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Jリーグ 11年前

柏レイソルの育成戦略が示す、日本的な育成システムの構築法

text by 小澤一郎 photo by Kenzaburo Matsuoka


ブラジルへの短期留学を経験した酒井宏樹【写真:松岡健三郎】

育成を含めた戦略的なビジョン

 柏がまず着手しているのが、トップ昇格した若手選手の出場機会の問題。サテライトのリーグやチームがないJリーグでは、18歳でプロ入りした若手選手の実戦経験の少なさが長年問題視されてきたが、柏では早くからJ2への期限付き移籍や酒井宏樹も経験したブラジルの短期留学が活用されてきた。これまでのJクラブの感覚とは異なり、ユース昇格組を早いタイミングで外に出してきた点について吉田氏はこう説明する。

「トップチームの競争レベルが上がってきたのもあって、うちでの競争に勝てないのであれば、試合経験を積めるチームに行った方がいい。彼らが評価されてきたもの、サッカー選手として生きていく上で大切な自信やアイデンティティーが壊れないうちにそれを発揮できるチームに行き、こちらに戻ってくるタイミングをうかがう。必要とされて完全移籍した選手もいますが、正直外に出して、プロの試合に出ないと本当の力が見えない部分もあります」

 すでに柏は戦略的な期限付き移籍のシステム作りのため国内はもちろんだが、アジア諸国も視野に入れている。例えば、アジア諸国のクラブに、プロ入り直後の若手選手をシーズン単位で期限付き移籍させる。今季柏がACLに出場したタイミングを活かすべく、吉田氏もタイなどのアジア諸国に飛び、選手強化目的の提携先を探す動きを見せている。そこでのポイントは、「オーガナイズされているリーグであること」「国のトップリーグであること」の2点。

 吉田氏はその理由について、「国のトップリーグでプレーするという経験は受けるプレッシャーも違うし、勝ち点3の重みを感じることができる。その経験は何物にも代え難い」と説明する。また、特定の大学やJ2クラブと形式上ではなく中身の部分で密接につながるような提携も模索しており、トップ昇格と同時にJ2クラブに期限付き移籍するための強化費の確保や、大学へのレンタル移籍制度などが強化部で話し合われている。

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