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Jリーグ 11年前

柏レイソルの育成戦略が示す、日本的な育成システムの構築法

text by 小澤一郎 photo by Kenzaburo Matsuoka

地域クラブとの連携にも力を入れている

 もう一つ柏が力を入れているのが、育成年代における地域クラブとの提携。今年の4月からは提携クラブを『柏レイソル アライアンス グループ』とし、『柏レイソル アライアンス アカデミー(以下、柏レイソルA.A.)』と『柏レイソル アライアンス クラブ』の2つに区分けした。柏レイソルA.A.はクラブ名に『柏レイソル』を掲げ、レイソルのユニフォームを着て活動する。

 中でも画期的なのは、「うちよりも歴史、力がある」(吉田氏)という地元の強豪クラブ、柏イーグルスTOR82と柏レイソルA.A.として提携を結んだ点。それに伴いクラブ名が 『柏レイソルA.A.TOR 82』に変更されたが、イーグルスのような歴史あるクラブと手を結ぶことができたのは、柏側に『傘下に入れる』『取り込む』という意識やレイソルを頂点としたピラミッド型の組織図がなかったから。

 通常はピラミッド型の上にレイソルが君臨し、その下にタウンクラブ、さらに下に普及層があるという組織図になるが、吉田氏が打ち出したのは、レイソルを中心とした輪、円のイメージ。現在10クラブある『アライアンスクラブ』では、グルーピングによって選手個々のレベルに応じたプレー環境の提供が可能となった。

 実力ある選手の飛び級は1つのクラブ内だけで実現させることができるが、実力的に厳しい選手を年齢が下のチームに降格させることは選手の心理的ダメージが大きいことからどのクラブも躊躇してきた。しかし、外部にこれだけの提携クラブができれば、年齢やカテゴリーを下げずに適した公式環境が確保できる可能性が高まる。

 吉田氏はアライアンスグループ編成の真意をこう述べる。「メソッドの共有ができているクラブを持つことで育成年代でも他クラブとの選手の入れ替えが可能となる。公式戦に出て責任を背負って力をつける環境は普遍的なものであり、その環境を正しいタイミングで与えていきたい」

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