と記者会見で発言。

ブラジルのセンターバック、ダビド・ルイスは中盤に下りる本田に対して厳しいプレスを仕掛けていたので、その裏のスペースを両翼からねらうことは可能だったはずだが、なかなかそのような仕掛けは見られなかった。

 この傾向はフランス戦にもあり、フランスのサイドバックは両ウイングの清武弘嗣や香川をマンツーマンで追いかけていたが、その空いた裏のスペースをねらう選択肢を出せなかった。試合後に吉田麻也は「特に僕のほうの右サイドで、クリシがキヨ(清武)にかなり食い付いて裏のスペースが空いていたので、1個2個そこに通せればもっとチャンスを作れたと思う」とコメント。相手をつり出して生まれた裏のスペースを突くという選択肢がこのチームではまだうまく発揮できていない。

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